非行
「そう?学園指定の寮から皆の目を盗んで抜けれる人に褒められるなんて光栄ね」
試験会場で見せた冷淡さとは裏腹に、その横顔にはどこか疲れた色が滲んでいた。
朧はようやく首だけ動かして、背後の妾を見た。
「.....ああ。学院にいた女か」
朧の手が僅かに動いた__が、攻撃ではなかった。
懐からもう一つ煙管を取り出し、無造作に差し出してきた。
「へぇ...女に渡す用かしら?随分とませてるのね」
「粗末な男に用がある女も大概だろう」
ドーム状の建物の内部からは楽器の音色と嬌声が微かに漏れ聞こえてくる。
青年の目は妾、ファルナという同級生を値踏みするでもなく、ただ静かに観察していた。
「誰かの口説きを待っていたとか…?」
そう言うと朧が煙を細く吐いて、鼻で笑った。
「口説きを待つほど暇じゃない」
「そうなのね...にしてもこの煙草マズイわね、下町で食べた貝の味がするわ」
「お前..あれ食べたのか...?」
片眉を下げつつも、しかめっ面でコチラを見てから。
「だろうよ、ここの水路は吸い殻で酷く煮詰まってるからな、当然だぜ」
多少ニヤけ始めた。
振り返ると道端の水路に小さな貝殻が捨てられていたことを思い出す。
「...苦くて臭いシジミ、といった味であって相違なかったようじゃな」
「口こそ大雑把だが、舌は繊細な女だな」
(チッ...勘に触る男じゃわ!!)
「...苦味の正体が吸い殻の味かどうか、考えたくはなかったけれど...吸わされちゃったら仕方ないのよねぇ...」




