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トラッシュボックス ~消えたいヒカリと消えないアイツ~  作者: たっきーぷらす
中2編

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35/69

Box.35 僕は幸せものだ

 朝。目が覚めると目の前にリブがいた。正確に言えば、いるんだと思った。目を開けても寝息と一緒に揺れる白いシャツしか視界に入らない。だんだん自分の状況がわかってきた。…リブにしっかりと頭を抱きしめられている。


挿絵(By みてみん)


 昨日は風呂からリビングに戻ったら、リブがソファで寝落ちしていた。仕方ないからベッドに運んだけど、起きてくる様子もなかった。特にやることもないから、僕もベッドの隅で寝たんだった。


 少しだけそのままじっとしてみる。白い髪が一束目の前を流れている。そのまま上を見上げる。すぅすぅと寝息を立てている女の子。僕の好きな子は控えめに言っても可愛い。この子と付き合ってる、というのは今も現実感がない。

 自分の好きな人に好かれている、僕は幸せものだ。もし、2年前の自分にこのことを伝えても、信じてもらえる自信はない。



「…取られたくないな」

 別にそんな心配になることがあったわけではないけど、無性にそんな思いに駆られることがある。取られないためにはどうしたらいいかな。そうだ…朝ご飯を作ろう。胃袋を満たすのは難しそうだけど、掴むことは出来るかも知れない。


 もぞもぞとリブの腕から脱出してリビングに向かう。起こさないように腕を振りほどくのは大変だった。


挿絵(By みてみん)


 何か作れるようなものあったかな。考えながら冷蔵庫を覗く。パン、卵、ベーコン…。まぁ何とかなるだろう。


 卵を6個溶き、ミルクと砂糖を入れかき混ぜる。ひたひたに食パンを浸す。バターを敷いたフライパンではじんわりと焼き上げる。カリカリのベーコンも焼いていく。いい匂いがキッキンに広がる。

 僕は朝はコーヒーだけど、リブはどうするんだろう。冷蔵庫にあったありったけの食パンを使い切って、山盛りのフレンチトーストが出来上がった。そろそろ起こそうかと思ったら、リブが起きてきた。


『おはよう、ヒカル。いい匂いだね』

「おはよう。朝ごはん適当に作ったけど、食べるでしょ?」

『食べる!…あ、昨日寝ちゃってた。ゴメンね』

「疲れてたんだよ」「リブは朝、何飲むの?」

『マイカちゃんがコーヒー飲むから、私も一緒に飲んでる』『でも砂糖多めで』


 トーストにはハチミツか、ジャムぐらいしかかけるものはないなぁ。インスタントのコーヒーを淹れてテーブルに並べていく。あのリブのマグカップが見当たらない。どこに置いたかな。


「昨日は寝れた?」

『うん』『一回起きたけど』

 って言って赤くなるリブ。

『ヒカル、狭くなかった?』

「あー眠れてたよ。…大丈夫」

 って言って、さっきのことを思い出して今度はこっちが赤くなる。


「さぁたべよ、たべよ」

 ごまかすようにリブを食卓に促す。

『わーい。いっただっきまーす!』

 パクパクパクパク。

『おいしー。バターがよく効いてる』

『ジャム付けてもいいけど、そのままでもおいしいよ』


 …リブが食べているところはいつも見てて楽しいけど、自分が作ったものだと、さらに嬉しい。



『あー美味しかった!』

 リブの頭より大きかった、積み上げたトーストが消えてなくなり、どうやらご満足いただけたようだ。ちょうど食べ終わってコーヒーを飲んでいる頃に、リブの保護者から電話がかかってきた。

 


『あ、おはようヒカルー、リブそこにいる?』

「…」リブの方へ振り返る。いるけど、いると言っていいのだろうか?

 そんな逡巡なんてお構いなしに、マイカさんは続ける。

『リブのスマホが充電切れてるんじゃない?繋がらなくてさ。ヒカルの家に昼前に迎えに行くから、って言っといて』

「…はい、伝えときます」

 誤魔化すのはあきらめた。


『…ヒカル?』

「…はい」…さすがに怒られるんだろう。


『…昨晩は、お楽しみでしたか~?』


「な、な、…何言ってん…ですか!?」

 予想外の一言に吹き出しそうになった。

『冗談よ。でも梓づてに来月には私まで筒抜けになってるからねー。いろいろと、お気をつけあれ~』

「…分かってますよ」



 11時。マイカさんが迎えに来た。

『ヒカル、この子預かってくれてありがとうね』

『紳士なヒカルくんに年頃の娘を預けても、何もなかったみたいだったし、これからも私がいない時は預かってもらおうかな?』

 …マジ?


『え、いいの?』

「いや、程々に…」

『えー』


『じゃー帰るわね、ヒカル』


 別れ際、マイカさんが後ろを向いた瞬間、リブの優しい感触が唇に触れた。一瞬だった。

 

挿絵(By みてみん)


 けど、鼻腔に残るリブの髪の香りが、確かにその瞬間はあったのだと伝えてきた。


『じゃーね、ヒカル。…ごちそうさまでした!』

「…うん、また明日」


 

 洗面所に行って、火照った顔を洗う。鏡台の下にリブのマグカップと、そこに刺さった真新しい歯ブラシ。朝、コーヒーを入れるときにマグカップがないと思った。カップを回収して、歯ブラシは立てておいた。



 洗面台に白い長い髪の毛が1本落ちていた。ドライヤーを使ったときに飛んで行ったんだろう。髪の毛をつまんで、Trash Boxで消そうとする。


「あれ?」


 リブの髪の毛はうまく消せなかった。

面白いイラスト(2枚目)を作ってくれたので、描写が引っ張られる、というか引っ張られてみる。一瞬のキスシーンって絵としての表現は難しいですね。一枚目に出力されたイラストはそれはもう、濃厚なものでした。笑

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