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トラッシュボックス ~消えたいヒカリと消えないアイツ~  作者: たっきーぷらす
中3編

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64/69

Box.64 四帝会戦

『Si tu arrêtes maintenant, je te laisserai t'en tirer avec une fessée infinie ou des chatouilles infinies, d'accord ? : 今なら無限お尻ぺんぺんか、無限くすぐりの刑で許して差し上げます、よ?』



 Plantがどれだけ強くても、タローと私なら燐と合わせてもお釣りがくるだろう。

『確かに状況は変わった。どうする?まだ我々は何の被害も受けておらず、お前達はまだ何もしていない。今ならただの意見交換だ』

 これはタローの最後通牒。許しを請うラストチャンスだ。更に私達は勝たなくてもいい。時間を稼ぎさえすれば、マイカちゃんたちもここへ来るだろう。



『えー。…少し時間よろしいです、タローさん?』

『構わん。手短にすることを勧めるがな』

 …なんだ。せっかく構えてるのに拍子抜けだ。まぁ、戦わないならそれが一番いい。一旦腕を元に戻す。今のうちに少し服にしてる布地を整えよう。


 そっとタローの方に目線を送ると、タローは目ざとく私を睨んできた。慌てて目線をそらす。やば。怒られるやつだ、これ。

『着いてくる許可はしていないはずだが?』

『えっと…ごめんなさい』

『いや、率直に言って命を拾ったかもしれん。助かった』

 と言いながら、スパ―ン!と背中をはたかれた。「ぃ痛っ!」

『お尻ぺんぺんか…、さすがにそれは出来んから今ので清算だ』

「…あいあいさー」

 痛い。ひりひりする。怪我なら治るけど、一回感じた痛みは…消えないんだよね。


 ジンジンする背中をさすりながらタローに聞く。

『ねぇタロー?あいつら、どうすると思う?』

『さぁな。やつらに勝算があるとみるかどうかだろうが』

 タローは油断なく相手を見据えている。初めて会った時から感じてる、震えるほどの頼もしさ。マイカちゃんだと、こうはいかない。やっぱりこの人こそ、箱庭のリーダーだよね。



 

『困りましたね、Plant。私はSingularity最強と思ってはいるのですが、リブちゃんにだけは、勝てないのです』

『Qu'est-ce que cela signifie? : どういう意味だ?』

『あの子の粒子化能力は、焼き払っても凍らせても全く問題なく再生してしまうのですよ』

『ましてやあの子を殺せないのは、よくご存知でしょう?』

『Eh bien, votre adversaire ne sera donc pas celle-là. Je vais plutôt essayer de contenir Liv d'une manière ou d'une autre. : では、お前の相手はそちらではないな。代わりにワシが何とかリブを拘束しよう』


『いえ、そういうわけではないのです』

『勝てない、とは言いましたが、拘束できない、とは言っていません』

『Hmm? : ふむ?』

『リブちゃんの弱点については、それはもう研究しましたよ。死活問題ですからね』

『ただ、タローさんと分断する必要はあるでしょうね。なのでタローさんをお願いします』

『Eh bien, eh bien, je n'aurais jamais pensé que nous en serions à nous battre ici. : やれやれ、ここで戦うことになるとは思ってなかったぞ?』



 3分ほどして、二人がこちらを向いた。話がまとまったらしい。

『まとまりましたよ?』

『…で、どうするんだ?』


 口角を上げ、引き攣った笑みを浮かべる燐。柄にもなくぞっとした。何だろう。負けるわけないのに…。

『答えは…交渉続行です』

『そうか。減給は覚悟しろ』

『は…今も、大してもらってませんよ?』



『…行くぞ』

         バンっ!           

                 ドガーン!!  

              『がはぁあっ!!』


 タローの姿が消える。消えた、と思ったら、燐が殴られ壁まで吹き飛ばされた。速い。ルカみたいな脚が速い、というのとはわけが違う。まるで瞬間移動だ。


『お前を拘束するのは、大変なのだが。エントロピーをまともに動かせない個体窒素の中にでも閉じ込めておくか?』

『…それをされ…たら、流石に死にます…よぉ』

 ガハっと血反吐を吐く、燐。


 タローが燐を殴った、ということは当然、燐の隣にいたPlantも間合いの中だ。

『さて、エティ翁。今月、日本では敬老の日というのがありましてな』

『Alors, tu vas y aller doucement avec moi ? : なんだ、手加減でもしてくれるのか?』

『いえ、年寄りを殴るのは我が師のときに経験済みですので、問題ありません。ただの世間話です』

『Allez, ne te gêne pas ! : ほれ、遠慮はいらんぞ?』

 くいくい、と手招きをするPlant。振りかぶるタロー。


『では、失礼します』

 ドガァァァァアアア!凄まじい音が部屋に鳴り響く。Plantは後ろに弾かれたが、あまり効いてないみたい。証拠に、砕けたのはタローの拳だった。一瞬の内に木で盾を作った!?でもタローなら木ぐらい砕けないわけ、ないんだけど。


