7.御前開演、迫る影
王城――謁見の間。
広大な空間。
その中央に立つのは
華岡大地とラステリ。
そして。
玉座に座るのは――
騎士王ガイアス。
「さぁて」
足を組みながら笑う。
「どんなもん見せてくれるんだ?」
ラフな口調。
だが。
視線は鋭い。
完全に“見極める目”。
大地は一歩前に出る。
「ラステリ」
――は、はい……
緊張している。
王城。
王の前。
今までで一番の舞台。
だが。
大地は静かに言う。
「いつも通りでいい」
一拍。
「俺たちの舞台をやるだけだ」
ラステリの震えが
少しだけ収まる。
――……はい
大地は前を向く。
そして。
「……開演だ」
静かに告げた。
次の瞬間。
光が展開される。
DPによる即席舞台。
王城の床に広がる
光布と足場。
ガイアスの眉がわずかに動く。
「ほぉ」
ラステリが跳ねる。
分裂。
三体。
五体。
さらに増える。
トリックスライム。
王城の空間を
自在に使い始める。
刃が舞う。
ナイフ。
短剣。
光を反射しながら
空中を走る。
分裂個体が交差し
受け渡し
回転する。
完璧なジャグリング。
だが。
それだけじゃない。
王城という広さを活かした
立体演技。
壁際。
空中。
高低差。
すべてを使った“魅せる動き”。
「……いいな」
ガイアスが呟く。
ラステリの動きが加速する。
分裂と合体。
流れるような連携。
刃が一つの流れになる。
そして。
一体に集約。
一瞬の静止。
次の瞬間。
高速回転。
刃の嵐。
光の円が描かれる。
王城の中に――
サーカスが完成する。
「……ははっ」
ガイアスが笑った。
「いいじゃねぇか」
完全に楽しんでいる。
ラステリは
それに気づきながらも止まらない。
恐怖より。
“見せる”ことに集中している。
――たのしいです……
小さく呟く。
そして。
最後の演技。
全刃同時投擲。
完璧な制御。
一瞬で回収。
ぴたりと静止。
終幕。
静寂。
数秒後――
「……いい」
ガイアスが立ち上がる。
大きな足音。
ゆっくり近づく。
ラステリがびくっとする。
だが。
ガイアスは笑った。
「怖がりながら
ちゃんとやりきったな」
頭を軽く叩く。
「上等だ」
ラステリが固まる。
――え……
「気に入った」
はっきりと言う。
大地を見る。
「お前のやってることは異端だ」
一拍。
「だが」
ニヤッと笑う。
「なかなかにおもしれぇ!」
それが。
騎士王の評価だった。
その頃。
宿。
静かなはずの空間。
だが。
マルディは
わずかに眉を動かしていた。
「……フラン」
「ん?」
「静かすぎるっすね」
違和感。
フランも気づく。
「……うん」
次の瞬間。
――カタン
微かな音。
ドア。
気づいた時には遅かった。
「っ!!」
扉が開く。
黒い影。
複数。
一切の無駄のない動き。
殺気。
「……教会か」
マルディが笑う。
だが。
その目は完全に冷静。
「侵入許しちゃいましたね〜」
フランが一歩下がる。
「どうする……?」
影が一斉に踏み込む。
速い。
明らかにプロ。
マルディは即座に指を鳴らす。
骸骨兵。
だが――
「……少なっ」
三体。
部屋が狭すぎる。
数を出せない。
影が一瞬で距離を詰める。
骸骨が一体、破壊される。
「ちっ……」
マルディの声が低くなる。
(無理っすね)
即判断。
フランを見る。
「逃げるっす」
「え?」
「いいから行け!!」
一瞬でトーンが変わる。
指揮官の声。
フランの身体が動く。
だが。
影が回り込む。
退路が塞がれる。
完全に囲まれた。
マルディは笑う。
「……いや〜」
軽く言う。
「詰みっすねこれ」
だが。
一歩前に出る。
フランを背に庇う。
「でもまぁ」
骨の手を鳴らす。
残った骸骨が構える。
「時間くらいは稼ぐっすよ」
影が構える。
静寂。
そして。
一斉に動く。
王城。
大地はまだ気づかない。
宿で起きていることに。
舞台の裏で。
静かに。
確実に。
何かが壊れ始めていた。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
もし少しでも面白いと感じていただけたら、
下の【★★★★★】から評価をしていただけると嬉しいです!
この★の数が作品の伸びに直結するので、
本当に大きな力になります…!
また、ブックマークしていただけると
更新通知が届くので見逃し防止にもなります!
引き続き応援よろしくお願いします!




