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復活したら人食いチート怪物と化していた天外優人、その奇怪で危険で姦しい日常について  作者: まんぼうしおから
第四章・暗黒埋蔵金伝説

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41・止める女、止めない女、止めさせられた女

 身の程知らずの半端男どもを返り討ちにしたら、ここに居座ってることがバレましたわ。

 困りましたわ。

 でしたら、この状況を逆に利用して、ターゲットが来るまでずっと待っていましょう。

 来ないってことは……ないですわね。

 誰であろうと、むざむざ襲われるよりも自分から襲うほうを選ぶのが人の性。人にあらざる悪しき魔物でも、同じ考えに至るはず。

 招かれざる客が来れば、その都度撃退。

 そうして、お待ちかねの本命が来たあかつきには……存分に、全力で出迎えてあげようではありませんか。うふふのふ♪



(……なんて考えてんのかな)


 療養所を拠点としている、聖女と汚れし剣と他数名。

 そいつらの現段階のプラン(と呼べるほどの大層なものではないだろうが)は、ざっくりそんな感じなんじゃないかなと、悪しき魔物もとい俺は予想している。授業そっちのけで。

 細かいところは違うかもしれない。

 でも、だいたい合ってるのではないか。


 療養所のほうでおかしな動きがあれば即座に連絡がくることになっているが、スマホはずっと無反応。

 鳴らない揺れない。

 スマホの電源入ってるかどうか思わず確認してしまうほど反応なしだ。


 本当に何もしてないのか。

 それとも『浄』に気づかれず何かしているのか。

 どっちなのか、判別の決め手に欠ける以上、動きがないんだなと思っておくことにしよう。



 いつにもまして授業に身の入らぬまま時は過ぎ、チャイムが鳴り、休み時間へ。

 またチャイム。

 次の授業が始まり、また終わり、やがて昼休みとなり、また授業……。



 退屈な平日の流れは、何も変わることなく、そして放課後へと移行していく。


「……結局、動き無しか」


 やはり、待ち伏せや奇襲はやらずに、待ち構えるつもりらしい。

 一回待ち伏せして失敗してるからってのもあるんだろう。



 車で間狩たちと共に研究所まで運ばれようかなとも思ったが……一度帰宅することにした。

 自宅まで送ってもらい、部屋に行き、制服から私服に着替える。

 スマホも仕事用のものを持つ。

 これで良し。


 夕方まで時間を潰し、

 早めに作ってもらった晩飯食べて、

 また友達の家に泊まりにいくとだけ母さんに告げ、

 機関の車を呼んで研究所へ。


 母さんからは特に何も言われなかった。

 細かいことを気にしない親だと、こういうときに助かる。

 それから、研究所で間狩たちと合流して、また、車であの療養所へと向かったのである。

 乗り降りしてばっかりだな。



「えっ」


 車内でいくつかの情報をグロリア先輩と間狩から教えてもらったのだが、そのひとつが、


「天原さんも向かってるんですか?」


「もうあちらに着いているはずだと思いますわ」


 『鉄人』も参戦とのこと。


 あのぴっちりライダースーツで二輪を転がしながら向かったのかな。

 まさか現地までダッシュはないだろ……いや……ないこともないか……?


「やっぱりバイクかな」


「いえ、それはないかと。三人で向かったそうですから、我々と同様に乗用車でしょうね」


「三人? ってことは、あの二人が……」


「ええ。お察しの通り、九鬼さんと塞霧(さぎり)さんが同行しています」


 炎のショットガン使いのギャルと、氷の爪使いのギャル。

 ほむらとゆらぎ。

 属性の相性がすげー悪そうな組み合わせのわりには仲良さげなんだよな。幼馴染とかなのかね?


