4.王都での公演
夕暮れ。
王都の空が
ゆっくりと橙に染まっていく。
その中で。
華岡大地は
黒い指輪を見つめていた。
「……やるか」
意識を向ける。
DP。
ダンジョン攻略で得た力。
「王都仕様にアップグレードする」
淡い光が広がる。
展開される舞台は
これまでとは明らかに違う。
広く、高く、そして美しい。
光布はより繊細に。
照明は立体的に。
足場は空間を支配するように配置される。
「……すごい」
フランが呟く。
ラステリも跳ねる。
――ひろいです……!
マルディはニヤニヤ。
「これは完全に
“魅せるための戦場”っすね」
大地は頷く。
「王都だからな」
「中途半端はやらない」
その頃。
少し離れた場所。
白い法衣の男が
冷たい目で舞台を見ていた。
「……やはり始めるか」
その声には
明確な嫌悪が滲んでいる。
背後の者が問う。
「いかがされますか」
男は即答した。
「監視を続けろ」
一切の迷いもなく。
「排除対象であることに変わりはない」
「……はい」
「街中で手は出さない」
「だが」
目を細める。
「必ず綻びは生まれる」
低く言い放つ。
「その時、叩く」
そこにあったのは
一切の揺らぎのない敵意だった。
夜。
王都中央広場。
人が集まる。
噂が広がる。
「新しい芸らしいぞ」
「例のダンジョン攻略した奴らだ」
期待が膨らむ。
その中央で。
大地は前に出た。
そして。
「……さぁ」
一歩踏み出す。
「開演だ」
光が灯る。
空気が変わる。
王都が舞台になる。
最初に動いたのは
ラステリだった。
分裂。
三体。
五体。
さらに。
トリックスライムの特性を活かし
空間を埋めるように広がる。
刃が舞う。
ナイフ。
短剣。
手斧。
それらが
光を反射しながら宙を踊る。
同時に。
ラステリ自身も舞う。
分裂個体が
交差し、回転し、入れ替わる。
完全なジャグリング。
だが。
王都レベル。
精度も速度も
一段階上へと引き上げられていた。
「……すごい」
観客の一人が呟く。
拍手が起きる。
次に。
フランの歌が響く。
優しく。
そして力強く。
音が広がる。
空気を震わせる。
観客の心に触れる。
ラステリの動きが
さらに洗練される。
刃の軌道が
芸術へと昇華する。
子供が笑う。
大人が見入る。
その場の空気が
一つにまとまっていく。
そして。
「お待たせしました〜!!」
軽い声。
マルディが
くるっと回転しながら登場する。
「本日のスペシャルゲスト!
おれっち、マルディでーす!」
一瞬の沈黙。
「……え?」
「骸骨?」
ざわめき。
だが。
マルディは気にしない。
むしろ。
楽しそうに笑う。
「いきますよ〜!」
指を鳴らす。
その瞬間。
地面から
骸骨兵が次々と現れる。
観客がどよめく。
「うわっ!?」
「な、なんだ!?」
だが。
骸骨達は攻撃しない。
整列する。
そして。
同時に動く。
回る。
跳ねる。
崩れて――組み直す。
まるで。
“生きた道具”。
いや。
演者だった。
マルディが
軽やかに指揮する。
「はいはい、そこテンポ遅いっすよ〜」
「もっと行くっすよー」
骸骨兵が
完璧に連動する。
集団演技。
波のような動き。
ラステリの刃と交差し、
フランの歌と重なり――
舞台が完成する。
「……すごい」
観客の誰かが呟く。
拍手が広がる。
笑顔が増える。
だが。
その光景を見ている者達がいた。
教会の人間。
その目は冷たいままだった。
「……穢れた力だ」
吐き捨てる。
「どれだけ取り繕おうと
本質は変わらん」
視線は鋭く。
「人を惑わしているだけだ」
一切の評価はない。
ただの否定。
「記録しろ」
「はい」
「奴らの行動、発言、接触対象」
淡々と命じる。
「必ず弱点はある」
冷酷に言い放つ。
「その時、潰す」
そこにあったのは
完全な敵意だけだった。
舞台の上。
大地はそれを感じていた。
視線。
明確な敵。
だが。
口元がわずかに上がる。
大地は小さな声で呟く
「……なにをしても無駄だ
俺達は止まらない」
ラステリが舞い続ける。
フランの歌が響く。
マルディが笑う。
ソル・フロールは止まらない。
王都での初日公演は拍手喝采で幕を下ろした。
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