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トラッシュボックス ~消えたいヒカリと消えないアイツ~  作者: たっきーぷらす
高1編

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78/79

Box.78 16倍

『皆知ってると思うけど、昨日欧州がとんでもないことになったらしいね』


 壇上の司さんが号令をかけました。

 卒業式が終わって、春休みのはずだったのですけれど、私達の学年全員が呼び出しを受けました。何があったかは分かっています。世界中の話題が持ちきりでしたから。元々は聖地巡礼に行くつもりでしたが、それどころではありません。

 見渡すと、昨日卒業式をした講堂に、私達の他にまだ授業がある在校生が一様に招集を受けているようです。あーなるほど。高校卒業した学年は免除で、新高1の私たちと新高2、高3が呼ばれたわけですね。


 新しく高3になった司さんは、普通の学校で言うところの生徒会長のような、中高6学年の総代表の立場になっています。まぁ去年から副代表でしたし、前の人を覚えてないくらい、司さんが目立ってましたけどね。新しい高2から選ばれる副代表は峠姉弟のお姉さん、和葉さんみたいです。ヤン君の彼女さんの仲良しさんです。

 女子が続いているから、来年はリブか叶ですかね。私?いやいや、そんなそんな。くじ引きだったら、ラッキーで選ばれるかもしれませんが。



『今回は、捜索範囲が広すぎるからね。高校生全員で行くわ』

 マイカ先生の言葉に、思わず顎が外れそうになりました。蘇生能力者がいるかも、という話は分かりました。その人を確保しないといけないことも。どう考えても、捜索の人手が足りないですよね。どうするんでしょ?って思ってましたが、まさかの全員参加。


 えーーーっ、と思ってる間にあれよあれよと、私達はイギリスまで行くことになるのでした。…箱庭はお金ありますねぇ。



 イギリスに到着し、翌日…3/18の朝から行動開始です。まずは、イギリスの拠点になっている、Fairford基地からモン・サン・ミッシェルへの大移動です。そう、リブが捕らえられていた場所ですね。今度は私たちがここを使います。みんな避難して島には誰も居ないうえに、宿泊施設は十分にあります。リブはすごく嫌そうな顔をしていました。『もう二度と来たくなかったよ…』

 でも男子は武器屋を見つけ、鉄兜を被って楽しそうでしたよ。隼翔君と大和君が特に楽しそうでした。持って帰るのなら、お金払わないとダメですよ?


 

 翌19日の朝のミーティングで先生に言われました。

『プリヤ、あなたの‐Fortune‐でラッキーを付与して。高倍率を引いた人間を捜索に向かわせるわ』

『高倍率を引いた人は、色々と当たりを引く確率も高いでしょう』

「そのために多人数にしたんですね」

『にしし…それもあるよ』



『プリヤのラッキーって最大何倍だっけ?』

 ふふふ。よくぞ聞いてくれました、司さん。私のFortuneは成長しました。今や最大4倍ではありません。

「それはですね……16倍………だ!」

 両手で16を作って決めポーズを取ります。


挿絵(By みてみん)


 決まりました。戦隊ものならここで背景にドカーンと爆発が起こるところです。


 16、つまり以前の4倍の2乗まで幸運にできるのです。まぁ、運勢1/16になることもあるのですが。もしそうなったら…その日は家から出ないことをお勧めします。歩く度に何かを踏んづけたり、躓いたりしますので。

 ちなみに私が1/16を引いた時は、ごはん屋さんはお休み、食べたかった寿司ネタは売り切れ。挙げ句スーパーのお惣菜も割引シールが貼られる前に買ってしまいましたし、ミルクのつもりで買ったパックは飲むヨーグルトでした。恐るべし1/16!



 さて、私を含め25人の皆さんにFortuneをかけました。干渉する概念は「やることなすことラッキーになる」確率です。さてさて結果は…ヒカル君1/16、元気さん1/16。あらー、残念でした。

『これ、今日は何やってもダメなの?』

「成功率90%でも、5%ぐらいになりますね」

『…今日は寝とくよ』

『僕もそうするよ。サボれるからラッキーだったり?』

 本当にラッキーと言えたかどうかは、明日聞いてみましょう。


 後は皆1/4から4倍みたいですね。っと思ったら、リブ16倍、司さん16倍!素晴らしいです。なんだか二人ともパートナーの運勢を吸い取った感じですね。彼ら4人を見た感じだと、普段からそういう星の下なんでしょう。


『ふーん。なるほどね。司、リブあんたたちはどこが怪しいと思う?』

『恩寵じゃなく…ただの勘なんですけど』

『私は…この辺かな』

 2人は吸い寄せられるように地図の同じ場所を指しました。――リヨン。フランス南東部にある、パリに次ぐ第二の都市です。


『運勢最高の二人が揃って示す場所、まず探す所としてはうってつけ、ね』

『よし、リヨンの病院は二人に任せるわ。行ってらっしゃい!』

『…後のメンバーは飛べないのばっかりだから、近場からやりますかね』



『じゃあ行こう、司!』

『では、リヨンまで飛ぶよ。Grace<あなたの小道を私に>』

 シュン!と光って3人は消えて行ってしまいました。いつぞやのGraceによる瞬間移動です。行ったことのない場所だと細かく指定はできないらしいですが、かなり近いところまで行けるそうです。


 行ってらっしゃいませ、司さん、リブ。

 ………あれ?…さん?……?3人、だと…?


