【後日譚8話あとがき】マグダとロレッタ、店長不在の陽だまり亭にて
――陽だまり亭
――ヤシロとジネットが三十五区へ行っている日のお留守番組
マグダ「……今日は割と暇で助かった」
ロレッタ「お客さん少ない日でよかったです」
モリー「こんにちわ? ニワトリさん来てますか?」
ロレッタ「あ、パーシーさんとこの妹さんです」
マグダ「……モリー。ネフェリーなら来ていない」
モリー「そうですか……」
ロレッタ「ネフェリーさんに何か用だったです?」
モリー「いえ。砂糖の生産量のことで兄と話がしたかったんですが……ニワトリさん、来てないですか……」
マグダ「……ネフェリーのいるところにパーシーあり」
ロレッタ「もう、そこにしかいないって認識なんですね……仕事もせず何やってるです、あのタヌキさんは」
モリー「折角来たんだし、ケーキでも食べていこうかな」
ロレッタ「それがいいです。ちょうど今ヒマなんで、サービスするです」
――モリーが席に着くと同時にドアが開き、ネックとチックが来店する
ネック「やぁ! なんて素晴らしい日なんだ。そうは思わないかチック? だってご覧よ、今日も陽だまり亭が開いているんだよ!」
チック「あぁ! まったくの同意だね! もしこれで陽だまり亭が閉まっていたら、僕たちは二人揃って今年ワースト一位のダウナーな気分になっていたことだろう」
ロレッタ「あっ、アリクイさんたち、いらっしゃいです」
ネック「やぁ、普通さん! 今日も元気だね!」
ロレッタ「あたし普通じゃないです! 割と凄いです!」
チック「その通りだよ! 普通に割と凄いYO-NE☆」
ロレッタ「だから、普通じゃないですぅっ!」
ネック「OK。とってもファインな気分だ」
チック「あぁ、そうさ。今日は素晴らしい一日になるよ。断言する。だって見てくれよ、寝癖がなかなか直らないんだ」
ネック「ヘイ、チック! それじゃあ、最低な日なんじゃないのかい?」
チック「何を言ってるんだ、やれやれだぜ。よく考えてみるんだ、お前の、その胸の真ん中にある心で、じっくりとな。寝癖がついてるってことは、快適な睡眠を堪能出来たってことじゃないか」
ネック「おぉう! そいつは確かに最高の日だZE!」
モリー「相変わらず楽しそうですね、ネックさん、チックさん」
チック「おや? 君は『いい人』の妹さんの『いい妹さん』じゃないか!」
ネック「なんて日だ! 今日はカーニバルか何かなのか? 素晴らしい陽だまり亭で、君の素敵な笑顔に出会えるなんて」
モリー「す、すて…………あ、あはは……相変わらず、お世辞がお上手なんだから……」
チック「お世辞じゃないさ。まるで臭ほうれん草のように素敵だよ!」
モリー「……それと比べますか」
ネック「おいチック。失礼だろう? 訂正するよ『いい妹さん』。君の笑顔は、砂糖大根のように素敵さ」
モリー「それ、同じものです」
ネック・チック「「いい物だよ、砂糖大根は」」
モリー「いや、まぁ……はい。そうですね。おかげ様で助かっていますしね。もう、それでいいです」
ロレッタ「あの、モリーさん? 怒ったです?」
モリー「いえ。感性は人それぞれですから。素敵だと褒めていただいたことだけを素直に受け止めておくことにします」
ロレッタ「な、なんか……大人です…………若いのに」
モリー「仕事上、頻繁に接していますし、彼らが悪意のないことも、また、気の利いた褒め言葉なんて言えないことも重々承知していますから」
ロレッタ「アリクイさんたち、完全にダメな子扱いです……」
モリー「そういうことが出来ないような、純朴なところがネックさんとチックさんのいいところでもあるんだと、私は思ってますけどね」
ロレッタ「ん~…………でもですねぇ……(チラ)」
モリー「へ? なんですか?(チラ)」
マグダ「……ご注文を繰り返します」
チック「あぅ! なんてこったい! 今日もマグダたんは俺たちの注文を繰り返してくれるそうだぜ!?」
ネック「まさに天使っ! マグダたんはこの世に舞い降りた天使のようだ!」
マグダ「……アップルパイが二つ」
チック「おぉ、ゴッド。僕はいまだかつて、こんなに澄んだ音色の『アップルパイ』を聞いたことがなかったよ。まるで、女神様の吐息のような清らかさじゃないか」
ネック「おいおい、さすがにそれは言い過ぎだぞチック」
チック「なんだって? じゃあ、ネック。君はマグダたんの麗らかな美声と女神様の吐息はまるで違うと、そう言いたいのかい?」
ネック「あぁ、そうさ。まるで違うね。ビコーゥズ! マグダたんの清らかな声は、女神様の吐息よりも、もっと美しいからさっ」
チック「お~う! こいつは一本取られたZE!」
ネック「さぁ、チック! そろそろ黙る時間だ。なぜなら、俺たちはまだ注文をしている。マグダたんに繰り返してもらうんだ!」
マグダ「……紅茶が二つ」
ネック・チック「「マグダたんの愛で温めてプリーズッ!」」
マグダ「……マグダたんのスマイルを二つ」
ネック・チック「「お持ち帰りでね!」」
マグダ「……残念。こちらでお召し上がりください」
ネック・チック「「おぅ、なんてこったい! バット! それはそれで、有り・DA・NE☆」」
マグダ「……少々お待ちくださいにゃー」
ネック・チック「「はぁぁん! 不意打ちのネコ化っ!? マグダたんマジ天使っ!」」
モリー「………………」
ロレッタ「ウチに来ると、だいたいいつもあんな感じですよ」
モリー「……取引先を、もう一度検討してみます」
ロレッタ「で、でもっ! 仕事は一流ですから! 私生活は大目に見てあげてほしいです!」
モリー「兄ちゃんみたいなのは、兄ちゃんだけでお腹いっぱいですので」
ロレッタ「あぁ、あの人は仕事も真面目にしてないからダメです。捨てるならそっちを捨てればいいです」
パーシー「おぉおおいっ! 滅多なこと言うんじゃねぇよ、普通の娘!?」
――いいタイミングでパーシーが陽だまり亭に入ってくる
――が、モリーと目が合って硬直。モリーの目が魔神のような暗黒の光を放つ
――パーシー、何も見なかったことにして、そっと店を出ていく
――ドア、静か~に閉まる
モリー「すみません……急用が出来ましたので、これで失礼します」
ロレッタ「はいです。頑張ってです」
モリー「兄ちゃん、ちょっと待ちなぁ! 仕事の話がしたいのに、いっつも遊び歩いて! もう! 聞いてるのぉ!?」
――モリー、パーシーを追いかけて出ていく
ロレッタ「ん~……なんか色々大変ですねぇ」
マグダ「……お待たせしました。あんかけかた焼きそば二つです」
ネック・チック「「はぁぁん! 全然違う料理を平然と持ってくるマグダたん、マジ天使っ!」」