『…さすがはPlant。簡単にはいかない』

『Hohoho. Voici l'arbre le plus dur du monde, le Lignum vitae. Aussi connu sous le nom d'Arbre de Vie. : ほほほ。世界最硬の木、Lignum vitaeじゃ。別名、生命の木、じゃよ』

 ばらばらと砕ける木。

『Malgré tout, je suis impressionné qu'il puisse faire autant sans même utiliser son pouvoir. : それにしても素の戦闘力でここまでとは恐れ入るわい』



『やはり、素手というのが無理がある話だな』

 タローは手をポケットに入れ、手袋を取り出す。一見普通の手袋だが、防爆繊維製のやつだ。…あれ、一人でもどうにかなっちゃう感じ?



『さて、絶対零度に閉じ込められるなんて、パワハラもいいところなので抗いますよ?』

 燐が立ち上がってきた。こっちも氷か何かでガードしてたんだろうか。まぁ終わるわけない、か。


「やっぱ2対2になるよね」

『Plantからは、2対1になると聞いていましたが』

『Même si je suis là depuis longtemps, c'est la première fois que je vois Singularity dans une bataille à quatre. : Singularity4人での会戦など、長いこと生きてきた儂でも初めて見るわ』


「タロー、一応聞くけど。…殺してもいいの?」

『恐らく奴らは私のIDカードを奪うのが目的で、殺害は二の次だろうが…』

 タローの返答に燐が口を挟む。

『二人とも、その認識で構いませんよ?私たちはそのつもりで、この馬鹿気た戦いを始めています』

『Je suis d'accord : 同感だ』


 右手に燃え盛る大火球を噴き上げる燐。呼応するように両手をこちらにかざすPlant。

『さぁ』

『Commençons à nous entretuer ! : 殺し合いを始めよう』

 

「タロー、燐は私が相手するよ」

 火球を避けながら提案する。まず燐の攻撃では私を殺せない。まぁPlantの攻撃でも同じだろうけど、毒とか使われると効いてる間はしんどくなる。


『どちらでも良いぞ。広範囲攻撃には、わしも少々自信がある』

 Plantが手から種みたいなものを出してばら撒くと、途端に鬱蒼と茂る密林が出来た。

『Maintenant, voyons laquelle de nos capacités est supérieure. : さぁ、お前達とわしの能力、どちらが上か雌雄を決してくれる』


 蔦が伸び、タローを捕らえようとする。枝が伸び、タローを差し貫こうとする、鋭い葉のカッター、食虫植物の酸、種の放散を応用した散弾。…そして毒。

 植物を攻撃に使うってこんなに何でもできるんだ。敵ながら感心する。これがPlant…。


 だけどその全てを躱し、破壊しながらタローは諭すように言う。

『エティ翁、能力というものに貴賤も優劣もない。これは創玄の言葉だが』

『C'est du sophisme. Si oui, quels sont les niveaux de capacités ? Pourquoi disons-nous que nous sommes la Singularité ? : 詭弁だな。もしそうであるなら、能力のランクとは何だ?何をして我々はSingularityだというのだ?』


『ランクはあくまで、Factorから人々を救い守るための指標ですよ』

『C'est une différence de perception. Pour moi, le rang est le potentiel de transformer l’humanité et le monde!: 認識の相違だな。私からすれば、ランクとは人類と世界を変革する可能性だ!』

『Tout comme le Factor a apporté un changement à l'humanité, l'efficacité thermique du Rin, l'immortalité de Liv et les Ranks sont autant de preuves du potentiel de transformer l'humanité et le monde ! : Factorが人類に変革をもたらしたように、燐の熱効率、リブの不死、ランクとは全て人類と世界を変革する可能性の証左だ!』

『Et votre capacité à arrêter le temps aussi ! : そして貴様の時間停止も、だ!』


 は?時間停止?タローの能力ってそんなんだったの?じゃあ、あの瞬間移動みたいな能力ってそういうこと!?



『リブちゃん、集中したほうがいいです、よ』

 燐が火球と氷柱を交互に投げつけながら、軽口を叩く。とは言えさすがにスキがない。火傷も凍らされても、しばらく動きが封じられるから厄介は厄介。でもこの間の、パーツを極小の針にして旋回させるやつは良かった。炎も氷も封殺できるし、髪が焦げても私の動きに影響はない。

「なーに?ダメージが通らない私に、勝てる算段でもあるの?」

『いえ、あの人の能力の本質は多分No.04以下しか知らなかったと思うんですよ。ワタシも先日Plantから聞いたばかりでしたし』

「…あなたも集中してないじゃない?」


 時間停止…道理でヒカルのバリアで消えないし、攻撃を全部受け流されるわけだ。そういうふうに考えたら、時間停止は1回1-2秒くらいまでで、インターバルはほぼなしってとこかな。


 優勢に見えたタローが、攻撃の手を止め、突然距離を取った。『ガハっ!』今度はタローが吐血。思わず振り返ってしまった。えっ、何か攻撃食らった!?