「天原さん──自由派としては、こちらに貸しを作るいい機会だと思っているのでしょう」


「こっちとしても一人欠けてるから、悪い申し出ではないと」


「彼女は来たがっていましたけどね」


「あー、あいつの性格なら、そりゃね」


「ですが、やはり念のため、玉鎮さんには安静にしてもらいました。いくら完治したとはいえ、昨日の今日ですもの」


 そう。


 今、療養所に向かっている面子は、俺と間狩と先輩、そして運転手のおじさんのみ。

 玉鎮はいない。引き止められたのだ。


 やはり、グロリア先輩だけでなく、根ノ宮さんやちーちゃんさんとしても、翌日の戦線復帰は認めることができなかったらしい。

 俺の熱心な治療のおかげで肉体的には元通りになってるとはいえ、次の日すぐ実戦というのは不安がないとは言えない。玉鎮本人はそんなもん全くないだろうが。


 学校も、休ませられた。

 今は、一人暮らししているアパートではなく、研究所の医務室のほうで待機となっているみたいだ。

 事実上のお留守番である。


 だけどそれを正直に伝えようものなら、玉鎮が反発するのは火を見るより明らかだ。

 なので予備戦力扱いすることで機嫌を損ねないようにしたのだとか。

 ……ただ、仮に根ノ宮さんたちが許可を出したとしても、相棒であるあのハンマーが壊れたままなんだから、やっぱ無理じゃないかな。

 またフルパワーで戦ってまた身体をやっちまったらアホだぞ。

 昨日はそこまで深刻なダメージではなかったからいいけど、次は戦闘どころか日常生活すら困難になるくらい壊れるかもしれないんだからな。俺の治療だってどこまで万能なんだかわからないんだし。


 その治療についてだが、グロリア先輩は詳しくは知らないようで普段通りの様子だが、()()()()()()()間狩は、あまり面白くなさげな態度をとっている。

 実の母親だけでなく、戦友までもエロい目に合わせたことを良くは思ってないみたいだ。

 当然っちゃ当然だ。

 良く思えるはずがない。


 でも俺がしてるのが、無償の人助けなのもまた事実。

 だからこそ、面と向かって俺を糾弾することもできず、ふて腐れた小学生みたいな顔でこっちをジト目で睨むことしかできないんだろうな。


「そうだ。派閥といえば、過激派は今回、どうすんだ?」


 先輩にではなく、間狩に問いかける。

 少しはその態度がやわらぐことを期待して、あえて訊いてみた。

 それに、こいつの親戚だからな、そこのリーダー。


 八狩雷華(やがりらいか)

 ギャル二名と同じお嬢様学校に通っている、間狩の分家筋の人間。

 使役する式神は赤銅色の大蛇で、主な武器は薙刀。

 武器術の技量では間狩に一歩か二歩及ばないが、真面目さと頭の固さならば上回っている。


「八狩のやつは動かん。立場上、お前をあまり良く思わないスタンスだからな。静観している」


 そっけない返事。

 それでも、このくらいならいいだろう。

 色魔とか変態とか言われるよりはずっとマシだ。


「あー、はいはいそういうことね」


 過激派の長として、怪物の肩を持つような真似はできませんと、そういうわけか。

 八狩本人は俺への態度を多少は軟化させてくれてはいるんだがな。

 間狩母の、あの一件から。


 ま、天原さん率いる自由派が手助けしてくれるだけでも十分ありがたい。



 こちらの人員については以上。


 他の大事な情報では、療養所に誰が何人待ち構えているかについても聞かされた。


 屋上に姿を見せたのは二名。

 一人は、聖女コルテリアらしき女性。

 もう一人は、全身を銀の鎧で包んでいる巨体の人物。

 『汚れた剣』こと騎士アンジェリカの姿は、屋上にもどこにも確認できなかったそうだ。

 でも、いないってことはないだろう。何もこっちに仕掛けてこないんだから、剣の手入れでもしながらのんびり俺を待ってると思ったほうがいい。


 それと、外から来た者についてだが。

 数名の男女が、それぞれ一人ずつ、療養所に入っていったらしい。

 その中には、あの植物系魔女もいたそうだ。


「やっぱ逃げたのかな、あの女」


 『浄』が見張っている中、魔女カサブランカは姿を見せたが、『泣き女』アデストらしき者は一度も現れなかったという。


「俺があの少年とやり合ってたの見て、及び腰になってたからなぁ……」


「元々、さしたる戦意も熱意もなく、面白半分に魔女の話に乗ったようですもの。あなたの強さを知れば、恐れおののき逃げ出すのも無理はありませんわね」


「そーなると、魔女のほうはなかなか筋金入りのイカれ具合っすね」


 仲良く二人揃って退散してもいいだろうに残ったってことは……最後までやる気か。

 見かけのわりに荒々しい性根だね。


「魔女というのはそういうものですよ」


 微笑みながら先輩が言う。

 ながらというか、基本的にこの先輩はいつも微笑んでいるんだけどさ。


「民衆や権力者に仕立て上げられた者ではない、本物の魔女。彼女らは一様に、狂気じみた好奇心を満たしたくて仕方がないのだと、古来からそう伝えられています。ならば、森の魔女も、その例に漏れず……」


 長い説明が、始まりだした。


 俺は先輩の話に適当に相づちを打ちつつ、どうして俺に寄ってくる女はそんな本気の奴ばかりなんだと、心の中で嘆くしかできなかった。

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