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復活したら人食いチート怪物と化していた天外優人、その奇怪で危険で姦しい日常について  作者: まんぼうしおから
第四章・暗黒埋蔵金伝説

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26・森の魔女と、そして、

この作品本当に伝奇ものなのかどうか

書いてる自分でも疑わしくなってきた今日この頃

「呆気ないものねぇ。寝起きの野ウサギのほうがまだ手間をかけさせるわよ?」


 上下が入れ替わってる体勢の俺。


 小馬鹿にしてくる魔女。


 落ち着いて見物するナユタ。


 三者三様とはこのことか。



 逆さまのまま、森の魔女と名乗ったこの女を観察する。


 年齢は三十代だろう。美容に気を使って若作りしてても、まあ四十代半ばってところじゃないか。

 美人だ。

 しかし欠点がある。

 とても、嫌な目をしている。

 こちらを見る瞳が、邪悪そうに淀んだ色をしているのだ。その目さえまともならセレブっぽい美女なのにもったいない。


 いかにも魔女という感じの黒い三角帽子には、大きな百合の花?らしきものがついている。

 衣服は、胸元のざっくり開いたドレスとマント。

 どちらも紫。

 これといって装飾のない、いたってシンプルなものだが、それが逆にこの魔女の魅力を引き立てている。

 ただ、足元の黒のハイヒールにだけは、帽子についていた百合みたいな花を模した飾りがあった。


 魔女カサブランカ。

 植物を自在に操る魔術の使い手。

 『月の宴』とかいう魔女の団体から抜け、縁を切ったはぐれ者。

 聖アストルフォ騎士団の『汚れた剣』こと騎士アンジェリカとつるんでいる、ろくでもない連中の一人らしい。


「こんな、小手調べにすらなってない遊びに引っかかるとか、拍子抜けねぇ。つまらないわ。はぁ……こんな歯ごたえの無い子が相手なら、あたし一人で十分だったわねぇ」


「そりゃすいませんね。期待にお応えできなくて。にしても流暢な日本語だ。どこで習ったんです?」


「習った? 面白いことを言うわね、ホッ、ホホホホ!」


 なにがおかしいのだろう。

 魔女が軽くのけぞって笑う。


「いちいち、こんな島国の言葉を一から学ぶとでも? ホホ、そんな手間ひまかけるはずないでしょう?」


「……当然」


 魔女が立っている場所より後ろにある太い木の陰から、新たな女性が現れた。

 当然、と言った声の主は、その女性だ。


 見た目は魔女より若そうである。

 二十代の半ばとか、そのくらいか。

 ワンピースにサンダルという軽装の、手入れのされてない赤毛を背中や胸辺りまで伸ばした、まあまあ美人だが目のクマがひどい女性。


 フリーランスの呪術師──『泣き女』アデストだ。


 足首に絡まるツタを通じて揺れを探っていたので、誰なのか特定はできないにしても、何者かが隠れているのはわかっていた。


 その女性以外にも、俺から見て右奥の木の陰に、あまり体格のよくない、男性らしき人物が潜んでいて、

 後方、ナユタのいる方向のずっと先、木の根元にある草むらの陰にも、女性っぽい者が一人しゃがんでいる。


 男のほうは、背丈からして、まだ子供なのかもな。ならナユタと大差ないくらいの年齢かもしれない。

 ま、襲いかかってくるなら、年下だろうがガキだろうが関係ない。

 餌食にするだけだ。女ならなおよし。


 聖女は……食ったらまずそうだが(味のことではなく、やったら問題になりそうという意味で)、そうじゃなければ、迷惑系エクソシストや不良霊能者の一人くらい、かじりついてもあまりうるさく言われまい。

