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復活したら人食いチート怪物と化していた天外優人、その奇怪で危険で姦しい日常について  作者: まんぼうしおから
第四章・暗黒埋蔵金伝説

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61・戦後処理

 迷惑すぎる今回の一件も、やっと終わりそうだ。

 だけど、まだ全てにカタがついたわけじゃない。

 細かい後始末が残っている。


 ──それでも、大局は終わりに向かって動いているとみていい。

 なんせ敵のメイン戦力はもうないのだから。

 弾切れだ。

 死んだり逃げたり負けたり泣き出したりで、まともに戦えそうな者はあちら側には誰も残っていない。



「面白くなさそうな顔だね、少年」


 療養所の入口前。

 魔術が解けたことで草木が枯れ果て、以前の姿をほぼ取り戻したそこにいると、後ろから声をかけられた。


 天原さんだ。


「ああ、そうですね天原さん。面白くないっちゃないです。だいぶ取り逃がしましたから、素直に喜べませんよ」


「喜んでおいたらいい。取り逃がそうが勝ちは勝ちさ。消化不良なのはわかるがね、あまり気にすることでもない。煮え切らない結末を迎えるなんてのは、人間同士でやり合うとよくあることだよ」


「決着は持ち越しっスか」


「それは、また彼女らに再会することがあれば──かな。それまで我々や彼女らが生き残っていればだが」


「そう簡単にくたばったりしないと思いますけどね、あいつらも、無論俺たちも。……まあ、俺は一度ヤッちゃってますが」


「何があるかわからないのがこの業界だよ、少年。勝って兜の緒を締めよ──二度目の経験をしたくないなら、この言葉、しかと忘れないことだ」


 グラサンの奥からでもわかる力強い視線を向けて、天原さんが忠告してきた。

 手厳しいな。

 でも、業界の先輩らしい、適切なアドバイスだ。覚えておこう。


「なんにせよ、次会ったら容赦しないで終わらせますよ。課題をいつまでも残してるようで気分良くないんでね」


「フフ、その意気だ……といいたいが、まずはその格好をどうにかしたほうがいい。私も人のことはあまり言えないが」


「……そっスね」


 ここまで乗ってきた車に、着替えあればいいんだけどな……。





 ──話は少し戻る。


 あのあと、閉鎖された空間から解放されて俺と天原さんは屋上に出現した。

 当然、聖女たち三人もだ。

 それと全身鎧の男オーバザイルと、ネーナとかいった女性の遺体……というか残骸も。


 遺体は『浄』に任せることにして放置し、捕虜となった三人を連れて下の階へと下りていくと、三階で、登り階段から上がってきたほむらとゆらぎに鉢合わせした。

 そのままギャルコンビと共に下り、二階で待機していた間狩たちと合流。


 こうして、俺たちは誰一人欠けることなく、無事に全員集合することができたのである。



 合流して真っ先にやったのは、互いの情報を伝え合うことだった。


 やはり魔女カサブランカは逃げていた。

 理由は恐らくこうだ。

 天原さんとグリムヒルデが立て続けに乱入してきて、敵の勢力が増える一方なのに、味方は次々と敗北していく。

 そこにきて、とうとう聖女までもが醜態をさらした。

 これがとどめとなったんだろう。

 もう駄目だと、東方の魔物退治は見事なまでに失敗に終わったと、そう結論づけ、この場から逃走したんじゃないかと思われる。


 結界が薄れ出したのは聖女がリバースした後だから、まあ、この推測はほぼアタリとみていいはずだ。


 捕虜たちから聞き出した、魔女が潜んでいたらしき一室はもぬけの殻。

 何の痕跡も残すことなく消えていた。

 わずかでも手がかりがあればと『浄』の人たちが調べ尽くしてはいるが、あのしたたかそうな年増がそんなもの残して逃げ去るとは思えない。

 事実、遺留品の類いは一切見つかってないようだ。もしかしたら髪の毛一本すら落ちてないかもね。


 なので泣き女アデストや、『汚れた剣』こと騎士アンジェリカ、そして冷気使いグリムヒルデ同様、こいつにも逃げ切られたとみていい。グリムヒルデは別に俺たちから逃げる必要なかったんじゃないかと思うが。



 それと、残る一人。

 あの手足が鋭い女──フェアリッパーはどうなったのかだが。


「……面目ない。仕留められなかった」


「申し訳、ございません……」


「不覚をとりました……」


 少し衣服が破れてはいるが、特に怪我はない、苦虫を噛み潰したような顔の間狩。

 血こそ流れていないが、身体のあちこちを引き裂かれた白黒の狼コンビ。


「いてて……あの野郎、ピョンピョンせわしなく跳ね回りやがって……。クソ、あたしともあろうモンが……」


「だいじょーぶ? 全くもう、力任せに雑なやり方してるからこうなるんだよ。食らわなくてもいいような攻撃まで食らっちゃってさ」


 致命傷というほどではないが、手足に包帯を巻いてるほむらと、そのほむらをたしなめるゆらぎ。


「──逃げられましたわ。弁解の余地もありません。私たちの失態です」


 自分たちを責めるように、グロリア先輩はそう言っていた。

 その声色はいつものような穏やかさだけでなく、不甲斐なさからくる弱々しさも混じっているようだった。

 四対一、いや六対一であの切り裂き魔を倒すどころか逃がしてしまった情けなさによるものか。ゆらぎだけは変わりなく平常運転のようだったけど。


「いや、あのさ先輩、そこまでへりくだらなくてもよくない? 魔女が地形効果であいつのアシストしてたんだろ?」


「だとしても、逃がしたのは事実だ。フォローなどしなくていい。我々が──いや、私の剣が未熟だったのだ」


「そう卑下するものじゃないよ。私と少年だって一人逃がしてるからね。それも主犯の一人を」


「だけどさ、三人捕まえてるでしょ。死体まで含めたら五人。逃がした人数は同じでも、一人も捕らえられずにボウズで終わったあたしらよりはるかに成果上げてるじゃん」


「俺狙いで集まった敵を倒してたらそうなっただけだよ。たまたまさ」


「それにひきかえ、あたしらは……あーもう!」


 そこまで言ったところで、かんしゃくを起こしたほむらは、愛銃『サラマンダー』をぶんぶん振り回していた。


「おいおい、悔しいのはわかったからショットガン振り回すなよ。落ち着けって。暴発したらどうすんだこら」


「いやでも、ほんと凄いよね。さすがは機関の誇る人外コンビ……いや冗談だってば天原さん、ジョーダンジョーダン♪ そんなことよりさ、さっきから気になってたんだけど、その服どーしたのユートくん? エゲツないことに──」





 ──で、今に至るわけだ。


 聖女含む三人は拘束された。

 特に反抗したりすることもなく、すんなりと(してたらまた腹パンだった)。

 この後、機関に護送されてから、バチカンとの話し合いのあと、向こうから迎えが来てこいつらは連れ戻されるのだろう。その後のことは知らんけど、もう二度と来ないでほしい。



 ちなみに、着替えがあったのでそれを着たのだが、それでもまだ臭いがついているかもしれないので、帰りの車中は窓を開けっ放しにしていたことをつけ加えておく。俺は気のきく男だから。

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