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トラッシュボックス ~消えたいヒカリと消えないアイツ~  作者: たっきーぷらす
中3編

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66/70

Box.66 奪還計画

 リブの鹵獲から一ヶ月が過ぎた。その間、クレアはずっと日本にいてくれた。さすがにアメリカにはもうバレてるとは思うけど、向こうの仕事は問題なくやってるし、クレアがいてくれるおかげで、短時間だけどリブと毎日のように話ができるのは、ありがたい。

 リブの顔をみようと思ったら、クレアと編音の2人でやらないといけないし、こちらの映像を送ることは出来ないから一方通行ではあるけれど、僕もリブも随分救われていると思う。


 この一ヶ月、僕は何度か一人でフランスまで行こうとしたけど、その都度説得、阻止されてきた。

『あんた、取り敢えず乗り込んでって島を吹っ飛ばそうと思っているでしょ?別にこの際、それ自体はどっちでもいいんだけど、モンサンミッシェルを壊すのに賛成する人はいないわよ?』

『ヒカル、Plantはあの島自体の観光はそのままKeepしているんだ。人払いなんかしていない』


 今日はマイカさんと、当然のようにSingularityの集まりにいるクレアに諭された。クレアの日本語はこの一カ月でまた上手くなっている。それにしても現状、建物自体も観光客も人質みたいなものだ。そしてリブも心配だけど、最大の懸念はPlant達の要求。Factorの移管だ。



「Factorは移送するんですか?」

『最悪その準備はしている。望ましいとは思わないが向こうの要求を完全に無視もできん』

 入院中のタローさんは病院から通信している。全身火傷だったはずなのに、もう大した傷もないように見える。


『私たちとしてはFactorを渡すフリをしながらリブを回収、Factorも渡さないってのが理想ではあるわ』

『ただ安全な移送ってなると懸念ばっかりよ。伊達や酔狂で地下に封印してたわけじゃないの』


『Factor因子を封じつつ、運搬となると多量の電力と多層による水封が必要だ。その容器も作製中で、まだしばらくかかる』

『更に輸送中にその容器が壊された場合、近くのものは確実に因子に感染するだろう』


『PlantがFactorを求める理由って、Factor因子を自分のものにしたいから、でしょう?』

 それを使ってPlantは何をしたいんだろう。

『過去のPlantの言動からすると、Factorというより彼の能力——感染者、ひいては異能者を増やすこと自体が目的かもしれません。少なくとも私とUSはそういうconsensusです』

『となると、Factorを移送させた上でどこでもいいから容器を破壊することで、彼らのmission達成になってしまうことを懸念します』

『プランBぐらいならあり得る話よね』


 クレアの立ち位置は僕たちとは微妙に違う。あくまで彼女が手伝ってくれるのは、リブの奪還。アメリカとしてはFactorが日本と欧州どちらにあっても構わないという立場だ。ただ徒にリスクを冒して移送することに反対している、ということになる。



 タローさんたちの見立てでは、容器の準備にあと三週間。安全性の実験、実証のために更に一ヶ月の猶予が必要とのこと。


『これが我々の出来る最短、だ。リブには耐えてもらうしかない』

『アメリカも拙速な行動は支持しないだろうしね』

「…仕方ないです。分かりました。リブにはどのように?」

『次通信する機会があったら、私から伝えるわ』


―—―—―—―—―—―—―—―—―—



 季節は流れ、12月初頭。マイカさんがうちのクラスを中心にしたメンバーを招集した。

『では奪還チームメンバーを発表するよ』


『まずはリーダーはヒカル。これは本人が聞かないから仕方ないね』

「みんな、これだけは譲れないんだ」

『まぁ誰も異論はないと思うけどね』



『サポートはSatellite、クレアが入ってくれるわ』

『Secretでね。皆さん、しーですよ。』

『さすがにFranceに渡るのは、表沙汰になり過ぎるからJapanからサポートします』

「分かってるよ。ありがとうクレア」



『とは言え、ヒカルはFactorの輸送の担当で、本隊だけど見かけ上は別働隊になるわ。あとは運搬容器の駆動の関係で、編音は本隊よ』

「編音しか頼めない。ごめんね」

『いいよ。覚悟はしてる。みんなー私がFactorになっちゃったら、よろしくねー』

『不慮の事態の時は容器ごとFactorを処理するのもヒカルの仕事よ。…迷わず消しなさい』

「それだと交渉材料なくなっちゃいますよ?」

『まぁそんときは、きっとヒカルが島を吹っ飛ばすでしょうね』



『ってことは、本隊に見せかける別働隊は?』

『別働隊は司と元気の箱庭最強ペア。サブリーダーも司にお願いするわ』

『お任せください、マイカさん』

『陽動も仕事だから、大暴れしてもいいわよ』




『次、ルカ。地形の特殊性からあんた意外と肝よ?リブの捜索と救出。それも一般人っぽく。ルカもヒカルたち本隊に着いて行って、先行して島へ上陸よ』

『ワシが何とかせな、島が無くなってしまうわけやろ?』

「ルカがしくじったら、島ごと吹っ飛ばそうと思ってるよ」

『ワシごと、やろ?』

「きっとそうなるから、うまく逃げてよ?」

『怖いわ!』



『最後に、私』

「あ、マイカさん来るんですか?」

『何言ってんの。帰りが遅い娘は親が迎えに行かないといけないでしょ?』

『それに…殴り飛ばしたいヤツいるしね』


『メンバーは以上よ』



『待ってください!マイカ先生、私も連れて行ってもらえませんか!?』

 叶が手を挙げる。二人は無言で視線を交わす。先に口を開いたのは叶だった。

『私もリブを迎えに行きたいんです』

『…死ぬかもしれないよ?』

『誰かが死にそうになった時、私なら助けられるかもしれません』

 少し考えてマイカさんは答えた。

『…いいよ。じゃあよろしくね』


 メンバーは僕、マイカさん、司さんと元気さん、叶と編音、ルカ、あと日本に残るけどサポートとしてクレア。







『突入に際して、皆にはヒカルのバリア耐性をつけてもらいます』

『あー、前ん時のアレかいな』

『ルカは見てたわよね。じゃヒカル説明してあげて』


 え、説明するの?僕が?頷くマイカさん。

「えー。まじめに恥ずかしい話するけど…」

「マイカさんの計測によると、僕とキスすると48時間ぐらいバリア能力が無効になるらしいんだ。血液を飲めばもう少し。摂取量は持続時間とは関係ないそうだよ」


『ヒカルとキスするなんてやだ』

 そりゃそうだよね。

『お前の爪の垢でも食った方が億倍マシやわ』

『…鍋のシェアくらいなら、良いけど』

『あーなるほど。それならイケるわ。ナイス叶』


『それがねぇ、加熱したらダメみたいよ』

『そこでヒカルの血を混ぜた葡萄ジュース』

『巨人になりそうな飲み物、だね』


「これを決行の前日に皆飲んじゃって。ちょっと気持ち悪いと思うけど、キスするより良くない?」

 いや、キスしたいと思うわけじゃないけど、もう少しなんか言い方ないのかな。

『ミーはキスでもOKですよ?』


挿絵(By みてみん)


『…!?』叶が目を見開いている。

「いや、クレア留守番なんだから関係ないでしょ!」




『観光客の被害を最小化するために、決行は12/25、モンサンミッシェルの休館日とします。出発は前日24日よ。Are You Ready?』


『あ、当日はイヤホン忘れないようにね』

マイカが持っているグラス、ワインボトルにすると画像生成に引っかかるのはなんでだろう。

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