↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トラッシュボックス ~消えたいヒカリと消えないアイツ~  作者: たっきーぷらす
中3編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
52/69

Box.52 断らない医療

 私と大和、ヒカル君の任務の場所は、半年ほど前から、箱庭の表向きの入口がある丘の麓に建てられていた建物。それは異能者専用の救急病院。通称、ICU: Inosya Care Unit。

 …誰が考えたのこの愛称?馬鹿なの?思いついたやつ、よくこれ押し切れたわね。マイカ先生まで案が上がったら、ノリで認可しそうだけど。


 異能者に特化したという触れ込みで、日本中、ひょっとしたら近隣国まで巻き込んで患者を集めている。目的はもちろん治療でもあるけれど、最大の目標はFactor事案の集約化。亡くなる異能者は全てICUで対応し、Factor事案になった時点で、箱庭に常駐するSingularity以下、戦闘要員が速やかに対処することとされる。


 確かに、実現すれば戦力の分散も避けられるし、余計な他施設の損壊や私たちの移動の手間も減る。一石五鳥ぐらいの効果はある。私が将来働く病院、とするなら六鳥だ。


 どこにそんなお金が、というのは愚問だ。実は箱庭には今大量にお金が舞い込んでいる。理由はヒカル君。どこかの馬鹿が、ヒカル君の—Trash Box—で、放射性廃棄物、核のゴミを処分できることに気付いた。


 何万年も核のゴミを保管する費用を考えたら、少々ふっかけた値段をつけても折り合いがつくらしい。人類が核兵器を手にして130年、漸く見付けた核の最終処分場に世界各国が飛びついたから、ぼったくっても引く手数多だ。結果、莫大なお金と引き換えに、ヒカル君が廃棄物を消して回ることになった。ヒカル君はそんな無茶しても大丈夫らしいんだけど、本当に?


 手を一回仰ぐと10億円、って世界。さながらヤバめの宗教みたい。『お金稼ぎたい』とは言っていたけど、こういうのじゃなくない?それにしても、日本っていつから核を持ち込ませる国になったのかしら。


 『ちょっと能力の実験にエネルギーがいるんだよ』ってヒカル君。事情はヒカル君が空を飛び始めた頃に聞いたけど、それってきっと箱庭に来る原因になった事故の時の爆発能力でしょ?

 エネルギーを使う、ってことはエネルギー貯めてるんでしょ?核のゴミで?それ使っていいの?


 でも能力をゴミ掃除に使えるくらいには、過去のトラウマと折り合いがついたのかしら?そう考えればよい傾向かもしれない。



 ICUは正面玄関こそ地表にあるけど、地下通路で箱庭と繋がっている。だからこそ自宅待機、自宅勤務が出来る。これも六鳥の一つかもしれない。でも、ヒカル君…達と旅行気分で遠くへ行けないのは、残念ね。せっかく今回の任務にはリブは手を出さないように厳命が下ってるのに。


  

 ICUの地下には百メートル四方の空間が3つ作られている。死期が近い患者の部屋だが、有体に言えばここがバトルフィールドだ。核シェルターと同じ構造で、相当大暴れしても部屋は壊れない。ここで私たちはFactor化した能力者と戦う。



 今回の相手は—Porcupine—。ヤマアラシ。

 Bランク、事前確率80%



『俺の相性が悪い』

『だよね』

 能力のことではない。フィールドのことだ。大和のスタイルはフィールド上の岩や木なんかの質量を使っての物量攻撃だから、何もない空間で戦うのは能力を生かし切れない。壁の防壁を攻撃の材料に使うわけにはいかない。


『今回は俺の能力が使えるのか、という試金石ではないかと思っている』

『ここで俺が使えなければ、この施設での仕事を断らねばならなくなる』

「施設に土砂を持ち込むわけにもいかないわね」

『あぁ。他に地下水を汲み上げようとも、考えたのだ』

「それは絶対にしちゃだめ」


『分かっている。そこで今回思いついたのだ。名付けて<光の剣>』

「なにそれ?」照明の光を重くするの?できるの?

