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トラッシュボックス ~消えたいヒカリと消えないアイツ~  作者: たっきーぷらす
中2編

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40/69

Box.40 4人は最強

『こういうのは、触れちゃだめ。そっとしておくの』


 なるほど。分かりました。そっとしておきます。私、こういうのも分かるんですよ。イメージトレーニングは色んな漫画で実践済みです。きっと激しいトレーニングの結果、元気さんの元気メーターがなくなっちゃったんです。



「先輩、大丈夫ですか?飲み物とかいります?」

『…ちょっと…動けないだけ…だから』

 ハヤト君みたいに何かポソポソと仰っています。私、慣れてるから耳良いんですよ。なになに?『おんちょう…こわい…おわらない』ですって?恩寵が恐いなんてあるんでしょうか?


『ちょっと何か買ってくるよ。行こうか、元気』

 ぴょいって感じで久遠先輩をお姫様抱っこして、司さんは部屋から出ていかれました。

「司さん、すごい力ですね」


『あれも恩寵なのよ、多分怪力の恩寵』

『ここに来たのは飛行能力だし、箱庭の情報知ってるのは、全知とか読心とかってやつでしょうね。あと、さっきまでは……きっと誰かの体力を回復できるようになる恩寵』

「へ?久遠先輩、ヘロヘロじゃないですか?」

『恩寵は能力を解除したら、効果が切れるみたいなの。だから体力消費の負債が来てる感じ?』

「…便利なようで、恐い能力ですね」

『元々、神様の恩寵なんてのは、いいものばかりじゃないのよ』

「神様同士で戦争したりしますしね」



『でも、今は一般人が異能者の排斥を始めないかの方が心配よ』

『死ぬ度に事故を起こす、爆弾みたいな人種をいつまでも社会が受容できると思えないわ』

「だから私達が事件の芽を摘んでいるんですよね」

『死後の対処ってのは、ホント薄氷の合意って感じがするわ』

『―Factor―はこの上なくめんどくさいものを残していったものね』

 

 

「叶さん、今回はどうなるんでしょうね…」

『…そのことだけどね。多分、未来視もできるのよ、司さんって』

「そうなんですか?でもそれなら、患者さんがどうなるか、教えてくれてもいいじゃないですか?」



『それはねー』司さんが帰ってきました。

『あくまで、恩寵を使った瞬間の未来予想で、不確定要素があると、簡単に未来がずれるから』

『だからあまり他の人に結果を教えないことにしてるの』

 


『でも、ここに私が来てる、ってことは…そういうことよ』



 ちょっとゾクッとしました。なるほど。覚悟が必要そうです。


『そうね…今日の夕飯は早めにしとくから、食べたらすぐ寝ることをお勧めしとくわ』


「…分かりました」



 その日の夕食は豪華だったのですが、緊張で味わうどころではなかったです。…全部食べましたけど。


 お風呂は明日の朝入ることにしてすぐ寝ることにしました。短時間でよく眠れるように―Fortune―をかけることも忘れません。おやすみなさい。出来れば皆の不幸が半分になるといいのですが。

 



 後の記録によると22時49分、司さんのスマホが鳴りました。患者さんが亡くなったとの病院からの緊急通報です。直ちに準備、司さんの能力で22時56分病院に着きました。予め箱庭の職員も待機してましたので、避難は迅速に行われたと聞いています。


