【後日譚7話あとがき】理想のプロポーズ Part3
――陽だまり亭
レジーナ「邪魔するで~」
ジネット「いらっしゃいませ、レジーナさん」
レジーナ「ウチ、店長はんのおっぱいが一番好きやで」
ジネット「どうされたんですか、一体っ!?」
レジーナ「あれ? おかしいなぁ。領主はんとこの給仕長はんおるやん?」
ジネット「ナタリアさんですか?」
レジーナ「そうそう。あの美人メイドはんが言うとったんやけどなぁ……店長はんは『お前のおっぱいが一番好きや』っていうプロポーズが理想なんや~って」
ジネット「そんなことないですよ!? ……確かに、以前、そういうお話がありましたけど……理想というわけではないです」
レジーナ「ほんなら、どんなんが理想なん?」
ジネット「ぅえっ!? いや、あの……い、いいじゃないですか、わたしのことなんて」
レジーナ「え~。聞きたいわぁ、店長はんを一撃で落とせる必殺の口説き文句」
ジネット「そんな……わたしはアルヴィスタンですし、そういったことは……」
レジーナ「つまり、特定の人間やったら、ど~んなセリフでも大歓迎~、ちゅうことか?」
ジネット「そ、そんなことないですよ!?」
レジーナ「『挟まれたいっ!』」
ジネット「あの……それは、ちょっと…………」
レジーナ「『押し潰したい!』」
ジネット「あの……」
レジーナ「『ぷるんぷるん揺らしたいっ!』」
ジネット「胸から離れてくださいっ!」
レジーナ「せや言うたかて、店長はんの周りにおる男なんて、大工のキツネ人族はんか、食堂店員のおっぱい人族くらいなもんやん」
ジネット「あの……ヤシロさんはおっぱい人族の方ではありませんよ?」
レジーナ「ほんでほんで? そのおっぱい人族の彼に、ど~んなセリフを言われたら『きゅん!』っとくんねんな?」
ジネット「えっ!? えぅ、あ、ぁの……そ、そういったことは……今のところ予定もないですし……兆しもないですし……何も…………あぁ、あの、ヤ、やめませんか、こういうお話は? ちょっと、恥ずかしいですし……え、えへへ……」
レジーナ「ほなら、キツネ人族の大工はんやったら、どないや?」
ジネット「…………? ウーマロさんがわたしにですか? ちょっと想像出来ませんけども」
レジーナ「……その温度差。店長はんも結構鬼畜やなぁ」
ジネット「えっと、わたし、何かしましたか?」
レジーナ「いや、ええねん。気にせんとってんか。アウトオブ眼中やちゅうことがよぅ分かったさかいに」
ジネット「そういうレジーナさんはどうなんですか? こう、異性に言われると『ドキッ』とするような言葉ってないんですか?」
レジーナ「せやなぁ…………『なぁ、自分。パンツ丸見えやで』とか?」
ジネット「ドキッとしますけども! わたしの言っているものとは種類が違います!」
レジーナ「『草木も眠る、丑三つ~?』」
ジネット「『どき』ですけども! それでもないです! もっとこう『きゅん!』とするやつです」
レジーナ「『草木も眠る丑三つきゅん』」
ジネット「ちょっと人名っぽいです!? 『うしみつ君』みたいで!?」
レジーナ「せや言ぅたかてなぁ……ウチ、男の人と付き合ぅたことないさかいなぁ……ピンとこぅへんわ」
ジネット「それは、わたしもありませんけども……何かこう、憧れるようなセリフとかはあるじゃないですか! 歌劇や童話のような、素敵なセリフが」
レジーナ「ほ~…………あるんや?」
ジネット「い、今はレジーナさんの話をしているんですっ」
レジーナ「店長はんが言ぅんやったら、ウチも教えたるわ」
ジネット「ホントですね? ちゃんと教えてくれないと、今日はわたし、強硬手段に出ますからね?」
レジーナ「なんや? まさか、『精霊の審判』使うっちゅうんか?」
ジネット「足つぼをします! レベルマックスで!」
レジーナ「言う! 誓うわ! 店長はんの足つぼ狂は噂でよぅ聞ぃとるさかい」
ジネット「では…………えっと、わたしから、先に言うんですよね……」
レジーナ「なんやったら、相手役やったろか? 『あ~、今日も絶好のおっぱい日和だな~!』」
ジネット「すみません! あの……相手役は、結構です」
レジーナ「そうか? ほなら、教えてんか。店長はんの憧れとるっちゅうセリフを」
ジネット「えっと………………こほん……。ふ、……『二人一緒に歳を重ねて、お爺さんとお婆さんになっても、一緒にお茶を飲もうな』……とか、言われると………………あぁっ! やっぱり今のは忘れてくださいっ!」
レジーナ「なるほどなぁ……(メモメモ)」
ジネット「何をメモしてるんですか!? 捨ててください、そのメモ!?
