Box.42 毛玉: Re
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カクヨム先行公開β版
https://kakuyomu.jp/works/2912051602729913334
久しぶりに夢にあいつが出てきた。ここに来た時以来だ。一回り大きくなってるような気がする、白い毛玉。しばらく見なかったから、てっきり気が滅入ってた僕が作った、架空の何かだと思ってたぐらいだったけど、そうではなかったらしい。
『やっほー、久し振り』
「お前誰だっけ?」
『え、酷くない?いや、確かに名乗ってなかったけどさぁ』
「冗談だよ。覚えてるって」
「で、どうしたの今日は?」
はたと毛玉の動きが止まった。
『………君、前より優しくなった?』
「そりゃ少しは大人にもなるよ」
「考えてもみなよ、前回の時はわけ分からないトコにいきなり連れてこられて、その前にはルドを殺してたんだよ?メンタルぼろぼろ。出会いをするには最悪のタイミングだよ」
『言われてみれば、そうだね。…出会うには最悪、ね。…はて?』
「はて?」
『いや、こっちの話』
『てっきり君に何かいいことあったのかなーって』
「いい事…はあったよ」
『なに、なに?』
「言わないよ」
『えー。ケチ。聞きたいのに』
『言って、言って!』
「…毎日、幸せ感じてる、よ」
『し、あ、わ、せ!…みゃあぁぁぁああ!!』
「うるさい」
「…お前もキャラなんか変わったよな」
『…フフン、私も大人になったのさ』…そうか?
「お前、年齢不詳の毛玉じゃないの?」
『君の夢に出てくるぐらいなんだから、君ぐらいだと思わない?』
「…それもそうか」
『あ、そうそう。今日はビッグニュースがあるから、久しぶりに来てみたのさ』
ほらほら、と毛玉に押されるように別の毛玉…じゃなくて猫が現れた。ルドだ。
「へー、ルドも夢の中に出てこれるんだ?」
最初の時に夢の中にいたから、そんなに違和感もない。でも、それだけ?ビッグニュースと言うには随分小粒な気がする。
『もういいの?』
…ん?毛玉のハウリングがかかった声とは違う。
『いいよ』
『…では…』
『こんばんは、ご主人さま』
「…………?」「はあァァァァァ!?」
ルドが喋った!
「いやまた夢だろ?」なんて都合のいい夢!
危うく起きそうになったわ!
『…夢だと言われたら、そうなんだけどさ』
『なんと何と、夢の中だとルドと会話できることに気がついたのです!』
「まじ?」
『まじ、です』ルドが喋ってる。
『今の僕は、ご主人さまの記憶をもとに構築されてますから、話すぐらいわけないのです。ただ猫の体だと上手く言葉にならないだけで、夢の中ならこの通り』
『叶さまや梓さま、編音さまには大変お世話になりました。音頭を取っていただいた奥方様には感謝のしようもありません』
『奥方さま、なんていや〜、そんな』
「なんでお前が照れるんだよ?」
『…ん?…照れてないですよ』
やっぱり性格変わったわ。中の人、別人だろ?
「じゃあ、僕らの会話とかも全部分かってた?」
『その通りです、ご主人様。お二人が付き合う前に、奥方様がよく僕に愚痴っていました。<ヒカルは何が好きかな?>とか、<うまくいくよう応援してよ?>とか』
「あはははは。今度聞いてみるよ」
『ヒカル、可愛そうだからやめてあげて』
毛玉にほんのりピンク色がかかっている。
『僕も恩人であるお二人が、仲良くされてるととても嬉しいので、喧嘩はしてほしくはないですね』
『…君、いいやつだね?』
『えぇ僕は理解のある、いいやつです』
「ルド、この僕の夢に入ってきてるのは君がやってるの?」
『いえ、僕ではありません。僕は今、奥方様と一緒に寝ているはずです』
またリブの家に行っているのか。
『少し前から、こちらの毛玉様に声を掛けられていたのですが、今どうしてここにいるのかは、よく分かりません』
『えーっとね。最初は猫の中に入れるのかなーって思っただけなんだよ。そしたらルドの夢の中で話しかけられたから、びっくりしちゃった』
『そしたら、ヒカルとも話したいって言うから、今日連れてきたの』
入る?ってことは普段は現実にいるんだな、この毛玉。やっぱり誰かの能力なのか?
