悪あがき
「……つまらぬ」
男の身体が後ろへ吹き飛んだ。
観客席が悲鳴を上げる。
男は地面を何度も跳ね、闘技場の壁へ激突した。
だが──。
「ッは、ごはッ……!!」
血を吐きながら。
「…わざわざ観客がいない方角にお前を誘導したってのに!」
ゾクリ、と。歓喜に震えるような気持ちが冷めた。
妾はそこでようやく理解した。
(なるほど、開幕から闘技場の外周を回り込むようにしたのは...放った魔砲で犠牲になる人間を対戦相手である妾のみに絞りたかった...)
「まともではないのかしら?あの一撃必殺...わざと収束して避難を促したでしょう?随分とまあ優しいロクでなしなこと。」
男はゆらりと立ち上がる。
そして、腰の酒瓶を噛み砕くように呷った。
瞬間。
魔力が変質した。
闘技場全体が軋む。
「──見せてくれよ、“本物”を」
観客席の結界が、ミシミシと悲鳴を上げ始める。
実況が絶叫した。
「な、なんだあの魔力量はァァ!? 結界班!! 出力を上げろ!!」
空が暗くなり風が止まる。
そして妾は──。
隠れた口元と、魔力上限。
人類の枠から超えそうなギリギリ限界まで吊り上げた。
「……よい!」
ぞわり、と。
妾の影が揺れる。
人の姿を保つための術式が、わずかに軋んだ。
「そこまで言うならば──」
闘技場の石畳が、ミリミリと沈み込む。
観客たちが息を呑む。
男だけが笑う。
静かに誰にも聞こえないよう告げた。
「妾が"魔王”たる所以、見せてやろうぞ…ッ!!」
全力の戦闘体制、イカれた頻度で頷く男は笑ってい絶叫した。
「いいねぇ……!!!それだぜ!それ……!!」




