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トラッシュボックス ~消えたいヒカリと消えないアイツ~  作者: たっきーぷらす
高1編

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76/79

Box.76 信奉者

 欧州は一夜にして太古の原生林と化した。地表に張り巡らされた木々の幹や根によって、あらゆるインフラは破壊され、橋や高層ビルなど建築物は多くが倒壊。即死を免れた人達も、運輸機能が壊滅してまともに避難することも叶わず、食料はそこにあるものだけとなった。補給を受けたければ、海岸線にたどり着くか、十字軍よろしくトルコ辺りまで逃げ延びなければいけない。それも徒歩で。まさに阿鼻叫喚、地獄絵図となっている。


「これは…どういうこと?」

 呼び出されたモニタールームで吠えた。

「十中八九、Plant絡みだけど、どうしたの?あの爺さん、死んでFactor化したわけ?!」

 そこにいるスタッフは一様に首を振る。判断がつかないのだろう。


挿絵(By みてみん)


 まずこれが意図的に起こされたのか、Factor化したPlantが起こしたのか。規模感やいつ死んでもおかしくない超々高齢者だったことからして後者だろうが、箱庭からFactor災害を出すなんて最悪だ。これで世界の私達を見る目は確実に変わってしまう。

 普通なら原生林の発達は数日で収まるはずだけど、拡大が止まっても枯れずに残るかどうかは、分からない。以前のユグドラシルは、しぶとく生きていたから、残るのかもしれない。


 次に目的は?何のために超々超大規模破壊を起こしたの?…分かっている。

「蘇生能力者を誕生させるため、ね」

 やってくれたわ。あらかじめ数か月かけてFactor因子をばらまく。そして数億人を一気に死に追い込めば、能力がまだ覚醒してない感染したばかりの異能者が、肉親の蘇生を強く強く願うことも多くなるでしょう。分かりやすく言うならば。

「能力ガチャを天文学的数で回すってわけね」

 自分自身の能力が発現する前にトラウマを与えないといけないから、Factor因子をバラまいて間を置かず起こした、純然たるテロ行為。Factorのことなんかどうでもいいと思えるくらい、腸が煮えくり返る。

 


「これ、何から救援すんのよ?水?食料?電気?数億人分の食料なんて、どうやって?」

 それだけで国の一つや二つ傾くだろう。しかも場所は敵地と言っていい。きっとヤツらの戦力は残っているだろう。のこのこと各地に散って、各個撃破されたら目も当てられない。


「…無理ね」

『無理でも出来ることはやりませんとね』

 …クレア。また勝手に頭につないだわね。

『非常事態ですから、許可は求めませんよ?』

 それは別に良いわ。USAはどう対応するの?

『それがですね…私に、どうにかしろ、と言われまして……酷くないですか!?私、何もしてないのに!』

 まぁ普通は私らが何かした、と思うわよね。で、どうにかするのに必要な色んな許可や権限は?何が使えるのさ?

『それを共有しようかと。…えっとですね』

 

 クレアから提示され聞いたことを掻い摘むと、こうだ。まずイギリスは無事。海を隔ててるからね。Plantの能力が届いてない。よって前線基地としてイギリスの協力を取付けた。こないだの欧州からの脱出の援助をしてくれたように、元々英国は欧州支部よりアメリカ支部との繋がりが強い。これはデカいわ。

 EUの中心、仏独は壊滅。周辺のベルギー、スイス辺りも政府機能が麻痺してるらしく応答なし。伊はアルプスのせいか被害は軽微だけど、Plant達はきっとここを拠点にする気よね。一方ピレネー山脈は防壁になっていない。故にイベリア半島も壊滅してて、仏独同様。その他の国は辛うじて国の体裁は残ってるみたい。北欧、東欧は気候に救われて壊滅は免れたみたいね。流石に永久凍土やツンドラに原生林は育たないのだろう。


「この状況だと、覇権主義に進もうとする国がなさそうなのは幸いね」

『攻め込んでも廃墟と避難民しかいないので、旨味が少ないですからね。それよりは難民対策に躍起になるでしょう』

 そのうち、野心的な国が出てくるだろうけど、国が存続しているということは、国民を保護する義務がある、ということで、そっちに注力するしかない。なので周辺国に戦争を起こす余力はない、と見るのが妥当だろう。



「後は蘇生能力者の争奪戦、ね」

「出現するかどうかも分からないけど、私たちが見つけて確保したいところね」


 蘇生能力者が出現し難いと思われる理由は幾つかある。

 一つ、『他人』を蘇生する能力だということ。自分を蘇生するリブでさえ、他に類をみない。叶みたいに他人を治せる能力は他にもあるが、とても珍しい。両方の特性を併せ持つだけでも、レアリティの高さが窺い知れる。

 二つ、単純な蘇生ではダメで、欠損した肉体を復元する必要があること。現状のFactorが生き返っても、首から上だけでは数分で再度眠りにつくことになるだろう。

 三つ、蘇生しても神経機能…つまり意識や記憶があるか、体を動かせるかどうかはまた別の問題だということだ。こちらの手札で言うなら、保存した記憶なりを梓のEternalで移植する必要があるかもしれないし、それだけでは不十分だろう。


 それ以外にも、突然何十万人も異能者が出現する事態になる。これについては考えるだけで頭が痛いわ。更に今日明日中にもFactor災害もあちこちで起こるだろう。これは本当にどうしょうもない。今回の災害の一部と思ってもらうしかない。


『蘇生能力者の所在の宛はあるんです?』

 無いけど、連中が効率的にFactor因子をばらまこうとするなら、大勢の人の動線が行き交う場所に合わせるのが好都合よね。飛行機や船では不特定多数に感染させれないし、アウトバーン走っても同じ。

『とすると?』

 第1候補は、高速鉄道沿線だった地域よ。

 




――――――――――――


――イタリア北部ミラノ近郊。箱庭イタリア支部


「Plantの能力はやはり強力だよ。悲しいかな、これまでは全盛期には程遠いものだったようだね」

『これが本来の規模だと…?』

「そうだよ、自分の体の寿命を気にせずに行使すれば、こんな感じだよ。全力の威力は流石にSingularityってとこだ」

『…これから、どうされるのですか?』

「そうだね。まずは予定通り蘇生能力者が生まれてないかを探す。厳しいと思うから、見つかればよしってとこだ」

「見つからなければ、次にリブを確保する。こっちは半年以内、かな」

『仰せのままに、…Factor』


「うん、君とは初めましてだったけど、うまくやっていけそうだよ、シン」

『…いえ』



「さぁ、頼んだよ、信奉者たち」

「まだ眠っているボクの体を、目覚めさせるんだ」

一話から順々にルビを振っていこうかと思案中。

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