『僕の能力は—Aviation—空を飛ぶこと、ですので人の夢に入ったり、ということはできません』
「Aviation?」
『はい、箱庭で調べられた時、その呼び方で登録されていたはずです』
「そういえば、空を飛んだときは驚いたよ」
『僕もです。一度死ぬ前は僕自身も脚が悪いと思っていました』
死…やっぱり一度死んでいるんだよな。
「死んだときのこと覚えているの?」
『正確には知っている、ですね。僕はご主人の記憶を見ているだけなので』
「そっか」
『でも、全く別猫でもないんですよ』
『先ほど<死ぬ前に脚が悪いと思っていた>と申し上げたでしょう?』
「言ってたね」
『そういう記憶はおぼろげに残っているのです』
ルドはひょいひょいと毛玉と遊んでいる。ほんとの毛糸の玉を相手にしているみたいに。
『いい機会なので、そうなっている理由を僕なりの解釈で伝えます』
『ご主人の—Trash Box—のことですが、奥方様は本質を突いた、本当にいい名前を付けられました』
『…んふー』鼻はないはずだけど、毛玉の鼻息が荒い。
『ご主人の能力は自身が消した能力の因子を、取り込んで—Box—にしまっておけるんです』
『だから正確には消えているようで、消えていないんです』
「つまりルドの因子が僕の中にある、ってこと?」
『その通りです。僕の因子はご主人の中にあって、その因子がご主人の記憶と混ざりました』
『そして、その混ざった記憶と因子は奥さまへ伝えられ、それを蘇生の際に梓様が僕に戻されました』
『なので、僕の中には死ぬ前の因子も入っています。それが死ぬ前の記憶もうっすら残っている理由と考えています』
リブがどっかから僕の記憶を持ってきて、ルドに渡したのは知ってたけど、ルド目線で見ると、こんな感じなんだな。
「…じゃあ、僕が君を殺したこともやっぱり覚えてるんだ?」
『えぇ。…あ、泣かないで下さいよ?僕は生きていますし、今ご主人と話せていることが嬉しいので、一回死んで良かったぐらいに思っています』
『実際、殆ど覚えていませんし』
この言葉がルドの思いやりなのかは分からない。けど。
「君が泣くな、って言うんなら泣かないよ」
『そうです。あまり奥方様の前で泣くのは、格好のいいものではありません』
ん、奥方?
『あー、ですから、その—Box—つまり箱の開閉をコントロールできれば、ご主人は僕の因子を使って空を飛べるのではないかと思っています』
『え、それ面白そう。見たい見たい』
「確かに。でも、箱ね…箱か。そんなイメージ持ってないなぁ」
敢えて言うなら壁か、スライムみたいなイメージなんだけど。
『僕の因子がそこにいるので分かるのですが、ご主人の—Trash Box—は空間に浮かぶ9個の箱で構成されています』
『ほーほー』毛玉の方が興味津々だ。
「…太陽系みたいだな」
『太陽系って星9個だったよね?』
「太陽を合わせると…9個だね」
『ご主人が言うところの太陽系の宇宙空間に当たるところが消滅能力の本体で、星が安全地帯のようなものです』
『異能の因子を取り込むと、星を一つ使用して保存することが出来るようです』
「じゃあルドの因子が有るから、残り8個ってことだね」
『いいえ、9個の箱のうちの4つは既に能力の因子が入っています』
「4?」
『えぇ。僕と、昨年の試験官だった再生能力の方、僕をご主人に投げつけた、あの方』
「えぇ、あいつ異能者だったの?」「あいつがいるのはやだなぁ」
『僕も嫌です』
『でも肉体そのものを取り込むことが、箱に入る条件みたいで、居座っちゃってます』
「えぇ~」
『けど、便利な能力ですよ』
「あと一つは?」
『…分かりませんか?』
んー、肉体を取り込んだ…。バリアで消したのが取り込むってことなら…。
『…あ!?』毛玉が声を上げた。
「あ…!」僕も少し遅れて気付いた。
『そうです』
『上を見てみてください』
…上?言われるがまま見上げてみる。…気づかなかった。暗闇に4つの星が見える。そのうち中央の星が一際明るい。
『あの真ん中の箱が…奥方様の、—Particle—です』
ヒカルくん、パワーアップイベント。
金土日更新!次回は明日!