 生命力のチャージだってやれるときにやっときたいからな。

 それが嫌なら、負けて俺に食われたくないなら挑まなきゃいいのだ。自分から腹を空かせた猛獣のオリに飛び込むような真似をする奴が大馬鹿なのだ。


「……私は、アデスト…………周りの人は、私を……『泣き女』と、呼ぶ……」


 どこか不安げにワンピースの裾を掴みながら、ぼそりぼそりと、女性が名乗る。

 目のクマと、たどたどしい喋りが相まって、寝不足に見えてくる。さっきまで寝てたのを無理やり叩き起こされたかのようだ。


「へえ、そうなんだ」


 今初めて知りました、みたいな態度を逆さ宙吊りのまま取る。

 「もうシスター達から聞いてるんでお宅らの事はだいたい知ってますよ」などとは言わない。知らないと思わせておけば不意を突く機会も生まれるだろうから。

 こいつらが、そこまで慎重になるべき相手かどうか怪しいものはあるが、やっておくに越したことはない。

 油断させておいて損はないのだ。


 で、どっちを先にやるべきか。

 いやその前にまず足のツタを……


 とか考えていると、小柄な男性も姿を見せてきた。

 やはり少年だ。

 ナユタほどではないが、かなり美しい容姿の少年が、こちらに歩いてくる。


 腰の左右に一本ずつ、体格に似合わぬ大きめの剣をぶら下げている。

 二刀流か。

 なら、こいつが『双剣のリシェル』ってやつで合ってるのかな。

 うん、顔も綺麗だし、きっとそうだろ。

 背中にまで届いてそうな金髪は、手入れをきちんとやってるようで、触らずとも見ただけでしっとりしてるのがわかる。そこの泣き女さんも少しは見習ったらいいのに。


 これで姿をまだ見せてないのは、後方に隠れてる奴だけだな。

 後ろのは、きっと俺が逃げたときの待ち伏せ役なんだと思うから、今の段階では隠れたまま息を潜めているに違いない。


「仮にも化け物でありながら、魔女の悪戯程度でこんなみっともない姿をさらすとはね……」


 失望を抑えきれないように、少年が俺に対して語る。


「僕は買いかぶりすぎてたのかな。あなたのことも、あなたにまんまと一杯食わされた、あの…………クラウスさんのことも……」


「勘違いもはなはだしいな。一杯どころか、米一粒たりとも食わせてないぞ」


「なら、自力で殺したの?」


「だから殺してないっつーの。俺はやってない。気がついたらもう腐り死んでたんだよ」


「ハッ」


 鼻で笑いやがったこのガキ。


「そんな弁解を真に受ける奴がこの世にいると思う? 少しはまともに考えてから喋りなよ。その頭は飾りなのかい?」


「信じることは大事だぞ?」


「ホホホ、口の減らない子ねぇ」


 俺と少年の話し合いに、魔女が割って入ってきた。

 年増は引っ込んでてくれねえかな。


「その寝言がたとえ真実だとしても、あたし達にはどうでもいいのよねぇ。そこは大事じゃないのよ。わかる?」


 うろうろとその場を右に左に歩きながら、身振り手振りを交えつつ、なにやら芝居がかった仕草で魔女が話を続ける。


「大事なのは、本当かどうかよりも、世間を納得させることができるかどうか……そこなのよ。この場合の『世間』とは、言わずともわかるだろうけど一応言うと、バチカンや、欧州の異能者業界になるわねぇ」


「ローランの……優れた騎士を倒した、こざかしい怪物を……私達が、倒す。それで、一件落着。面白いし、名も……売れる……」


「ああ、なーるほど。要はさ、狩りと売名がしたいってことね」


「この二人や、他の方々はそうみたいだけど……僕は少し違うかな」


 金髪の美少年はそういうと、


「──シュッ!」



 右手で剣を抜くと、居合のように、そのまま抜いた勢いを殺さず俺のほうへ振るった。



 ジュバッという、何かを切り裂く音。

 急に、俺の体が()()へと落ちていく。


「うおっ」


 頭から遊歩道にぶつかる。

 たいした高さではないが、舗装されている道にまっすぐ落ちれば、普通の人間なら頭蓋骨か頸椎をやってしまうくらいの高さではある。でも俺は化け物なんで無論ノーダメ。


 片足を見る。

 足首に絡まっていたツタが、途中から切断されていた。

 さっきの音はツタを斬った音だったのか。それにしても、剣が届く距離ではないのに、どうやって……


 ……その疑問は、すぐに解けた。


「あら、困った子ねぇ。囚われの王子様を解放するなんて。せっかく宙吊りにしたのに」


「僕がやりたいのは勝負であって、吊し肉を捌くことじゃないんでね」


「若いのに自信家ねぇ」


「ヒ、ヒヒ……後で、後悔しないと……いいけど……」


「僕の生き方に後悔なんてものはないよ。……さあ、立ちなよ化け物。足は斬らないでおいてやったんだからさ。ほら、早くしなよ。立てるだろ?」


 美少年の右手にある、剣。

 その剣は、鞭のようにしなやかに、無数の小さな刃が光るワイヤーらしきもので連なって伸びていたのだ。



双頭の蛇剣(ツイン・リンドブルム)。僕しかまともに使いこなせる者がいない、この禁断の二刀を前にして──生き残れるかな?」

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― 新着の感想 ―
こいつらもう食ってしまって良いのではなかろうか? 売名目的で襲ってくる奴らなんかに忖度する必要を感じないんよ。
全員かませ感というか小物感迸っててすき
なんだろう…溢れる三下感…
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