↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トラッシュボックス ~消えたいヒカリと消えないアイツ~  作者: たっきーぷらす
中3編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
68/69

Box.68 継承

『止めておきなさい、ヒカル君。Particleなんて能力は、正気の沙汰で使える代物ではありません』

『あの化け物だから、まだ使えてるんですよ』


挿絵(By みてみん)


「知ってますよ。だからリブは強いんです」

「それと、訂正してください。リブは化け物ではありません。彼女は…優しい女の子です」





 僕が本当の意味で、Particleを使えるようになったのは、僕たちがフランスへ渡る一か月前のことだった。



 その日、僕は退院したタローさんと一緒に箱庭最下層へ向かった。前日までタローさんは右手の骨折と全身熱傷で入院していた。向かったのはFactorのいる場所、リブが攫われた場所だ。部屋の酸素を焼き尽くす火災があったにも関わらず、施設自体の損傷は軽微なものだったらしい。むしろPlantの残した世界樹——ユグドラシルの伐採の方が大変だったそうだ。

 

『これからのことを話す前に、謝罪しておきたい』


『リブのことでお前に謝るのは二回目になるが』

 タローさんは深々と頭を下げた。

『すまなかった。今回のことは全て私の力不足だ』


「タローさんのせいではないです。Singularity二人、それも燐先生が相手では、どんな結果でも仕方ないと思っています」

「頭を上げてください。最強が相手だったんですから」


『最強であっても、だ』

『未来をつなぐ立場の者が、未来の希望を危険にさらした。これは恥ずべきことだ』

『それが去り行くものなら、なおさら、な』


「どういう意味ですか?タローさん、辞めるんですか?」

 苦笑するタローさんに部屋の中央の新調されたデスクに促された。僕がそのままタローさんの向かいに座る。続く話は僕が想像もしていないことだった。


『これからの話だが』

『…ヒカル…私は、そう遠くなく死ぬ』

 …?…は?

「…え!?…何言ってるんですか?…病気か何かですか?」


『まぁ聞け。何も今すぐということではない』

『凡そ1年後の話だ』


『まず私の能力のことだ。-Cosmic Velocity-言葉の意味は知っているか?』

 -Cosmic Velocity-タローさんの能力名。あまり語りたがらない印象だったけど。


「…宇宙速度、でしたっけ」

『そうだ。若い頃の私が名付けた、中二病のような名前だ…』

 と自嘲するように笑う。

『その実は、時間停止能力だ』


「…時間、停止。…そうか、…なるほど。納得しかないです」

「それでタローさんに攻撃が効かないんですね」

 タローさんとの特訓を思い出す。殴っても全部受け流されるみたいに全く効かない。リブと一緒に追い込んだと思っても次の瞬間、包囲から抜けられる。瞬間移動のように思ったこともあったけど、それでは全く説明がつかない何かを感じていた。


『そうだ。だが、この能力の反動で私の体はもう持たなくなってきている』

「…反動、ですか」

『私の能力は、周囲数百mの時空を留めるものだ。その外にまで影響はない』

『ただ境界には歪ができる。次元のずれだ』

『体感的には、1秒弱。そのくらいの歪みなら何も起こらず元に戻る』

『だが1秒を超えた場合』

 タローさんは自分の左胸をトントンと叩く。

『歪みの反動を自分の体で支払うことになる…寿命という形で』

 思わず目を見開く。



「寿命…」じゃあ…。

「命を削って僕たちを鍛えてくれていたんですか?」

 少し寂しそうな笑顔を見せるタローさん。

『はて、お前たちが私に何秒も能力を使わせたことがあったか…?』


 気に病むな、という気づかいなんだろう。この人はいつも本気とも冗談ともつかないことを言うんだ。でもタローさんは、抱えきらない荷物でも自分で背負い込んでしまう人だから、そう決めてしまった真実は言ってくれない。