『C'est bien regrettable. C'est déjà la limite du corps. Il s'est battu tout en subissant constamment les conséquences des distorsions spatio-temporelles de ce monde sur son corps. Bien sûr, c'est quelque chose qui raccourcit la durée de vie. : 気の毒なことだ。もはや肉体の限界だ。世界の時空の歪、その代償を常に身体に受けながら戦っていたのだ。当然寿命を削る所業よ』


「っ!タロー!!」


『隙あり、ですよ。リブちゃん』


 直後、部屋全体が炎に包まれる。これは…自爆…じゃない。とにかくタローを守らないと。この規模は、数秒の時間停止なんかじゃ脱出出来ない。

 タローに覆いかぶさるように硬質化した防壁を展開する。質量的に1人分が限界だ。

『すまん、リブ』

「私は、燃えても大丈夫だから!いいから、息を整えて!」


 20秒…40秒…1分。息を吸うのもやっとの中、突如炎が消える。炎を、消したの?…違う。私がかぶってる布地もデスクも火が消えている。全く何も燃えてない…まるで燃焼を全て終えたみたいに。これは…まさか燐の狙いは――。



「…酸欠」


『ご明察です。部屋全体を熱したので、リブちゃんはそれほど熱くなかったと思いますよ。あと、ついでに二酸化炭素も致死レベルになるように、無理やり酸素を燃焼させましたが…高濃度のCO2は猛毒です。ご存知でしょう?』

 いつの間にかPlantの隣に立っている燐。そしてPlantの枯れ枝のような手を口元に当てている。これは…光合成か。

『あぁ、私達の呼吸は心配いただかなくても結構ですよ。酸素はこちらで用意しますので』

「さてさてリブちゃん、部屋が燃えてから一体何回呼吸しましたかね?きっと、もう一分も動けませんね」



 やられた。息がしんどいのは熱さのせいじゃなかった。もう呼吸はできない。この一撃で2人を殺すしかない。

「うぅぅあぁぁぁああぁぁぁ!!!!」








『Vous allez bien ? : 大丈夫か?』

『ええ、まぁ。あの状態から腕一本持っていかれるとは思ってませんでした。治せます、これ?』

『Je vais rentrer en France et me faire opérer. : フランスへ戻って手術、だな』


「あ、ぐぅ、かはっ」

 しくじった。それに酸欠が限界だ。まずいまずいまずい。体が震える。目が霞んできた。


挿絵(By みてみん)


『あぁ、痙攣してますね。可哀想に。リブちゃん聞こえてますか?』

「あ゛ぁ?」

『良かった。では、意識があるうちにいいことを教えてあげます。あなたの弱点は、臨死状態になるまで、Particleの粒子操作を全部自分の意思で行っていることです』


『つまり、あなたが自分で状況に気づいて操作しないとParticleは機能しない。予め操作してれば酸欠やCO2中毒から逃れることもできたでしょうが、取り込んでからではもう遅い』

『無敵のリブちゃんも意識を飛ばせば、あとは普通の女の子ですよ』



 …だめだ。もう体が動かない。Particleも起動しない。

「ヒ…カ……ル」そこで私の意識は途絶えた。



『さて、早く治療したいですし、行きますか』

『待て!Plant!燐!お前たちはFactorが目的ではないのか!?』

『C'était l'objectif A, mais cette fois, je me contenterai de sécuriser Liv. : それがA目標ではあったが、今回はリブの確保で良しとしよう』

『何だと?』


『‐Yggdrasil‐』

『Voilà pourquoi je suis capable de protéger la vaste Europe. : わしが何故広大な欧州を守り通せるのか。その答えがこれだ』


『ユグドラシル…世界を繋ぐ樹、世界樹ですね。Plantが蒔いた種子から発芽した木から木へ移動できる能力です。私もここへはこの能力で来ました』

『あータローさん、リブの残した防護壁からはでないほうが賢明ですよ。まだ酸素ないと思いますから』



『Taro. Nous allons emmener Liv avec nous. Échangeons-la contre le Factor. : タロー。リブはこちらで預かる。Factorと交換といこう』




『Je t'attendrai en France. : フランスで待っている』

Plantの能力解説。読み捨て可。


①木などの植物を作る。成長速度は攻撃に枝の成長を使えるくらい速い。

②植物に付随する能力、酸とか毒とかを自由に使える。③自身も植物のように光合成が出来る。あとは水分をためて放出したり。作中描写はありませんが、これで熱傷を防いでます。

④ユグドラシルのような架空の植物もイメージできれば作れます。ということで行ったことがある場所に自由に移動出来ます。ユグドラシルを伐採されたら、その場所にはいけなくなります。



アウステルリッツの三帝会戦、って響きが昔から好きなのですが、サブタイトルはそこから取りました。

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