『本番に見せてやろう』

『リーダーとしては、事前に知っておきたいんだけど?』

 あ、そうか。今回はヒカル君がリーダーになるのね。…ちょっとチクっとした寂しさを感じた。



 通常、事前の通告から1-2日後になることが多いのだけど、今回は通告当日の夕方には事態が動いた。


 17:47 Factor化を確認。

 17:49 対応開始。


 全身からトゲをはやした針山というか、巨大なウニというべきか、ヤマアラシとは似ても似つかない可愛げのない生き物?がフィールドに出てきた。

 

『誰から行こうか?』

『取り敢えず彼の周りにあるトゲを全部払ってくるよ』

「また生えてくるでしょうけどね」



『痛!』無造作に走って近づいて行ったヒカル君が叫ぶ。

 慌てた感じで、飛んで戻ってきた彼の右足の裏は血まみれだった。

『痛たた。自分の体だけじゃなくて、周りにもトゲが出せるみたいだ』


「え、バリアどうしたの?」

『叶、知らなかったのか?』『ヒカルの足の裏はバリアが展開されていないのだ』


 え、あ、そうなの?

『だって足の裏にTrash Box出してたら、地面消えちゃうでしょ?』

『ここに来る前から無意識にそうなってたみたいだよ。言われてみれば、そりゃそうだよねって感じだけど』

 ヒカル君の脚は直ぐに治っていく。あの時、私が刺した先生の再生能力—Regenerate—。全身の傷を即時に直す。…使えるようになってたんだ。でも確か燃費が悪すぎるから、ほぼ1日一回限定のはず。


『次は俺の番だな』『光の剣、見せてやろう』

『ヒカル、そのまま治した脚のバリアを消しておけ』

『え、なんて?』

 ん?まさか、ひかりの剣ってひかるの剣?


『ぬおりゃぁぁ』

 そのまさかだった。右足をつかんでヒカルを振り回して突進する大和。

『うそぉ!?』

 ヒカル君を軽くして、振り回しているのね。当たれば消滅するわけだから、武器の重さなんて関係ない。更に自分の重さも軽くしているから、地面のトゲにも刺さらない。確かに羽毛に針は刺さらないわ。

 トゲを切り払いながら、ヤマアラシの本体に近づいていく大和。


『一刀、両断んん!』『うわぁぁぁぁ!』 

 袈裟斬りに切られた体が、真っ二つになって倒れる。……やり過ぎ。




「ヒカル君、あまり活躍の場はなかったわね」

 せめて見た目をよくしようと、切断面を—Transfer—で接続しながら言う。材料は周りに落ちている、彼自身のトゲ。


『いやはや、最強の剣であった』

『以前ルカに、僕を投げつけるのが最強って言われてたけど、まさか振り回されるなんて』『目が回って気分が悪い』


「今度からちゃんと断りなさいな」

『そうする』

「そういえば、さっきのでヤマアラシの能力取り込んじゃったの?」

 ウニ人間になってしまったヒカル君を想像してしまった。…おいしそう。いや、かわいそう。


挿絵(By みてみん)


『あぁ、それ?』

『いや、取り込んでないよ』


『そうなるのかなーって前は思ってたんだけど』

『どうもFactor化した能力は取り込めないみたいなんだ。Factor因子が異能者に発現していた能力ごと、僕の中に入った瞬間に消滅しているみたい』


 じゃあ、戦っているときにいらない能力を取り込む心配はない、ってことね。でも。

「それって、Factor特効ってことじゃない?」


Factorを完全に止める方法は、箱庭が長年探していたことだ。ヒカル君がFactorを消せる能力者…?

ヒカルウニw


ちょっとずつ小出しにしてますが、能力ラーニングの条件はいくつかあって、

①肉体を取り込む必要がある②箱に空きがある③Factor化した個体の能力は取り込めない④レーザーとか投げつけた岩みたいな能力は、放出したものを消しても取り込めない

といったところです。

ついでに取り込んだ能力を使えるかどうかはまた別の問題です。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。