 何となく気づいてしまった。…あぁ、そうか。時間を止めれるから、自分さえ頑張れば、どんな仕事もそのうちにどうにか出来てしまう、と思っちゃうんだな。



『…というわけで、私はPlantや燐のような強者とはもはや戦えないだろう』

『だから私は、お前たちに託す時が来たのだと思っている』


「…タローさん」

『おっとヒカル、昔のように泣くなよ?』

『私は喜んでいるんだ。人生の最期で、恐らくは最強の能力者に出会えた』

『しかも、まだまだ発展途上と来たものだ』


 僕は慌てて手を振る。

「最強、なんて…そんなこと思ったこともないですよ」

 でもすぐに手を振るのはやめた。

「他の人はタローさんのこと知っているんですか?」

 

『私の寿命のことか?マイカは知っているだろう。Plant達には先日バレてしまった』

 ははは、と笑いながら言う。

『だが、リブも含め学生の中では、お前に初めて伝えることだ。ただこの間のことでリブにも気付かれているかもしれんが』


 

 スッとタローさんの表情が真剣になる。気が付くとタローさんは僕の後ろにいた。そう、こんな感じで気楽に能力を使うから、てっきり瞬間移動だと思っていたんだ。

 寿命削るのならもっと自分を大事にしてほしい。



『以前のリブは、な。いつも死に場所を探しているような子だった。人生というものを達観していて、自分を大切にしない』

『自分が死なない存在だと気付いてからは、それが特に顕著になった』


 そう思う。彼女の戦い方は、まるで敬虔な信徒が自分を痛めつけて何かに許しを請うようなイメージを抱く。集中する時に、祈りのような仕草をするから余計にそう思うのだろう。



『そういうアイツが、ヒカルと出会って変わったのだ。自分の人生を思い描くようになった』

「以前言われたんですよ、リブに。いつか…私を殺して、って」

『ふっ。そうか。アイツは極端な言い方をするからな。リブなりの人生の道標なんだろう』



『終わりがあればこそ、人生は有意義なものになるし華やぐのだ。私はそう思うことにしている。きっと今のリブも似たようなことを思っているはずだ』

 普通より早く死んでしまうタローさんと、永遠に近く生きてしまうリブ。

「想いのスタートは真反対っぽいですけど」

『そうだな』

『だが、リブはお前に希望を見たのは確かだろう』


『次はリブと皆と力を合わせて、お前達が異能者の未来を照らす光となってくれたら、と思う』



 光って僕の名前ではあるんだけれど…。

「そんなの…想像がつかないですよ。少なくとも光とかそういうのは、リブの方が僕より適任です」

「実際、あの子が僕に希望を見たのかもしれませんが、でも彼女がいなかったら、僕は逃げ出してここにいなかったかも知れない。リブが僕の居場所をここにくれたんです」


 

 何だかすごく微笑ましいものを見るようか顔をされた。

『力を合わせて、と言っただろう?』

『光がリブでも構わない。それならお前はリブの光があまねく世界に届くよう、彼女を支える頂となれ』


 

 ――光。リブは夢の中で白く光る毛玉だったし、僕の能力の中で勝手に、だけど自然に、太陽の位置に収まっている。真ん中にいきなり居座るなんて失礼なやつだけど。

 「リブを支えたい」なんてこと言ったら、尻に敷かれているのもいいところじゃないか。だけど、それでもいいかと思ってしまうくらいには、やっぱり僕はリブの光に当てられてる気がする。




『とは言え、この話は現状机上の空論もいいところだ』

『ヒカル、リブを取り戻せ』

「…言われるまでもなく」

『では、すべきことは分かるな?』

「…はい」


『Plantに、…燐に勝て』

『No.09が最強たることを、示すのだ』

『そうすれば、二度とこのようなことは起こらない』


「…分かりました」




 その時、僕の覚悟は決まった。君を取り戻すために、また君に会うために…更に強くなる覚悟。それはリブの痛みを、-Particle-を受け入れる覚悟だ。そうなれば、事は至極単純だった。この身を発狂しそうな激痛の渦に捧げようとも、眉一つ動かさずに、凪のように涼しげに、この能力を支配する。



 そう決めた後、腕一本を自在に粒子化、復元できるようになるまで、そう時間はかからなかった。痛み自体は何一つ変わらなかったけれども。




 そして一カ月が過ぎ、フランスへ発つ激動の日が来た。

今週末はハッピーマンデーなので、月曜も更新あります。


なんか久々にカッコいいヒカル君のイラスト。前回はウニ男だったかな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。