↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トラッシュボックス ~消えたいヒカリと消えないアイツ~  作者: たっきーぷらす
中2編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
34/69

Box.34 Additional time

『ねぇヒカル、今日マイカちゃん帰らないんだって』

 マイカさんからの電話を切ったリブは、そう僕に告げた。


 ヘリで箱庭に帰り着いた後、巧が言った。『ちょっとうっかりしてたよ。箱庭ってひょっとしてホテルとかないのかな?』巧は普段ここに住んでいないから、泊まるとこがないらしい。編音さんは『いやー今日は疲れたね。またどっかで埋め合わせはしようね。お疲れー』って白々しく言って、そそくさと二人でどこかに消えてしまった。二人がどこに行くのかは聞かないことにした。聞くのは野暮というものだ。



 …そして今、僕は野暮になろうとしている。

 命題、どうやってリブを大人しく家に返すのか。



 マイカさんが帰らない理由はさっきの事故のせいだろう。現在19時過ぎ。これからルカたちと遊びに行くなんてのは不自然だ。家でルドの世話がある、なんて言っても、リブは喜んで着いてくるだろう。


「取りあえず、作るの面倒だし、晩ご飯食べに行こうか?」

 ここでお腹いっぱいになって、眠くなってもらおう。


『わーい、どこ行く?ラーメン?カレー?お蕎麦もいいなぁ』

「その白い服、汚れるよ?」

『またヒカルに綺麗にしてもらうから良いよ』

 …しまった。着替えがないことも言い訳にできたのに先に潰された。

「箱庭の中にそんなにおしゃれなトコないよね」

『おしゃれかどうかじゃなくて、ヒカルと行くのが大事なの!』

『んーじゃあラーメンにしよう!』



 …1時間後。僕がラーメン一杯食べる間に、五杯を平らげたリブを見て、僕の想定が甘かったことを痛感する。分かっていたはずなのに。六杯目を注文しようとしたところで、今まで疑問に思ってたことを聞いた。


「リブってよく食べるよね」

『うん。食べるの大好き』

「太らないの?」

 リブはスープの中に箸を落とした。

『…太った?』

「いやいやいやいや、全然。むしろなんでそんなに食べてるのに痩せてるの、って思うぐらいで」

『ヒカルがそっちが好きなら太れるよ?』

 ほら、と差し出してきた手がふた周りほど大きくなって、また元に戻った。


『普段は特に意識してない、自然な体型だけど、身長伸ばしたりもできるから、言ってね?』

「…言わないよ。僕より背が高くなったらなんとなく困る」

『ヒカル、何センチ?』

「こないだ170超えてた」

『私は止まっちゃった。普通にしてたら162』

『背が止まったら太りやすくなるかもね。気をつけよ。あ、やったことないけど、胸だけ大きくしたりもできるのかな』にまーっと笑うリブ。

『そういうのがいい?』

「…知らないよ!」


 

 結局、リブは追加注文はせず、僕たちは店を出た。…概ね計画通り。リブはニンニクたっぷりラーメンを5倍も食べている。女子的には今日は帰る一択になるはずだ。でも「ラーメン食べたから無理だよね、帰ろうか?」っていうのは冷たい気がする。軽く誘うけど、断られるように持っていこう。



「えっと…家帰っても一人なんでしょ。今日、ウチ来る?」

『え、いいの?絶対、家まで送られると思ってた』

 僕はそのつもりだよ。


「いいよ。女の子1人にするのも違う気がするし。なんなら、泊まっていく?」

 って言っても、正直言ってリブの身に心配なんて無用だし、泊まりは流石に無理と思うだろう。


『えっと…どうしよっかな。それならラーメンにするんじゃなかったかな…』

 

 口元を抑えるリブ。そうそう、その調子。ニンニク美味しいよね。仕方ないよ。


 だけど、しばらく考えたリブから来た返事は、思っていたのと違っていた。

『うん、じゃあ今日泊めてもらうね。…よろしくお願いします』



 …はて。



『うん、じゃあ今日泊めてもらうね。…よろしくお願いします』だ…!?