―――――――――――


 光が消えて視界が開けてきた。私達は少し高い丘の上に着いたらしい。ここがリヨン?さっきモン・サン・ミッシェルから見た景色、周りの干潟は何も変わってなかったけど、リヨンは元々大都市だったんだよね?見渡す限りの森、森、森。大森林と呼ぶのが適切かも知れない。一体どれだけの人の生活が壊されたんだろう。


『座標からすると…あの川のほとりの病院…だね』

 すぐにでも森に飲み込まれそうな建物。巧からの情報だと、辛うじて病院の機能は維持できてるそうだけど、スタッフの多くは既に退避しているらしく、病院には動かせない重篤な患者3人と主治医、そして女の子が取り残されているそうだ。


 あれ?何か…重いな。と思ったら服の裾をかろうじて握ってぶら下がっている人が声にならない叫びを上げている。…誰だっけ?


『あれ?ミューじゃん?何でいるのさ?』と、司。

 説明したいのか、手をバタバタさせてるけど、声が出ないようだ。まぁ一旦下りますか。


「司、引っ掛けてきたでしょ?」

『え、そうなのか?それはすまなかった!』

<ホントですよ。私のヘッドホンを司さんが引っ掛けて、そのまま飛んじゃったんですよ!>

 あ、この人ヤンの彼女さんの筆談で話す人だ。うちのクラスでは‐Connection‐の念話で話してたけど。

『ごめんよ。気をつけるべきだった。まぁリブと病院を見てくる間、ちょっとここで待ってておくれ』

 

 ちょっと気になってミュー先輩に聞いてみた。

「先輩…プリヤのラッキーって、いくつだったんですか?」

<……1/4>

 あー。やっぱりFortuneでハズレを引いたせいか。1/4でこれだと、1/16を引いたあの2人はどうなるんだろう。



 ミューさんを森の中に残して、司と二人で空から病院を見下ろす。

「…何か建物、ぐらついてない?」

『まずそうだな。すぐにでも倒壊しそうだ』

「急いで取り残された人を探すよ…‐Particle(パーティクル)‐」

 左手を上から下へ振り下ろす。粒子化した腕を建物の中に侵入、スキャンするように粒子に触れるものの中から、人の大きさの動く物体を探していく。

 今にも崩れそうな建物の一階に人影。あの子だ!

「見つけた!」

『時間がない、行くよ!』


 壁を切り裂いて、建物の中へ突っ込む。いたのは金髪の女の子だ。驚かせた…よね。びっくりした顔でこっちを見てる。


『君、助けに来たよ!』司が女の子に手を伸ばす。

「司、日本語分かるわけないじゃない!ここフランスだよ?」

『フランス語なんて…恩寵で話せるけど、切り替えたら飛べなくなるし…。リブ任せた』

「りょーかい!」



「Je suis là pour vous aider ! 」

「Comment tu t'appelles ? 」

『Je m'appelle Mira. 』

『Tu es un ange ?』

 え、天使様なんて、照れるなぁ。でもそれどころじゃない。

「Allez, sortons d'ici : 兎に角、ここから出るよ!」


 

 外に出た途端、建物は半分が瓦礫になってしまった。間一髪だった。

 助け出した少女はミラ。10歳の女の子。家族は皆亡くなってしまったらしい。診てくれてた先生もさっき亡くなった、とか。


『リブ、その先生らしい遺体があったけど、白衣の中の背中が半分削げてた。何でさっきまで生きてたんだ?』

 思わず司と顔を見合わせ、ミラを見る。そのドクターは重傷を押して治療し続けていたのだろうか。ミラにどんな先生だったか聞いてみると、こう答えた。

『Quand le médecin ne se sentait pas bien, je lui frottais la main et il rouvrit les yeux. : ドクターが元気ないとき、手をさすってあげたらまた目を開けてくれたの』


 また司と顔を見合わせる。今度は確信がある。プリヤの能力はやっぱり凄い。いきなり世界の明暗を分けるかも知れない子に辿り着いた。


 …この子が、蘇生能力者。

 

プリちゃん、左手親指を外に向けないと相手から6に見えないよ。


追記、次回更新は11/3です。

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