 23時05分。私は初めて耳にしましたが、病室廊下前でFactor反応を確認しました。不快そのものの音です。この時ばかりは耳がいいのを恨みました。



『あーあ。分かってたけど、残念ね』

『未来視通りなら消化能力が暴走するから、皆気をつけてよ』


『ま、私と元気でどうにかするから、下で何かあったら叶、対応よろしくね』


『じゃ!』

 病室に突っ込んでいく司さん。

『え、司さん、まだ動き始めてない…』

『だーいじょうぶ。間に合うから』

 司さんはそのまま患者を掴んで、窓から空に飛び上がっていきました。


『間に合うって…どういう意味ですかー?』

「え、えぇ?どうなってるんですか!?」

 司さんはすぐ夜の闇のなかで見えなくなってしまいました。


『事前に決めてたっすよ』

 私たちの疑問に久遠先輩が答えてくれました。


『司は単独水平移動なら時速300キロで飛べる。それで高度6000まで駆け上がって、対象を落とす』

『落とす!?』

『ここで2分、上がるのに6分、落ちるのに3分。Factor反応が終わるのに十分な時間っすね』

『でも、それだとFactor活性が止まった時、遺体を傷付ける、違法になっちゃいますよ!』

『その時は僕が受け止めるから大丈夫っす』


『―Ghost―』


 久遠先輩の背後から3体の影が出てきました。エクトプラズマです〜。そのまま人の形になってきましたよ。あれ?司さん?…が、3人??ドッペルゲンガー?



『僕の―Ghost―は過去3日分、最も長く一緒にいた人を能力ごと模倣するっす。今回の場合、今日も昨日も一昨日も司』


 …ずっと彼女さんと一緒にいたってことですね。真顔でさらっと尊いこと言いますね。



『模倣できるってことは、三人分の恩寵が使えるんですか?』

『そうなるっすね。体感は本人の能力の1割減って感じかな』

「いや、どんなチート能力ですか!?」

『そうかな?人形みたいでつまらないっすよ?』


 

 すごい力なのは、大元の司さんなんですけど、合わせて恩寵4人分って、そんなの神様じゃないですか!?


『つー、引力で対象を引きつけるっす』

『かー、千里眼よろ』

『さー、司と念話繋いで、皆と共有よろ』


 なんて贅沢な能力の使い方!


『あーあー、司、今どんな感じっす?』

『ちょうど予定の高さまで来たかな。まだ反応は続いてる。後30秒待って落とすよ』


『了解』


『あーカナエ、プリちゃん二人とも聞こえてる?』

「はい」『聞こえてます』

『二人とも思うことあるかもしれないけど、このやり方が最善かな、ってのが私たちの結論なの。Factor化は人に見せるものじゃないし、そのまま落とせば一瞬で片がつく。…終わったらゆっくり話しましょう』

『いえ、司さんの判断を信じます』

「はい。私もです!」



『怒られると思ってたけど…ありがと』

『じゃ時間ね。―Grace―解除。』

『更に新たな恩寵、<光あれ>』





 病院前のグラウンドに私達は出てきています。ここなら、少々落下がずれても大きな問題はないでしょう。見上げると、上空でチカチカしながら落下する光が見えます。


『…あの点滅してる光が、司っすね』

『高度500までは光らせとくわー。後は着地で切り替えるから』


『今、1500。Factor化は終わったみたい。確認できる?』

『…何か吐き出してるっすね。消化液かな?』

『こっちではわからないわね』『さ、一回落ちるわ』『またね』

『りょ。引き取るっす』



 <つーさん>の引力に引かれて、こっちに向かって来る人影。月明かりのおかげでようやく見えてきました。



『さ、二人とも、お客さんがくるよ』


 ドオーーーーーーン!!!!

 割とすごい音がして、落下してきました。



 落下してきた彼の身体は…痙攣しています。っと思ったら、ひ〜〜〜、千切れちゃった下半身は放っといて、上半身だけ起き上がってきました。体ぐちゃぐちゃ、胸元が大きく裂けてますよ…って何ですかあの尻尾…うきゃあぁ、腸がそのまま尻尾になってるみたいです。



挿絵(By みてみん)