 そこから家に帰りつくまでの記憶はあいまいだ。近くのコンビニに寄って買い物をして、寮の部屋に着いたらしいことは後日レシートでわかった。


 

「ただいま」

 家につく頃には、幸い大分頭は冷えていた。思ってたのとは違うが、結局のところ僕がどうするか、という問題だと思ったからだ。

『ルド、お邪魔します。へー、かなちゃん家と同じ感じなんだね』寮の作りはどの部屋も同じらしい。

 さっそくルドを抱きあげ、ソファに座るリブ。


「お風呂にする?」

『ヒカル、気が早い〜』

「先に言っとくけど、そんな気はないよ」

 釘は刺しておく。

『……うん。…ありがと』

 僕から言うのも違うのかもしれないけど。


『じゃあ洗濯機とドライヤー貸してね』

 リブはお風呂へ行った。よし。今のうちに全力で部屋の掃除だ。―Trash Box―部屋の隅々まで汚れも埃もその他諸々も、全部消しされ。





 「…ふう」

 服を脱いで、洗濯機を回す。…乾くまで1時間。お湯を張りながら体を洗って、湯船につかる。この入浴剤、かなちゃんちと同じ香りだと気付く。なんだかモヤッとしたけど気の所為だ。今はそれどころではない。


 …ヤバい。彼氏のウチに来てしまった。しかもお泊まり。予想外にトントン拍子に進んでしまった。ヒカルの家で裸になっている自分に段々恥ずかしくなってきて、湯船でブクブクと泡を作る。


 このまま帰るって言ったら、がっかりするかな。彼は優しいからきっと怒らないよね。そんな風に考えてた気持ちを見透かされたように、ヒカルの声が響く。

『ごめん、適当に着替え置いとくから使ってくれていいよ』


 …

 ……

 …よし、覚悟は決まった。頭に巻いたバスタオルを取って、私は頭をわしわしと洗った。


 次はニンニク臭の処理だ。このままにしておくのはきっとまずい。でも私には考えがある。


「ヒカル、こっち来ちゃだめだよ!」今からここは危険地帯になる。

『行かないよ!』遠くから返事がした。


「—Particle—」 

 体内のニンニク臭を粒子化して抽出。…取り敢えず湯船に沈めよう。気泡を浴槽に沈め、かき混ぜる。溢れた泡がはじける。……うん、これを身にまとっていたらと思うとぞっとする。次からラーメンは止めとこう。後は換気扇に期待するしかない。


 バスタオルをまとって、洗面所にあった、新品の歯ブラシを拝借して念入りに歯を磨き、ドライヤーでゆっくりと髪を乾かしていると、ちょうど洗濯機の乾燥が終わった。肌着を身に着け、置かれていた着替えをみる。白のTシャツとショートパンツ。当たり前だけど、ヒカルのやつだよね。

 浴室の臭いもすんすんと嗅いでみる。…こっちも大丈夫そうだ。




 服を着てリビングに戻る。ヒカルは慌てた感じで後ろを向いてしまった。…もう、君が持ってきたんでしょ?


挿絵(By みてみん)


『僕もお風呂行ってくるね』

 ヒカル逃げちゃった。

 

 一人になった。ソファで横たわって天井を見る。一人になってバタバタが落ち着いたと思ったら、むしろ冷静になってそわそわしてきた。


 はぁ…私はヒカルと、どうなりたいんだろう。

 昔の私が考えてた通り、私は死ぬまでヒカルと一緒にいたい。一緒にいないと私が死ねないのだから、私が死ぬまで一緒にいるんだけど、そんな理由は関係ない。私がヒカルと一緒にいたいんだ。



 じゃあずっと一緒にいるんだったら、ヒカルと結婚するのかな。子供もできるのかな。やっぱり男の子と女の子両方がいいな。お父さんがお母さんを殺しちゃったら、子供はやっぱり怒るんだろうな。


 能力って遺伝するのかな?私の子供が私と同じ能力だったら、可哀想だよね。またヒカルを見つけないといけなくなる。



 そんな事を考えてたら、いつの間にか眠ってしまってた。気が付いたらヒカルの部屋のベッドの上だった。ここまで運んでくれてたみたい。隣でヒカルが寝ている。顔が近い。


 念のためもう一回歯を磨いておこう。虫歯にはならないけど、近くでニンニクの臭いをさせるのはよくない。ゴソゴソと起きて洗面所に向かう。途中のリビングのテーブルの上に私のマグカップがあった。出してくれてたんだ。

 歯を磨き終わった歯ブラシは、念入りに念入りに洗ってマグカップに立てておいた。



 ヒカルを起こさないようにベッドに戻る。やっぱり顔が近い。どうしようか迷ったけど、今日のところはおでこにキスで我慢しよう。


 今日はここまで。…おやすみヒカル。



 

8/10第一話の冒頭にプロローグを追記しました。

3話の文章を推敲しました。(文の流れを変えただけで設定などはは変わりません)


※本文とは関係ありませんが、後ろ向きのリブも捨てがたかったので、添付します。

挿絵(By みてみん)




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。