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トラッシュボックス ~消えたいヒカリと消えないアイツ~  作者: たっきーぷらす
中3編

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57/69

Box.57 Satellite vol.2 ‐英語でしゃべる隣のリブさん‐

「あなたが―Satellite―?」


 笹を食べ終わったパンダに聞いてみた。バキバキバキ。もっしゃもっしゃもっしゃもっしゃ。…うん、どこからどう見てもパンダだ。


『ヒカル、そんなわけないじゃない』

『これは<端末>』

『前に会ったときは、水族館のシャチだった』


『ネタばらしされたら面白くないよ、リブ』

 パンダは笹を飲み込んで答えた。何人かいる周りの人は気付いていない。パンダが日本語を喋っているからだろうか。

『まぁ、彼はいいリアクションだったけどね』


『リブ、久しぶりだね』

『…前回も会ってないけどね。前回はシャチと喋って終わった』

『そうだったっけ?以前のオルカは賢いんだけど、喋りにくくてね』


『ねぇ、Satellite?私、パンダすっごく楽しみにしてたんですけど?』

『そう、それは悪かったね』


 パンダがすくっと立ち上がって柵まで近づいてきた。周りから『こっち近付いてきた!』って感じの歓声が上がる。パンダは目線だけこっちを見据えられている。いやいやいやいや。絵面が怖い。

『もう!これじゃパンダの着ぐるみじゃない…』リブは腕組みをして不機嫌だ。



『改めて、初めましてNo.09』

 パンダは果たして喋りやすいんだろうか?差し出されたパンダの手と握手?しながら思った。


『なんでパンダ、って思ったかな?』

「…はぁ」まぁ、そりゃね。

『パンダはなんと、指が6本あるんだよ。だからNo.6のイメージにビンゴなんだ!』

 あ、そう?その基準なら、No.08のシンはタコ野郎だ。



「それで…どこ行ったらあなたの本体に会えるんですか?」

『…え?会うの?』

 …あなたに会いに来たんですけど?

「このままだと、パンダに話しかけてる不審者なんですけど?」

『あー日本語だし、バレないんじゃない?』

『独り言しゃべっててヤバそうだから、近づかないようにしようって、周りに思われるくらいだよ』

『ほら他の人も、引いてる』

「それが嫌なんですって」

 そもそもなんでこのパンダ日本語喋れるんだよ。


『San Diegoのどこかにはいるよ、今はね』 

『ここは、動物園もあるし、水族館もあるし、軍港も近い。最高の街さ』

『最近は1年の1/3ぐらいはここにいるかな』

「分かりました。署名もらいに探しに行くから、待っててください」



『でも難しいと思うよ?』頭上の鳥がしゃべっている。

『リブも前回会えなかった、って言ってたでしょ?』

 パンダの檻から離れ、次のゾーンへ向かった。次は象が話し始めた。

『私はSyngulality No.06-Satellite-』…ライオン。

『全ての生き物は、私の衛星、Satellite、だ』……獏。

『だから、どこにいても私と話ができる』………コアラ。

『会わなくても、会えなくても大丈夫だよ』…金色の猿。


挿絵(By みてみん)


 頭がおかしくなりそうだ。どこに行っても動物たちが端末に切り替わり、立体音声で語りかけてくる。

『これはこれで迫力があるけど、耳が疲れるね』

『Okay, Satellite. Enough already. We’ll talk tonight and decide if we’re coming to see you. Now let us enjoy the zoo, okay?』

「…!?」えぇ英語!?


『Got it. Sorry for interrupting your date. Enjoy San Diego.』

『Thanks. See you later.』 


 …リブ、英語しゃべれるんだ。意外。アメリカ来てからここまで2日間、色々誤魔化しながらやってきてたんだけど。まさか隣の女の子が英語ペラペラとか、何か恥ずかしい。


『ふふーん。意外だったでしょ?』はい、意外でした。

『あと、フランス語はしゃべれるよ。中国語も少し。スペイン語は勉強中かな。ロシア語は、キリル文字っていうの?あれが苦手で無理。だからデレないよ』

 がーん。何かショック。いやデレてくれないことではなく、リブがトライリンガル以上なことが。…ロシア語でデレるって、確か半世紀前の古書にあったような…?


『Satelliteは端末になった人や動物が日本語が分かれば、日本語で話せるんだって』「へー便利だね。他人の知識とかも利用できるの?」

 ってことは、あの動物たちも日本語分かるバイリンガルだったの?


『そそ。異能者の能力も操って使える。だから、実質的にアメリカ中の全ての異能者の能力を行使できる、ってこと』

「言われてみれば、恐ろしすぎる能力だね」

『本人があまり強くないんだよね。だから隠れてるんだと思うけど』

 それは陽キャの感想だよ。陰キャの僕に言わせれば、Satelliteは単に人見知りなだけだと思うけど。


「会いに行く、って啖呵切っちゃったよ。どうしよう?」

『んー、取り敢えずコアラ抱っこしに行こ!』

『さっきはSatellite抱っこしてるような気分になるから、やらなかったの』



 …やれやれ、リブ的にはもう挨拶は終わったんだろうなぁ。でも僕としてはSatelliteに僕を認めさせたいんだけど?何としても本人を見つけて、投票用紙にサインさせてやらないと。パンダの手形ではなく、本人のサインを。



 その日、ホテルでSan Diegoの地図とにらめっこしながら、作戦を練った。

『Satelliteはね、巧と違って常に情報を取得してるわけじゃないの』

『基本めんどくさがりだから』

「最初に『待ってた』って言ってたのは空港で見られてたとか?」

『多分ね。端末も部下もあちこちにいるだろうし、私はそこそこ有名だから、すぐ見つかっちゃう』


「どこにいるか、とか心当たりないの?」

『まーったく。San Diegoにいるかどうかも怪しいと思うよ』

「ここにいるか怪しいんじゃ、手も足も出ないよ」



『んー。でも会う方法、というか認めさせる方法はあると思うんだ』

「認めさせるって?」



『After all… we can fly~~!』

一応…

『Okay, Satellite. Enough already. We’ll talk tonight and decide if we’re coming to see you. Now let us enjoy the zoo, okay?』

 邦訳: 分かった、サテライト。もう十分。貴方に会いに行くかどうかは今晩決めるから、もう動物園を楽しませて。いい?

(中略)

『Got it. Sorry for interrupting your date. Enjoy San Diego.』

 邦訳: わかったよ、デートの邪魔して悪かったね。サンディエゴ楽しんで。

『Thanks. See you later.』 

 邦訳: また後で(会いに行く)ね。



イラストのヒカルは、暑いので上着を脱ぎました。w

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