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『転生したら最弱ダンジョンマスターになったので、サーカスを始めたいと思います!』  作者: フミンチュ
4章 獣帝国―ヴォル・ガイウス

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10.明かされた正体

さらに奥へ進むことしばらく。


 大地たちは、巨大な扉の前に立っていた。


「……ここだな」


 大地が呟く。


 扉の向こうから感じる、これまでとは明らかに違う圧力。


 ジュラルが拳を握る。


「ボスってやつか?」


「ああ。たぶんな」


 ジャンヌが剣を抜いた。


「なら、これで最後だ」


 大地は頷き、扉へ手をかける。


「行くぞ」


 重い扉が開いた。


 その先。


 広大な空間の中央に、巨大な蛇の魔物がいた。


 太い胴体。


 硬そうな鱗。


 頭部には鋭い角。


 そして、獲物を射抜くような黄色い瞳。


【ジャイアントバジリスク】


 大地の目の前に表示が浮かぶ。


「でか……」


 ジュラルが思わず呟く。


 すると。


『……なんだ?』


 低い声が空間に響いた。


 全員が構える。


『侵入者かと思えば……』


 ジャイアントバジリスクの視線が大地へ向いた。


 そして。


『お前……ダンジョンマスターではないか』


「……!」


 大地の表情が固まった。


「ダンジョン……マスター?」


 ジュラルが振り返る。


 ジャンヌも目を見開いていた。


『ふざけた奴だ』


 バジリスクが唸る。


『自分もダンジョンを持つ者でありながら、他者の領域へ踏み込み、好き勝手に荒らしてくれるとはな』


「ちょっと待て」


 ジュラルが大地を見る。


「大地。お前、ダンジョンマスターなのか?」


「……ああ」


 隠しても仕方がない。


「そうだ」


 沈黙。


「最初から?」


「ああ」


「マジかよ……」


 ジュラルが頭を抱えた。


 ジャンヌは大地をじっと見る。


「だから魔物を召喚できるのか」


「そういうことだ」


「ラステリも、フランも、マルディも?」


「ああ」


 ジャンヌはしばらく黙った。


 やがて。


「なるほど」


「……それだけか?」


「他に何がある?」


 ジャンヌが剣を構え直す。


「お前が何者だろうと、ここまで一緒に戦ってきた事実は変わらない」


 ジュラルも笑った。


「むしろ納得したぜ!」


「何がだ」


「普通の奴がこんな連中引き連れて、あんな戦い方するわけねぇだろ!」


「それ褒めてるのか?」


「褒めてる褒めてる!」


『貴様ら……』


 バジリスクの声が低くなる。


『我を前にして随分と余裕だな』


 大地はその声を聞きながら、ゆっくりと前へ出た。


「余裕じゃない」


『何?』


「だから、準備するんだよ」


 大地が指輪へ意識を集中させる。


 空間が揺らぐ。


 次の瞬間。


 何もなかった石造りの床に、赤と金の装飾が走った。


 照明が灯る。


 旗が広がる。


 空中に光の粒が舞い、円形の舞台が一瞬で形作られていく。


「お、おい……!」


 ジュラルが目を見開く。


「これが……大地のダンジョン……?」


 ジャンヌも言葉を失った。


「違う」


 大地が笑う。


「これは俺たちの舞台だ」


 ラステリが大地の横へ。


 フランが羽を広げる。


 マルディが眷属たちを呼び出す。


 ジレンツの指輪が鈍く光った。


『我が領域で、ふざけた真似を……!』


バジリスクが巨大な牙を剥く。


「ふざけてない」


 大地は真正面から睨み返した。


「俺たちはこれで戦う」


 そして。


 ゆっくりと片手を上げる。


 仲間たちが配置につく。


 舞台。


 演者。


 観客はいない。


 それでも。


 ここはもう。


 ソル・フロールの舞台だった。


 大地が息を吸う。


「さぁ――」


 全員の視線が集まる。


 大地は笑った。


「開演だ!」


 その瞬間。


 フランの歌声が響いた。


 ラステリが分裂する。


 マルディの眷属が走り出す。


 ジレンツが光を放つ。


 そして。


 ジャイアントバジリスクが咆哮した。


 戦いが始まる。


 尻尾が横薙ぎに振るわれる。


「ジレンツ!」


 大地が右手を突き出す。


 指輪が光る。


 盾。


 ジャンヌが受け取り、前へ出る。


「くっ!」


 轟音。


 だが耐えた。


「フラン!」


「うん!」


 歌声が響く。


 全員の身体能力が上がる。


「マルディ、足!」


「了解っす!」


 眷属たちがバジリスクの胴体へ群がる。


『小癪な!』


「ラステリ!」


『はい!』


 ジレンツが小型の刃へ変化。


 ラステリが分裂。


 四方向から刃を投げる。


 鱗の隙間へ。


 一本。


 二本。


 三本。


『ぐっ……!』


「ジュラル!」


「任せろ!」


 ジレンツが籠手へ変わる。


 ジュラルが突進する。


 だが。


「目を見るな!」


 大地が叫んだ。


 バジリスクの瞳が黄色く輝く。


 ジュラルが咄嗟に顔を逸らした。


「危ねぇ!」


「ジャンヌ!」


「ああ!」


 長剣へ変化。


 ジャンヌが側面から斬り込む。


 鱗が割れる。


 その瞬間。


 大地が傷口を見る。


「そこだ!」


 ジレンツが再びジュラルの手へ渡る。


 そして。


 槍へ。


 ジュラルが構えた。


「これで――!」


 一直線に駆ける。


「終わりだぁぁ!」


 槍が傷口を貫いた。


『ぐ……おおおお……!』


 ジャイアントバジリスクの巨体が大きく揺れる。


 そして。


 地響きとともに倒れた。


 静寂。


 しばらくして。


【ダンジョン攻略完了】


 表示が浮かぶ。


「……終わった」


 大地が息を吐く。


「やったな!」


 ジュラルが笑う。


 ジャンヌも剣を収めた。


「これで訓練も一区切りか」


「ああ」


 大地は仲間を見る。


 ラステリ。


 フラン。


 マルディ。


 ジレンツ。


 そして。


 ジュラルとジャンヌ。


 連携はもう、最初とは比べ物にならない。


「大地」


 ジュラルが声をかける。


「ん?」


「ダンジョンマスターだったこと」


 大地は少し身構えた。


「先に言えよ!」


「……悪かった」


「でもまあ」


 ジュラルは笑った。


「これで色々納得した!」


 ジャンヌも小さく頷く。


「正体が何であれ、お前がお前であることに変わりはない」


 大地は少しだけ笑った。


「ありがとう」


 そして。


 ダンジョンの出口へ向き直る。


 訓練は終わった。


 戦力も整った。


 大地は拳を握る。


「……戻ろう」


 帝都へ。


 そして。


 ゾル・グリードの待つ場所へ。


 もう。


 準備は整った。

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