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復活したら人食いチート怪物と化していた天外優人、その奇怪で危険で姦しい日常について  作者: まんぼうしおから
第四章・暗黒埋蔵金伝説

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35・治療よろしく

無罪かもしれんけど化物だから実質有罪くらいのノリで狙われる優人くんかわいそう。



 初戦、結果発表。


 こちらの欠員はなし。

 誰も再起不能になってもいなければ死んでもいない。

 ただし怪我人が一名。玉鎮である。片腕が折れてるのは敵にやられたものだそうだが、他はほとんど自爆というか制御ミスによるものらしい。よくわからんが、とにかく全身まんべんなく傷んでいる様子だ。


 あちらは捕虜が二名と死者一名。

 捕虜とはリシェル少年と、エミリーとかいう人払い役の女性。

 死者は玉鎮にリベンジされたロシアの殺し屋。名前は長すぎるので忘れた。死人の名など覚える必要もないしどうでもいいか。死体はぐちゃぐちゃだった。


 悪くない戦績である。今のところは。


 ちなみにナユタは知らん間に姿をくらましていた。

 根ノ宮さんに会わせようと思ったのだが、うまく肩透かしをくらった形だ。

 でも、どうせ居場所や素性は機関のほうでも探りを入れて目星がついてるはずだから、そう慌てることでもない。俺の地元に住んでるんだし、やろうと思えば、しらみ潰しに探せば見つかるだろうからな。


 今はそれよりも西からの刺客をどうにかしないといかん。死に愛された美少女ちゃんについては、また別の機会だ。





「あークソ、やられちまったのはアタシだけかよ。マジクソだな」


 機関の施設である、いつもの研究所にて。

 時刻は夕方。



 結局、一戦終えたあと、俺は自宅に帰らずこちらにご厄介することにした。


 自室でくつろいでるところを襲撃されたらどうしようとか、そんな不安があるからここに来たわけではない。

 それはないんじゃないかなと思うんだ。

 もしあの連中がそうするつもりなら、遊歩道なんかじゃなくて学校にいるときに挑んできたはずだ。わざわざ人の少なめな場所を選んだのは、他人を巻き込むのをよしとしない方針からだろう。


 しかし、被害者は出したくないけど、物的被害はあまり気にしないようだ。

 遊歩道は酷いことになっていた。

 魔女たちがいなくなった後に残されたのは、幹も枝も奇妙にねじり合い、根っこが引きずり出された、もう手のつけようのない木々だった。

 不良のいたずらとか、野生動物の仕業とかで説明つけるには無理のある状況である。どうするんだろ。


 ──が、それは大人の方々が頭を悩ませることだ。まだ学生の身に過ぎない俺は、気にせず帰るつもりだった。

 じゃあ、なんで研究所に来たか。


 それは、ちょっと()()()()()()()



「しかも一度負けて、そのうえ相棒までブッ壊されちまったし……踏んだり蹴ったりすぎやしないか? 天外よぉ」


「勝ったし生き残ったんだからいいだろ。終わり良ければ全て良しさ」


「そーかなぁ……」


 この施設にいくつもある、医療行為に使われる部屋の一室。

 今、ここにいるのは俺と玉鎮の二人のみ。


 ギプスはめた右腕を三角巾で首から吊っている玉鎮が、病院とか保健室にあるような味気ないパイプベッドに腰掛け、さっきからボヤいている。

 間狩やグロリア先輩が無傷なのに、一人だけズタボロになってるのが、気に入らなくて恥ずかしいみたいだ。


 相棒とは言うまでもなく、あのハンマーのことだ。

 ロシアの棒術使いに破壊されてしまったのをちーちゃんさんに預けたらしい。

 元通りに直せるか、それとも新しいの買うことになるのか。どうなるかは俺にはわからないけど、ちーちゃんさんなら何とか修復しそうではある。


「ボヤくのはそこまでにして、そろそろ本題を言えよ。まさか愚痴を聞かせるために二人きりになりたかったんじゃないだろ?」


 部屋の隅に立てかけてあったパイプ椅子を一つベッドのそばに持ってきて、それに座り、俺は玉鎮に質問した。


 そう。

 頼みたいことがあるから、水入らずで二人きりになりたいと、こいつから俺に言ってきたのだ。

 それでここに二人でいるのである。


(どんな用件なのかさっぱりわからんな)


