3.広がる笑顔
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帝都の外。
門の外側。
そこには――
行商人達が溜まっていた。
荷車。
積み上げられた荷物。
そして。
諦めたような空気。
「……帰るしかねぇか」
「また税金払って入るのは無理だ……」
重い声。
積み荷は残っている。
だが。
売れない。
入れない。
出るにも金がかかる。
詰み。
完全に詰んでいた。
「……なるほどな」
華岡大地はそれを見ていた。
状況を理解する。
「入るのにも金」
「出るのにも金」
マルディが笑う。
「いや〜エグいっすね」
フランが小さく言う。
「……ひどい」
ラステリも震える。
――こまってます……
大地は一歩前に出る。
「全部買う」
沈黙。
行商人が固まる。
「……は?」
「食料も」
「日用品も」
「全部だ」
淡々と告げる。
「その代わり」
一拍。
「安くしろ」
ざわめきが起きる。
「……いいのか?」
「このまま持ち帰るよりマシだ……!」
「頼む……!」
一気に空気が変わる。
大地は頷く。
「成立だ」
大量の物資。
食料。
布。
生活用品。
全部まとめて手に入る。
マルディがニヤニヤ。
「いや〜」
「完全に買い占めっすね」
「投資だ」
大地は静かに言う。
「舞台のな」
再び。
帝都へ。
再入国。
再び税を払う。
だが。
今度は違う。
荷を抱えている。
「……やるぞ」
帝都の一角。
人通りの少ない場所。
「――開演だ」
舞台が展開される。
小規模。
だが。
十分。
ラステリが舞う。
フランが歌う。
人が足を止める。
最初は警戒。
だが。
すぐに変わる。
「……なにこれ」
「すごい……」
そして。
大地が言う。
「欲しいやつ、来い」
一瞬の沈黙。
次の瞬間。
ざわめき。
「……え?」
「無料だ」
はっきり言う。
「持っていけ」
爆発する。
人が集まる。
食料。
日用品。
奪い合いではない。
受け取る。
震える手で。
「……いいのか?」
「本当に?」
「好きにしろ」
大地は淡々と答える。
フランの歌が重なる。
空気が変わる。
笑顔が生まれる。
少しずつ。
確実に。
別の場所。
また開演。
また配る。
繰り返す。
帝都のあちこちで。
小さな舞台。
小さな奇跡。
「……笑ってる」
フランがぽつりと呟く。
ラステリも跳ねる。
――えがおです……!
マルディが笑う。
「いや〜革命っすねこれ」
大地は静かに言う。
「まだ足りない」
「もっと広げる」
その時。
ふと。
違和感。
「……?」
大地の視線が動く。
路地の奥。
影。
一瞬だけ。
消える。
「……マルディ」
「気づきました?」
「ああ」
フランも少し不安そうに見る。
「なにかいる?」
「いるな」
はっきり言う。
ラステリが震える。
――みられてます……
マルディがニヤッとする。
「兵士じゃないっすね」
「動きが違う」
大地は少しだけ笑う。
「……敵か味方か」
一拍。
「どっちでもいい」
視線を外す。
「止められるなら止めてみろ」
舞台は続く。
帝都の中で。
小さく。
だが確実に。
広がっていく。
その裏で。
影が動く。
気配。
視線。
監視。
まだ正体は見えない。
だが。
確実に。
何かが動き始めていた。
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