4.影の招待
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暗い部屋。
灯りは一つ。
揺れる。
その中で。
数人の影が集まっていた。
「……またやっているな」
低い声。
別の声が返す。
「ああ」
「例のサーカスだ」
沈黙。
やがて。
女の声。
「食料を配っている」
「無償でだ」
ざわめきが走る。
「……ありえん」
「罠か?」
「それとも――」
一拍。
「馬鹿か」
空気が張り詰める。
別の声。
「だが事実だ」
「受け取った民は笑っていた」
その言葉に。
わずかな揺らぎ。
「……笑っていた、だと」
誰かが呟く。
長い沈黙。
やがて。
柔らかい声が響く。
「観察は続ける」
穏やか。
だが。
芯のある声。
「敵か味方か」
「まだ判断はしない」
一拍。
「だが――」
少しだけ笑う気配。
「面白い」
帝都。
路地。
「――開演だ」
今日もまた。
舞台が始まる。
ラステリが舞う。
フランが歌う。
人が集まる。
そして。
配られる。
食料。
日用品。
笑顔。
広がる。
確実に。
「……いい感じだな」
大地が呟く。
マルディが笑う。
「いや〜完全に人気者っすね」
フランも嬉しそうに笑う。
「みんな、元気になってる」
ラステリも跳ねる。
――えがおです……!
だが。
大地の視線は違った。
「……いるな」
ぼそりと呟く。
フランが反応する。
「また?」
「ああ」
ラステリも震える。
――ずっとです……
マルディが肩をすくめる。
「粘着質っすねぇ」
大地は少し笑う。
「悪くない」
一歩踏み出す。
「そろそろ出てこい」
静かに言う。
その瞬間。
気配が動いた。
路地の奥。
一人の影が現れる。
しなやかな動き。
ゆっくりと近づいてくる。
やがて。
光の中に入る。
「……獣人か」
大地が呟く。
女性。
ライオンの獣人。
金色の髪。
鋭い目。
だが。
どこか静かだった。
フランが少し身構える。
ラステリも。
マルディは笑う。
「ついにご対面っすね」
女性は短く言う。
「……ついてこい」
それだけ。
説明はない。
理由も言わない。
沈黙。
大地は一歩近づく。
「お前か」
「ずっと見てたのは」
女性は否定しない。
「……」
それが答えだった。
マルディがニヤッとする。
「どうするっす?」
ラステリが不安そうに揺れる。
――だいじょうぶですか……
フランも見る。
「……とと」
大地は少しだけ笑う。
「問題ない」
一言。
「行くぞ」
路地を進む。
曲がる。
さらに奥へ。
人目を避けるように。
やがて。
古びた建物へと入る。
中は暗い。
静か。
そして。
奥。
扉の前で女性が止まる。
「……ここだ」
大地が扉を見る。
気配。
複数。
隠しているが――
分かる。
「……なるほどな」
小さく呟く。
女性が扉を開ける。
軋む音。
その奥。
暗闇の中から。
声が響いた。
柔らかく。
穏やかな。
だが。
どこか芯のある声。
「ようこそ」
一拍。
「お待ちしてました」
少し笑う気配。
「ソル・フロールの皆さん」
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