 マジで愚痴をこぼしたいだけだったら嫌だな。

 そういうのってさ、俺なんかじゃなくて、先輩や根ノ宮さんが適任だろ。

 間狩は駄目だ。あいつの性格からして、話を聞きながら静かに相槌を打ったりなんて気のきいたことは一切やらず、容赦のない正論で刺してくるに違いない。


「話し相手になってほしいから……ってか? ハハ、そんなつもりは毛頭ねーよ」


「んじゃ何なんだ?」


「何だと思う?」


「やめろよ面倒くせえクイズ」


 俺が嫌そうに言うと、玉鎮が苦笑した。


「わかったわかった、ンな顔すんなって。アタシも面倒臭いのキライだし、お前の気持ちはよくわかるからさ」


「ならいい加減言ってくんないかな」


「ああ、ハッキリと、単刀直入に言うよ」



 ベッドに腰掛けていた玉鎮が前傾姿勢になり、ずい、と顔を突き出すと、


「ズバリ──アタシを完治してくれ。いや、完治させてくれって言うべきなのかこの場合? 身体を癒すための活力を、どうか与えてくれってさ」


 そう言ったのだった。









 一方。

 天外優人たちが西からの刺客を撃退してから、今後について語り合っていた、そのほぼ同時刻。


 刺客たちが拠点にしていた療養所に、危険な空気が漂い始めていた。


「本当にこいつらで間違いないのかい、滑首(すべくび)のおっさんよぉ」


 療養所のすぐ前にある、この施設の駐車場として使われていた空き地。

 手入れがされてないわりには雑草がまったく生えてない。療養所からにじみ出ていた毒気のせいであろう。


 その空き地で、二種類のグループが対峙している。

 今、確認のために聞いた声の主は、一人を除いて若い男のみで構成された、七名のグループの一員だった。


「ひひ、間違いありやせんよ。護剣隊の皆々様」


 滑首と呼ばれた男性が、自分よりも年下の青年たちにへりくだりながら答えた。

 一人を除いて──とは、当然、この男性のことだ。


 サングラスに、雑に伸ばした髪の毛、仕込み杖。一見、視覚が不自由で杖を使っているように見えるが(本人もそう見せるためにそんな格好をしているのだ)、その正体は雇われの剣士だ。

 剣客というやつである。

 元々は、表沙汰にできない殺しを幕府から請け負う、いわば闇の首斬り役人の家系だった。

 その後、明治政府の一部要人に腕を買われて一族は刺客として雇われていたが、時代の移り変わりと共にそれも無くなり──いまだに剣の腕が必要とされる、オカルトうごめくこの業界に、滑首の末裔たるこの男は参入したのである。

 かつて、天外優人を三対一で狙ったときには安愚羅会に雇われていたが……今は、うまいこと、この青年たちに取り入っていた。


 護剣隊。


 日本を魑魅魍魎の脅威から守護するために結成された組織ではあるが……その歴史は、まだまだ浅い。

 なにしろ結成されたのはほんの数年前なのだから。

 従来の退魔組織に不満を持つ、あるいは華々しく結果を出して名を上げたい、そんな若く勝ち気な有志たちの集まり。言うなれば同好会に近いものがある。

 しかし、実力は確かだ。

 結果も残している。

 国内の退魔業界に詳しい者たちの間でも、最近頭角を現してきた新鋭として、彼らが話題に登ることが増えてきている。


 そんな彼らが、今回目をつけたのが。


 復活怪人天外優人を滅ぼさんと、はるばるヨーロッパからお越しになられたこの一団だったのだ。


 他国の、人格や言動に問題のある退魔師たちが、我が物顔でこちらの国で好き勝手やっている──そんな最新情報が、おいしい案件を日々求めている彼らの網に引っかかった。

 叩きのめしてもさほど問題にはなりそうになくて、しかも有名な連中が、無法な行為に手を染めている。

 名を上げるにはもってこいの獲物がわざわざ遠い異国の地からやって来た。

 典型的なカモネギだ。


 ──そう、彼らは考えていた。甘すぎる見積りで。

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