第四十五話 見た目じゃない!
なぜ、僕たちはここに案内された…
シェッツに
「明日の昼ここに来て下さい、マリンがここで待ってると思います」
と言われて、来たのだが
完全に鍛治屋だ、武器でも新調しろと言うことだろうか……
「あ、いたいた!!先に来てたのー」
マリンさんが勢いよく突っ込んできた
27が受け止めようとしたが
なぜか僕の尻尾を引っ張られクッションがわりにされた…
「27いきなり引っ張らないでよ!」
「すみませんマスター、勢いが強すぎたので」
しれっとしてるな…
「ケーティちゃん私も突っ込んでいい?」
イータお前はダメだ、突っ込んできた顔を手で押さえる
「姉貴も大変っすね」
全くだ
「マリン何で鍛治屋っすか?」
不思議そうな顔で僕たちを見てきた
「何でも何も、ここはアクアエリア随一の仕立屋だよー」
え、もろ鍛治屋って……
「それとー、何で皆さんは裏口にいるのですか?私表で待ってたのに一向に来ませんから、裏に回ったらケーティさんたちがいたので声をかけたのですが…」
裏口??
僕たちは表に案内された
全員目が点になった
おしゃれな看板に、ショーケースに入った綺麗なドレス等が飾られていた
「え、あれ、裏と全然違う…」
ささ、入ってと、マリンに手で案内された
内装はしっかりしているが、客が一人もいない…
階段から誰か降りてくる音がする
「あ、こんにちは!あなた方ですねシェッツさんから伺っています」
そこに現れたのは、それは綺麗な人だった
目と髪は水色で顔立ちはスッと整っており、服装はゆったりとしていた
身長もそれなりにある
才色兼備な女性といった印象だ
「はじめまして、ケーティです」
「綺麗な髪ですね!シルクみたいで…あ、すみません!私はギブと申します」
胸に軽く手をあて、お辞儀をした
「私はイータ、そこのいけすかない奴がダンガンで、27にギルゥよ」
「いけすかないって……」
「よろしくっす!」
「よろしくお願い致します」
「うん!よろしくね!ちょっと待っててください父を呼んで来ますので」
お父さんがここの店主なのか、イケメンエルフでも出てくるのかな?
「私は仕事があるからまたねー、ここの店主に任せてれば絶対大丈夫だから!今日貸し切りにしてるし、他のお客さんが邪魔してくることはないからねー」
マリンはこう言い残し店を後にした
貸し切り…
シェッツの職権乱用ではないかと思ってしまう
ギブが二階から降りてきた
「すいません、鍛治屋の方を見てきます」
いったり来たり忙しそうだ
「かーさん、父さん見なかった?」
「ここにいるわよ!!」
開けた扉の奥からカンカンと金属を打つ音が響いてきた
母親が鍛治屋で父親が仕立屋なのか
奥さんゴツいのだろうなと勝手に想像してしまった
「父さん恥ずかしがらないでよ!いっつも僕がお客さんの相手してるだから、今日ぐらいはお願いだよ」
「あなた、私の手伝いはいいから、息子に恥をかかせるき?行ってきなさい」
え、息子??
子どもがもう一人いるのかな?
「あんた客待たせてるのわかってる!?あーもうとりあえず私が出るわね、その間にギブ説得しといて!」
「どうも、ギブの母で鍛冶屋のミリだ」
愛想笑いでてきたのはこれまた綺麗な人だった、全くゴツくなかった
娘さんは母親似なのだろうと思わせる人だ、ただ鍛冶屋には見えない
「今息子が説得してるんで、ちょっとまっててくれ、用件だけでも伺っておくよ」
「シェッツさんからここに来て歓楽街にふさわしい格好にしてもらってくださいと言われていて、それで、」
僕が言い切る前に遮ってきたのはダンガンだった、ビシッと手を上げていた
「すいません奥さん!!息子って言いました?それはギブさんのことでしょうか?」
謎の沈黙が流れる…
「ん、ああ、そうだが」
しれっという母親
一瞬理解が追い付かなくなる我々
ん?