レジーナ「『お婆さんにお茶をがぶ飲みさせたい』……っと」
ジネット「内容が歪曲されてますよ!?」
レジーナ「なるほど。よぅ分かったわ! おおきにな。ほな!」
ジネット「………レジーナさん。最近、胃腸の具合はどうですか?」
レジーナ「じょ、冗談やん……そんな、怖~ぃ笑顔顔に張りつけるの、店長はんらしくなくて好きちゃうなぁ、ウチ……」
ジネット「では、聞かせてください。レジーナさんの理想のセリフを」
レジーナ「理想いぅたかて……別に普通やで?」
ジネット「普通でいいです」
レジーナ「せやから、普通に………………お、『俺の前では、素直になれよ』……とか」
ジネット「わぁ……素敵ですね」
レジーナ「そ、そんなことあらへんわ! ふ、普通や、普通!」
ジネット「レジーナさんは、ありのままの自分を受け入れてくださる方が理想なんですね」
レジーナ「も、もう、やめてぇーや! こそばゆいわぁ」
――そこへヤシロが帰ってくる
ヤシロ「いや~、キャラメルポップコーンがバカ売れで笑いが止まらねぇ……って。よう、レジーナ。来てたのか」
レジーナ「ま、まいど! お邪魔しとるで! 『邪魔するんやったら帰れ』って? ほな帰ろかな!?」
ヤシロ「なに一人でお祭り騒ぎしてんだよ? ゆっくりしてけよ」
レジーナ「いやぁ……今、このタイミングはちょっと……自分、空気読めてへんわぁ……」
ヤシロ「何がだよ…………あれ? お前、顔赤くねぇか?」
レジーナ「そんなことあらへんのんとちゃうかな!? ウチ、めっちゃ元気やし!」
ヤシロ「またそうやっておちゃらけて誤魔化す…………お前さぁ、俺の前ではもっと素直にしてろよ」
レジーナ「――っ!?」
ヤシロ「俺も少しくらいは薬のこと分かんだしさ。風邪を引いたら引いたで、もっと素直に甘えてくれりゃ…………って、どうした? 面白い顔して」
レジーナ「…………」
ヤシロ「おーい。レジーナ~?」
レジーナ「……自分、そら、あかんわ」
ヤシロ「……は?」
レジーナ「ウチ、帰るっ!」
ヤシロ「おい、レジーナ!?」
レジーナ「ゲコーっ!」
――レジーナ、ヤシロを威嚇して、店を出ていく
ヤシロ「……いや、『ウチ、帰る』が『カエル』になってんじゃねぇかよ……」
ジネット「ちょっと、タイミングが……色々と……」
ヤシロ「まぁ、いいか。ジネット悪いがお茶をくれないかな?」
ジネット「お茶でいいですか? コーヒーも出来ますよ?」
ヤシロ「いや、今はちょっと落ち着きたい気分なんだ。あ、そうだ。客もいないし、二人で一緒にまったりお茶でも飲まないか?」
ジネット「…………」
ヤシロ「ん? ジネット?」
ジネット「えっ!? あ、はい! そうですね! お茶! 飲みましょう! 落ち着いて!」
ヤシロ「どうした? なんか物凄く慌ててるようだけど?」
ジネット「い、いいいいいいいいいいえいえいえいえいえいえ~い! 慌ててませんよ!?」
ヤシロ「『いえいえ』が最終的に『いえ~い』になってたけども?」
ジネット「そんなことより、お茶です! お茶を飲みましょう! 淹れてきます」
ヤシロ「あぁ。頼む」
――ジネット、厨房へ行きかけて、ふと立ち止まる。ゆっくりと首だけを振り返り……
ジネット「あの…………もし、わたしがしわしわのお婆さんになっても、……一緒に、お茶を飲んでくれますか?」
ヤシロ「え?」
ジネット「あ、いえ! すみません。忘れてくださ……」
ヤシロ「お茶、淹れてくれるならな」
ジネット「…………え?」
ヤシロ「しわしわのジジイでよければ、相手してやるよ」
ジネット「………………はい。ありがとう、ございます」
――ジネット、足早に厨房へ向かう
ヤシロ「……なんだかなぁ」
――ヤシロ、テーブルに座り頬杖をつく
――と、厨房からジネットの声が聞こえてくる
ジネット「むふー!」
ヤシロ「どした、ジネット!?」




