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『転生したら最弱ダンジョンマスターになったので、サーカスを始めたいと思います!』  作者: フミンチュ
4章 獣帝国―ヴォル・ガイウス

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9.ジレンツ

指輪が光を放つ。


 次の瞬間。


 大地の右手には、一本の長剣が握られていた。


「……おお」


 ジュラルが目を見開く。


 黒銀色の刀身。


 余計な装飾はなく、ただ真っ直ぐに伸びた剣。


「これがジレンツか」


 大地は軽く振ってみる。


 だが。


「重っ……!」


 剣先が大きく下がった。


「アニキ、絶望的に似合わないっすね」


「うるさい」


 マルディが笑う。


 ジャンヌが手を差し出した。


「貸してみろ」


「ああ」


 大地が剣を渡す。


 ジャンヌが柄を握った瞬間。


 刀身が淡く光った。


「なっ……」


 剣が変わる。


 刃がわずかに長くなり、厚みが増した。


 柄もジャンヌの手に合わせるように形を変えていく。


「……なるほど」


 ジャンヌが振る。


 鋭い風切り音。


「私に合わせているのか」


「ああ。たぶんな」


 大地は頷いた。


「次、ジュラル」


「俺?」


 ジャンヌからジレンツを受け取る。


 すると、剣だった姿が一気に縮んだ。


 両腕を覆う黒銀の籠手へと変化する。


「おおっ!」


 ジュラルが拳を打ち合わせる。


 ゴンッ!


 金属音が洞窟に響いた。


「これなら殴れる!」


「お前にはそれが一番だろうな」


 次はラステリ。


 ジレンツは小型の刃へ変化した。


 ラステリが分裂すると、その一体が刃を掴む。


『軽いです!』


「投げられるか?」


『はい!』


 回転しながら投げられた刃は、岩壁へ深々と突き刺さった。


「使えそうだな」


 大地は満足そうに頷く。


 フランは首を傾げた。


「フランも?」


「ああ。試してみろ」


 ジレンツがフランへ渡る。


 光。


 現れたのは、細身の杖だった。


「わぁ……!」


 先端には小さな輪。


 フランが歌い始めると、その輪が淡く共鳴する。


「支援に合わせた形か」


 最後にマルディ。


「俺もっすか?」


「一応な」


「一応って!」


 ジレンツを受け取る。


 黒銀の杖。


 先端には複雑な意匠。


「おお……! なんか俺、強そうっす!」


「見た目だけな」


「アニキ!?」


 ひと通り試したところで、大地は立ち上がった。


「よし。先へ進む」


 ダンジョンの奥。


 空気が徐々に冷たくなる。


 やがて広い空間へ出た。


 その中央に。


「……いるな」


 巨大な魔物がいた。


 全身を灰色の甲殻で覆った四足獣。


 頭部には太い角。


 背中には岩のような突起。


「硬そうっすね」


「ああ」


 大地が周囲を見る。


「ジャンヌ!」


「分かった!」


 ジレンツが長剣へ変化する。


 ジャンヌが踏み込んだ。


「はぁっ!」


 斬撃。


 だが。


 甲殻に弾かれる。


「硬い!」


 魔物が突進。


「ジュラル!」


 ジレンツが籠手へ。


 ジュラルが真正面から受け止める。


「ぐっ……!」


 地面を削りながら後退。


「フラン!」


「うん!」


 歌声が響く。


 全員の身体能力が上がる。


「マルディ、足を止めろ!」


「了解っす!」


 眷属が魔物の脚へまとわりつく。


 動きが鈍る。


「ラステリ!」


『はい!』


 小型の刃へ変化。


 ラステリが跳ぶ。


 一撃。


 二撃。


 三撃。


 甲殻の隙間へ正確に刃が入る。


 魔物が大きく怯んだ。


「今だ!」


 ジレンツがジュラルへ渡る。


 籠手。


 ジュラルが地面を蹴った。


「おおおおっ!」


 だが。


「違う!」


 大地が叫ぶ。


「拳じゃない!」


 ジュラルが振り返る。


「なら何だ!?」


 大地は魔物の傷を見る。


 ラステリが作った。


 甲殻の隙間。


「貫け!」


 瞬間。


 籠手が変形した。


 長い槍。


 ジュラルが握る。


「うおおおお!」


 一直線。


 槍が。


 甲殻の隙間を貫いた。


 魔物の身体が大きく震える。


 そして。


 地面へ倒れた。


 静寂。


「……倒した?」


 フランが呟く。


「ああ」


 大地は笑った。


「倒した」


「やった!」


 ジュラルが槍を掲げる。


 その手の中で。


 ジレンツは静かに指輪へ戻った。


 大地が受け取る。


「なるほどな」


 必要なのは。


 最強の武器じゃない。


 その時。


 その相手。


 その仲間に必要な形。


「これなら」


 大地はダンジョンのさらに奥を見る。


「もっと先へ行ける」


 仲間たちが並ぶ。


 大地は笑った。


「攻略続行だ」

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