「「「「えぇ!!!」」」」
娘と思っていた人は息子だった
「あぁ、うちの子よく間違えられるんだよね、髪切ればまた違うのかな…」
「お待たせしました~」
どう見ても女性にしか見えないのだが
そしてもっと驚くことになった
「「「「えぇ!!!!!!」」」」
扉の奥から出てきたのは鬼神の如く鋭い視線に屈強な腕、大きな図体、そしてスキンヘッドに傷をつけた、オーガのような人が出てきた
なんと言うか、すごい家族だ…
奥さんと夫の仕事絶対逆でしょ……
「は、初めましてケーティです…」
「ほら父さん!!すいません極度の人見知りで」
ボソボソとしゃべりはじめた
「こ、この、この度はうちのお店に来ていただきありがとう、ご、ございます…」
消え入りそうな声だ
「ブロックと…いいます…」
あんなゴツイ手でこんなにキレイなドレスとか作れるから純粋にすごい
「私は仕事に戻るわね、それじゃ後は頼んだわよ、ギブ手伝ってもらっていい?」
「あ、はい、父さん頑張って!」
気まずい空気が流れる…
「よ、ようけん、は伺ってます…」
「えっと、特徴や…名前は伺っていましたので…デザイン等は、その、できていてですね、あとはこ、こちらの布に、お客さんの、ま、魔力を注いでいただければ、直ぐ…お作りします…あと、お代は要らないです」
僕たちの思考は完全においてかれていた、特にダンガンは…
「む、息子だったのか…あんなに綺麗な女性はそうそういないのに…」
27は無言でダンガンを穴が開くように見ていた
「っぐ、そんな目でみるな…」
「ところで対象は私とケーティちゃん、27、でいいのよね?」
ブロックはえ?という顔をしていた
「め、名簿には、ケーティさん、イータさん、ギルゥさんと書かれています……」
「私っすか?」
「はい……」
「あの男、メタモルを見抜いてた訳か…」
イータがボソッという
シェッツの偵察能力には恐れ入る
そもそも歓楽街行く理由も僕のネクロの力の制御のためだしな…
「さ、作業を開始しても?」
とりあえず、ギルゥはヒュームの姿になり
一人ずつ布に魔力を注いでいった
ギルゥは髪色と同じ鮮やかなピンクの布になった
イータは緑の深い色に染め上がった
最後に僕だが、真っ黒染まった、まさに漆黒といった感じだ
(ネイビーブルー辺りで良かったのに…)
そのあとは、あっという間だった
布の色に合う靴とアクセを付けピッチリ装備を施された、
そう、僕以外は…
「姉貴来てくださいっす!絶対似合うっす」
僕の中の男としてのプライドが許さない、くっそー、ましてやこんな大人の装い着こなせる自信がない
「着なかったらブロックさんにも失礼っすよ」
「そうよ!ケーティちゃん来ちゃいなさいって、あと、あなたヒール今のうちに履き慣れときなさいよ、私たちより高さあるのだから特にね」
そう、それも問題だ、こんな高いヒールは履きこなせる自信は全くない
プライドもあるが、兎に角自信がないのが一番の問題だ、ブロックさんにせっかく作ってもらったのだし、お金はシェッツが全額負担している、逃れられないのは明白だ、
イータもギルゥも見事に着こなして、自分が惨めに思えてきた…
「姉貴大丈夫っす!一度着て鏡を見れば、あっという間に自信がつくはずっす!」
綺麗な顔で見ないでくれ〜
気品の高い令嬢に囲まれた、田舎娘の気分だ…
……結局、着た……イータによって化粧もしっかりとされた…
「姉貴そのなんて言っていいか」
「ケーティちゃん、その凄いわね…」
「わ…わたしも…驚きです」
みんな、その反応は良くないってことか、作成者のブロックさんまで…めっちゃ目を逸らされている…
獣人の身体能力かヒールを履いても全くバランスを崩さなかったは唯一の救いだろうか…
「姉貴いいから鏡見るっすよ!」
「見れないよ…」
「ああ、もうじれったいわね」
イータに引っ張られ鏡の前にたった
見るのが怖い、みすぼらしかったらどうしようと、不安が頭をめぐる
だが、そんな心配は全く要らなかった
「え、これ僕?」
鏡の前にうつっていたのは、自分で言うのもおかしいが、恐らく僕があった中で一番美しいと言ってもいいぐらいの姿がうつっていた、
身長はヒールでカバーし化粧により、顔は大人らしく、そして黒のドレスと白髪が見事にマッチしており、ルビーのような目が際立っていた
「目覚めそう…」
いや、違うと首を横にふった
え、でも、鏡から目が離せない
その場でクルクルと回ってみる、いつもはここで、可愛らしいなと思ってしまうとこだが
今は違う、なんかその、カッコいい!
これは、可愛いを卒業できたのでは!
しかし、喜びに水が刺された
「めちゃめちゃ似合ってるっすけど、なんか、姉貴っぽく無いっすね…」
それはどう言う意味だろう
「ん〜確かに、なんか近寄りがたい高嶺の花感が出ちゃってるわね」
イータまで…
「こ、この街の歓楽街には、い、いいと思います」
「それもそうっすね」
「でも、いつもと違うケーティちゃんを見れて、ちょっと興奮してるわ」
鼻息が荒いイータは置いといて
「ブロックさんありがとうございます、ふさわしい格好にさせていただいて」
顔を真っ赤にするブロックさん、見た目は怖いけど、心は優しい人なのだなと思う
「ちょっと、可愛らしいかも…」
思わず小声だが声に出てしまった
イータとギルゥがヒソヒソ話を始める
「姉貴、なんか性格まで変わってしまったすか」
「今、ブロックさん見て可愛いって言ったわよね」
「姉貴というよりなんか、女王感が出て来ちゃってる感じっすね」
「私たちの可愛いケーティちゃんはどこへ行ってしまったのかしら」
「しっ、イータ、姉貴がこっち見てるっすよ」
「まぁ怖い、あの目で見られるとひざまずいてしまいそうになっちゃう」
「イータそれなんかちょっと違うっす……」
僕を見ながらヒソヒソ話して……お前らは悪役令嬢の取り巻きか
その後、ダンガンと27は試着室の外で待っていたので
お待たせーっと勢いよく出て行った
「お前らってそんな綺麗だったんだな」
褒めているのか貶しているのか分からんな…
「マスター?ですよね」
僕そんなに変わって見えるのか…
「あ、あの、こ、こちらシェッツさんからの、プレゼントです」
赤い三日月型のイヤリングだった
「僕にですか?」
うなずくブロックさん、早速付けてみる
ちょっと耳が重い
「そ、それは、マダムに会うための、許可証です、離さずにお願いいたします、あ、あとこちら手紙も」
何から何まで用意周到なようだ
手紙の内容は
店に入ったらイヤリングを絶対外さないように
マダムに失礼な態度を取らないように
レッドクイーンという魔族がいたら絶対挨拶する様に
彼女はあの街のトップだからね
最後に、胸を張って歩いていれば大丈夫ですよ
と言った内容だった
あと少しの間、僕たちは夜を待つことにした




