8.道化の覚悟
宿。
狭い部屋。
その中で――
戦闘はすでに始まっていた。
「はぁ……っ!」
マルディが指を鳴らす。
骸骨兵が現れる。
突撃。
――次の瞬間、砕かれる。
「……はやいっすねぇ」
軽く笑う。
だが。
次。
また召喚。
また壊される。
繰り返し。召喚。破壊。召喚。破壊。
そのたびに。
マルディ自身にも
刃がかすめる。
「ぐっ……」
骨が削れる。
腕が弾かれる。
体勢が崩れる。
それでも。
「まだまだ……っすよ」
立つ。
笑う。
また召喚する。
時間を稼ぐためだけに。
(無理っすね)
内心は冷静だった。
(勝てない)
完全に力量差がある。
相手はプロ。
殺すための動き。
(でも――)
フランを見る。
怯えている。
(おれっちは死んでもまた復活できる)
(でもフランは死んだら終わり…)
(フランはおれっちが死んでも逃がさないとっすね)
マルディは笑顔でフランに小声で伝える
「チャンスはおれっちが作るっす
だからフランは王城まで逃げるっす」
「おれっちもすぐあとを追うから先に
行って欲しいっす!」
影が踏み込む。
速い。
三方向。
マルディが割って入る。
「こっちっすよ!!」
骸骨兵を盾にする。
一瞬だけ止まる。
その瞬間。
マルディが叫ぶ。
「今っす!!行け!!」
フランの身体が動く。
窓へ。
だが。
一人が回り込む。
「っ!」
その瞬間。
マルディが無理やり飛び込む。
「そっちはダメっすよ!!」
攻撃を受ける。
骨が砕ける音。
だが。
その隙で。
フランが窓を突き破る。
夜の空へ。
脱出。
「……よし」
マルディが笑う。
だが。
すぐに囲まれる。
完全包囲。
逃げ場なし。
「いや〜」
肩を回す。
「ほんとに詰みっすね」
それでも。
前に出る。
骸骨兵、最後の三体。
並べる。
「でもまぁ」
軽く笑う。
「アニキに怒られるんでね」
骨の手を鳴らす。
「ちゃんと時間稼ぎはやるっすよ」
影が動く。
速い。
骸骨が一瞬で壊される。
次。
マルディ本体に直撃。
「っ……!」
吹き飛ぶ。
壁に叩きつけられる。
骨が軋む。
視界が揺れる。
(あー……)
(これ、そろそろっすね)
それでも。
立つ。
笑う。
「まだ……終わりじゃねぇっすよ」
もう一度。
召喚。
最後の骸骨。
突撃。
影が踏み潰す。
その瞬間。
刃が――
マルディの中心を貫いた。
静止。
「……あー」
小さく笑う。
「やられたっすね」
膝が崩れる。
視界が暗くなる。
(でもまぁ)
思う。
(フランは逃げた)
それだけで。
十分だった。
「……上出来っす」
そのまま。
崩れ落ちた。
そして
マルディは大地の指輪で眠りにつく。
夜の空。
フランは飛んでいた。
ふらふらと。
不安定に。
「はぁ……っ……!」
息が荒い。
飛ぶのは得意じゃない。
何度も。
壁にぶつかる。
屋根に接触する。
バランスを崩す。
それでも。
止まらない。
「いかなきゃ……!」
涙が出る。
「いかなきゃ……!!」
後ろを見る。
追ってはいない。
でも。
わかる。
「マルディが……」
声が震える。
「このままだと……!」
必死に羽ばたく。
落ちる。
また飛ぶ。
墜落しかける。
それでも。
前へ。
前へ。
「とと……!」
叫ぶ。
「たすけて……!」
涙がこぼれる。
それでも。
止まらない。
王城。
謁見の間。
「ははっ!」
ガイアスが笑っていた。
「いいじゃねぇか!」
大地も少し笑う。
「気に入ったか?」
「気に入ったどころじゃねぇ」
豪快に言う。
「面白ぇ!」
ラステリも
少し誇らしそうにしている。
穏やかな空気。
その時。
大地の指輪が――
強く脈動した。
「……っ?」
違和感。
異常。
そして。
流れ込む感覚。
「……なんだ……これ」
理解する。
直感で。
「……マルディ……?」
次の瞬間。
確信に変わる。
「……殺された……?」
空気が止まる。
大地の表情が変わる。
一瞬で。
怒り。
静かで。
だが。
底のない怒り。
「……誰だ」
低く呟く。
黒い指輪が
わずかに震える。
それは――
ダンジョンコアの反応。
主の感情に呼応するように。
ガイアスが
その変化を見る。
「……どうした」
大地は顔を上げる。
その目には。
はっきりとした怒りが宿っていた。
「……少し」
低く言う。
「問題が起きた」
静かに。
だが確実に。
「――潰す」
その一言に。
空気が変わった。
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