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トラッシュボックス ~消えたいヒカリと消えないアイツ~  作者: たっきーぷらす
中2編

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37/69

Box.37 あの口づけをしたのは私

「んー、ってことは、リブのムチがマトモに顎に入って気を失ったって?」

『避けてて見えてなかったんですけど、そうみたいですわ』

『マイカちゃん、どうしよ?ヒカル死んじゃうの?』



 学校の保健室。常駐の校医は出払ってて、ここにいる医者は私だけだったから、呼び出されてしまった。私、一体いくつの仕事を兼任させられてるんだろう?


 ルカがヒカルを担いで慌てて戻ってきた時にはびっくりした。たぶん脳震盪なんだけど、担いできちゃダメでしょ。そっと運ばないと…って言っても、しょうがないか。ヒカルのタフさに期待するしかないわね。


「どうかなぁ?」死にはしないと思うけど。

『そんなぁ…助けてよ。お願い』

『ヒカル、死なないで〜』


 泣いてる可愛い娘をいじるのは、ゾクゾクするほど楽しいのだけど、ちょっと調べないとねぇ。ヒカルのバリアは自由落下程度のスピードでも勝手に発動する。自分が失神するほどの衝撃を見過ごすとは思えない。まずは確かめるか…。徐ろに病室に飾ってあった模造花を手に取る。


『?』


 そのまま、眠ってるヒカルに向かって、思い切り振り下ろした。 


『!?』

 

 花はヒカルに当たろうかというところで、音もなく消滅した。…そう。普通だとこうなる。


「今の通り、オートバリアは動いてるから、少なくとも体と能力は正常に動作してるわよ」

 造花の切れ端を見せながら言う。



 ってことは、バリアが動かなかったのは、今までのルールとは違う要素だ。

「意識が無くても発動するはずのバリアが、今回起動しなかった、ってことね」

 改めてヒカルの顔、体を見回す。口から血が出ている。顎を打ったんだ。口の中が切れてるのだろう。ん?…ふと思いついた。


 ポケットの中のハンカチを手に取る。

 ヒカルの口周りの血を拭く。

 ルカの手を握り、ハンカチを巻き付ける。

 そのままルカの腕を握ってヒカルに振り下ろす。


 バチッ!!


挿絵(By みてみん)


『ちょいおい、アホか!何してくれんねん!この先公!』

 

「…暴言は許したげるから、ルカ、腕ある?」

『お、おう。腕も指も全部あるわ。何やったんや、今の?』


「血…というかヒカルの細胞か何かのせいかな?」



 目を潤ませながら、無言で見つめていた娘に聞いてみる。

「リブ、あんたがヒカルの血をなめたって言ってたの、一ヶ月以上前よね?」

『…そのくらいだと思う』

「さすがに一ヶ月も影響するとは思えないんだけど…あんた昨日のお泊りで、ヒカルの何かを取り込むようなこと、した?」

『ぶーーっ!』ルカは吹出してしまった。


 リブは赤面している。分かりやすいな。

『え、えっと…した、ような…してないような』

「詮索しないけど、それが原因かもね」



 …ふむ。これは貴重なデータだ。ヒカルの血でも何でも仲間に塗るなり、飲ませるなりしたら、ヒカルに帯同するチーム全体が、バリアの影響を受けなくなるかもしれない。これは安全面で部隊を格段に運用しやすくなる。




『う、ゲホゲホ、うーん』


『あ、ヒカル起きた!』

「飛びついちゃダメよー原則安静だから」


『…何?起きた、よ』『…頭くらくらするけど』

 受け答えの反応はできてるみたいね。

「どうせ動かないほうがいいし、もう少し寝ててもいいわよ。吐き気はない?」

『ないです。すいません。そうします』


 ルカがハンカチを解き、ムチのようにヒカルの方に振り下ろした。またバチッと静電気のような音が出たが、ハンカチは無事だった。


『これ、手に巻かなくてもよかったんちゃいます?』

「…そうかもね」

 血のついたハンカチの内側がどうなるか見たかったのよ。

『…先生、ハンカチ返しますわ』

『目ぇ、覚めたんなら授業戻りますよ』

「はーい。ありがと。午後には戻るって叶に言っといて」

『あぃあぃ』

 ルカは部屋を出ていった。目が覚めるまで着いていてあげるなんて、ホントいいやつよね、あいつ。



 …さて。邪魔ものと言っては悪いけど、ルカもいなくなったことだし。

「これで話しやすくなったでしょ。リブ、昨日は一体何したの?」


『…キス』『ほんと一瞬だけ』


 ほぉぉぉ。うちの娘が、ついに一線を越えたか、と嬉しくなった。

「お、やるじゃん」「まうすとぅまうすぅ?」

『…うん。でもほんの一瞬、2秒くらい』


「…2秒?そんなもんで影響でるの?…そりゃかなり感染力の強目のウイルスね」

『ウイルスって言わないで!』


「何時くらいの話?」

『……帰り際』

「帰り際…あれ?その時、私見てなかったの?」

『…こっそり』

「ひゅー。油断も隙もない」


 …キス程度の接触で24時間以上有効なわけ?なんか思ったより、すごい長時間持続する印象ね。

 はて、ホントにキスだけが原因なのかしら?



「取り敢えず、今夜は赤飯ねー」

『…恥ずかしいから、やめて。なんなの、その習慣?』

「何って、日本の習慣?」

『マイカちゃん、ハーフじゃん』

「インドだと、プディング的なもの作るわ。そっちにする?」


『いや、そもそもキスしたからお祝い、っていうのが恥ずかしいの!』


「えー娘の成長を祝いたいのに」


『もういいから!』



「でも、今度からヒカルと訓練なり特訓なり、なんかするとき、そのリブの心当たりだったこと、毎回したほうがいいわ」

「効果時間も知りたいから、ま、い、か、い、ね」


『…え?』

「何分したか、とか、やった時間も記録しといて」


『…えぇ?』『…何分もしないよ…』


「まぁまぁ。あと、色々先に進んだら、その時にも教えてね」

『…言うわけないでしょ』





 …何で彼女とその母親みたいな人が、キスとかの話をずっとしてるんだろう。寝れるわけないじゃないか。かといって起きて行って「分かりました」って言うのも多分違う。


『聞こえた?ヒカル?』

 …起きてるのバレてるし。

8/16まで連日更新中

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