『軽くホラー映画ね、これ』

 そこは100%叶さんに同意です。


『こりゃびっくり。もう片付くものと思ってたっすけど…ここまでなっても動けるんすか。…消化管それ自体が本体って感じっすね』


 なるほど、内蔵が本体なら落下の衝撃に耐えれたのかも知れませんね。普通なら身体が2つになってたらもう勝負ありです。

 生前の未練なのかは、もう知るすべもありませんが、垂れ下がった軟体動物のような尻尾が触れたところは、溶けて抉れてます。

「…まさか、食べてます?」


『…それもっとまずいっす。エネルギー補充し続けるパターンだったら活動限界が来ない!』




『じゃあ下半身ぶった斬るから、そこどいて!』

 司さん本体が飛んできました。そのまま脇腹に加速を乗せた蹴り!

 ゴム風船が弾けるような音がして、Digestさんは吹っ飛んで倒れました。


 くるくる回って、私たちの横に着地する司さん。

 華麗です!って、えぇ!右脚が骨になってます。


『いったいなぁ、一瞬で持ってかれたよ』

『司さん、治します!』

『ん?あぁ、大丈夫よ。ありがと叶』


『―Grace―<私は癒やされた>』

 わぉ。溶けた右脚が即座に再生していきます。

 

『…いや、まいったね。想定より大分厄介だよ』

 司さんが着いた血とかを払うために脚をふるふるさせながら言います。

『アイツの下半身に攻撃したら、口に食べ物突っ込んでるようなもんだ』

『普通にSランク級じゃない?あれ』


『ま、やりようは何とでもあるけどね』

 司さんが私に向かってウインク。

『ほんじゃ本日の教育セッション。あいつにデバフ、よろしく。内容はプリちゃんのセンスが問われるとこだよ。思うようにやってみな』


「分かりました。思うようにやってみます」

 うーん、何がいいかな。

「―Fortune―対象Digestさん、

 消化効率、半減

 吸収効率、半減

 代謝効率、半減

 運動効率、半減

 再生効率、半減

 分泌速度、半減

 …

 …お腹を壊す確率、倍化

  痛覚、倍化

 …フィールドを食べれる確率、半減

 …

 …    」


『そんなとこにデバフつけれるのね、って何個重ねられるの?』

「え、制限なんてないですよ?」

『今、10個くらいかけた?』

「多分20個くらいです」

『…20?単純計算で、戦力100万分の1?』



『…想像以上ね、やっぱプリちゃんすごいわ』

『これなら恩寵4つもいらないね』


『申し訳ないけど、粘膜を焼き払って消化能力を消失させる』

『―Grace―<火は消してはならない>』



 司さんはDigestさんに近付き優しく触れながら、右手で十字を切ると、激しく立ち上がる青い火柱。断末魔の悲鳴を上げることもなく、火葬されていくDigestさん。


「もうこれ止めですよね」

『粘膜どころか、骨になる勢いね』



 久遠先輩が手を振っている。

『あっちの下半身の処理も―Ghost―に頼んで終わったっす』



「司さ〜ん、久遠先輩がドッペルゲンガー使って、下半身の処理終わったって言ってます〜!」


 何だか司さんがしらーっとした感じでこっちを見てます。



 叶さんにも怒られました。

『…あんた、間違ってないんだけど、誤解招くから、ちょ~っと言い方考えましょうか?』


「?」






裏設定。読み飛ばしてもらって構いません。


司のGraceは聖句を付けたほうが強くなります。かなりもじって使ってます。元気は聖句を知らないので、威力を最大化することはできません。それでも恩寵三人分は強すぎる…。そうそう、Graceの効果は燃やして灰にしたり、傷を完全に治したりすれば結果が残り、リセットはされません。

恩寵で得た、元々自分が知らず神のお告げ的に得た知識やデータは一次的なものなので、解除すると消えてしまいます。なのでハッキングするときは、重要なデータを記録してあとで見返す必要があります。

未来視もそのルールで動いており、発動した時点では確定した未来。だけど解除すると確定していないことになり、変化する=ズレる。


複雑ですね。

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