初戦
試験官が合図をした、戦闘開始の合図だ。
普通ならたるはずだった。
合図が鳴った刹那、ルドが杖を振りかぶり、重量のある岩石の一撃が妾の足元の石畳から創られ攻撃が決まる_筈だったのだろう。
「魔法が出ない?!馬鹿なッ!不正だろ!!」
「もっと手短な"武器"に振り抜きなさい、アナタの身柄は丁重にへし折ってあげるから」
ルドが使おうとしていたのはおそらく。
岩魔法_実戦において敵の逃げ道を潰しながら自身の有利な地形を盤石のものとする戦略最強クラスの属性。
しかし対策はあった、足元の岩石を自らの魔力で覆えばいい。
相手の手中になる前に軽く地面に浸透率させる。
(...そんな厚底のブーツで、随分と露骨じゃな)
固定を強めながら悠然とルドに近づいていく。
しかし岩魔法頼りでロクな鍛錬の見えない細腕からの軌道は不恰好でお粗末、容易に近づけた。
至近距離で向けられた杖をつま先で弾いた。
(やっと普通に応戦しようとしたか...しかし残念じゃったな...妾にそれを間に合わせてやる優しさはない)
「そこまで!勝者_ルーファ・リアス!!」
会場が静まり返った。誰一人、何が起きたのか理解できていない。
「一は........くっ"っ?」
本人さえ理解できず唖然として呼吸を乱している。
白目を剥いて動かなくなった。
どうやら近づくに最短、つまり相手の足元に固執した結果らしい。
杖を無闇に動かして"動かない石床"へ振りかざすのに必死で魔力を無駄に使っていた結果らしい。
「動かせないダンベルに固執して気絶?まだ生身にも触れていないのに___もうどうでもいいわね」
"'へし折ってあげる"の宣言は杖にしか対応されなかった。
随分と優しい結果に終わった初戦だった。




