Box.49 おおぞらに戦う
*2026/09/06 ストーリー進行に伴い作品紹介文を修正しました。
『絶対いや』
『僕もいやです』
箱庭への凱旋。二人とも鉄の鳥は好まぬ様子。無理からぬことだ。この望まれぬ男はそれだけのことをしたのだ。だが。よもやこやつの禍々しき力がマテリアルに届かんとすれば、立ちどころに鳥は鉄くずとなり、我らもろとも大地と激しく接吻をせねばならぬ。つまるところ。
我も嫌なのだが。
何ゆえに我がこの死神の隣席でなければならぬ。解せぬ。これより半刻、無音の静寂の中で互いの腸を覗き合うがごとく、無為なる時間を過ごさねばならぬ。俸給の倍化を要求するものなり。
朋友たちは各々の翼もて、大空に飛び立たん。我も、と求めたとて鉄の鳥には能わず。無理に挑めば、虚無の渕へ誘われるだろう。
『君、隼翔くんだよね』
死神が我に問いを投げかける。この舶来の者は、日の本の言葉を優雅に操る。解せぬ。
『ボク、さっきも名乗ったけどシンっていうんだ。君たちの二つ上』
『あ、ボク、ドイツと日本のクオーター。だから日本語得意なんだよ』
「そ、そうなんだ…さっきは助かったよ」
鮮やかに魂魄を抜き取る手練手管、破壊魔王としては、是非とも会得したいところである。
『君、面白い能力だよね、Sランク—Delusion—』
『君とは仲良くできそうだよ』
喝!唾棄すべき強欲。我の力を望まんと欲するとは。ただ、貴様の死の力と引き換えであるならば、やぶさかではない。
「友達、に…なりたいの?」
『うん、ぜひぜひ!』
『…はぁ』
マイカ女史が、大きな嘆息をついた。
ハヤトとあいつ、意外と馬が合うのかな?
『何か楽しそうだよね』
「いや、あれ大丈夫なの?」
僕達はヘリコプターを追いかけて空を飛んでいる。初めて飛んでから一ヶ月、だいぶ飛ぶのも上手くなった。左手の向きや、指を何本開くかとかで調節するらしい。今では、何とかヘリに置いていかれない程度にはスピードも出せる。
『私的には、このままヘリを撃ち落としたい』
「ハヤトが死んじゃうよ。マイカさんも!」
『マイカちゃん、昔に飛行機事故を生き残ってるから大丈夫と思うよ』
「え。そうなの?」
『ハヤト君は…落ちても何とかするんじゃない?』
『落としとく?』
「…やめようか」
『シンって防御力がないから、今チャンスなのになぁ』
よっぽど嫌いなんだな。まぁ僕も第一印象で既に嫌いなんだけど。
ふわっと、リブが上から抱きついてきた。
「なに、危ないなぁ」
『ねぇねぇ、さっき怒った?』
「………そりゃ怒るでしょ」
『取られると思った?』
「あいつに取られるとは、思わないけど」
『けど?』
「……取られたくない、とはいつも思ってるから」
『……』
『……………へ?、へぇぇー!』
『………へへ』
リブも照れてるけど自分も照れくさい。
『…取られないコツ、あるよ?』
「なに?」
『来月の、イベント』
11月に来月のイベントなんて言ったら、候補は一つしかない。
「クリスマス?」
『そ。今年は一緒にどっか行こ?』
「平和だったらねー」
『プリヤの4倍ラッキー、チャレンジしよっか』
『………チッ』
……ヤバい。段々シンがイライラしてきている。外の二人と通信切り忘れたせいだ。いや、普通切らないか。騒音で全部聞こえてるわけではないのが、まだ幸いだけど、クリスマスの約束してるのは聞こえた。ハヤト、もう少し踏ん張れ。って…まぁあの口下手な子では無理か。そりゃそうだわな。仕方ない。私が気を逸らすか。
「それで、あんた何でここにいるの?」
『あーそうですね。Singularityの認可って、現存メンバーの過半数の承認が必要じゃないですか?リブとAt-Random、Factor以外の5人中3人』
「私、承認してないわよ?」
『えぇ、だから01-Cosmic-Velocityと05-Contraの承認状を取りに来たんです』
…ちっ、あいつらが認可したのか。
『元々欧州の重鎮、02-Plantの承認はもらっていたので、01、05の承認で晴れてSingularity認可になりました』
『資格自体はご存じの通り、先日から有効になっていますが』
ヒカルとリブの会話が無線で入ってくる。
『抱きつかれて……上手く飛べ…いよ!』
『えー、じゃあ…を繋ごう』
ピシっ!
おい、ガラスにヒビ入ったんだけど。これ、シンの能力のせい?
あーもう、ヒカルもリブも久しぶりだからってイチャつき過ぎ。
「やめてー。ヘリ壊れるー。べたべたするの帰ってからにしてー」
内心で叫ぶ。落ちても死なないとは思うけど、飛行機とか乗るのタダでさえ嫌なのに、こいつがキレてヘリを落としやしないかと、ヒヤヒヤする。
そもそも勝手にここに来てるのこいつなのに、何で連れて帰らないといけないのよ!大した距離じゃないんだから、箱庭まで一人でどうにかして来い!
「…11月だから飛んでると寒いね」
『あ、僕は―Trash Box―で風よけしてるから、あまり寒くないかな』
「えー、ずるいー」
どさくさに紛れて、またヒカルに抱きつく。
「あ、確かに寒くない!」「言ってよー!」
…なんちゃって。―Particle―で、体の粒子を振動させたら暖まるんだけど、内緒。
マイカちゃんから通信が入った。
『あーあー。そこの二人。ちょっと身の危険を感じるから、その辺にしといてくれる?』
シンが荒れているのだろう。わざと見せつけてるんだから、良いんだけど。
「…マイカちゃん死なせたくないし、しょうがないか」
『そうだね。お義母さんは守らないと』
「あーあ、残念」
離れる前にそっと呟く。
取られるなんて、思わなくて大丈夫だよ。
「ヒカル?」あのね。
『ん?』私、幸せなんだよ。
「クリスマス、楽しみだね」あなたといられるのが。
*設定メモ Singularityまとめ。
No.00 At-Random 橘創玄 死亡
No.01 Cosmic-Velocity タロー
No.02 Plant 未登場
No.03 Factor 番号は未登場、消去法的にここ 死亡
No.04 Supernova マイカ
No.05 Contra 燐
No.06 Satellite 名前だけ次話で出てきます。
No.07 Particle リブ 規定により15歳まで未承認
No.08 Thanatos シン
No.09 暫定候補 Trash Box ヒカル
次回中2編最終回!次回更新はヒカル君の誕生日、9/9です。




