↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トラッシュボックス ~消えたいヒカリと消えないアイツ~  作者: たっきーぷらす
中2編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
33/69

Box.33 Factor災害

「この音…!?」

 僕がSingularityを目指すと宣言した日、タローさんから聞かされた事がある。

『今まで聞いたことがないような、嫌悪感を感じる金属音、それがFactor因子活性化の合図だ』

 腹の奥から引っかかれるような不快感を伴う金属音。これのことだ。

 

『―Factor―!』リブが耳を押さえながら言う。

「この金属音が、Factor?」




 巧も状況に気づいている。

『被害者の中にFactor因子の感染者がいたんだ』

『助けられなかった。亡くなったんだ。まずい…覚醒するぞ』


『編音、箱庭に…マイカさんに連絡取って。非常事態の可能性がある』

『…おっけー』


 コースターの中の状況は分からない。どうなっている?何人中にいるんだ?二次被害を避けないと。


『巧、マイカさんと連絡ついた』

『暫定的に現場指揮権を巧に委譲、対象は分かるか?って。分かるの?』

『それ機密なんだけど、何か言ってた?』

『ここにいる四人で情報共有は許可する、って』

『分かった。じゃあマイカさんに箱庭の権限でランドの人を退避させてもらうよう伝えて』

『それも、もうやってるって』

『了解、さすがに早いね。…ほんと憎らしいくらい優秀だよ、あの人は』






 園内放送が鳴る。

〈園内の方はジェットコースターゾーンからの退避をお願いします。倒壊の危険があり、引き続き随時園内からの退避をお願いします。払い戻しについては…〉


 …ふぅ。何でこんなことになってしまうかな。まぁ起こったことは仕方ない。


「悪いけど、箱庭の指令通りここは臨時的に僕が仕切るよ。Singularityの二人には悪いけど、ね」

『…まだ二人とも仮。問題ない』

『僕はまだ仮の仮だよ』


「ありがとう。君達は知ってるかもしれないけど、Factor感染者は死後数分しての金属音で因子に体を乗っ取られ、次いで10分程度で再活動が始まる」

『タローたちから聞いたことある』リブが応え、ヒカルも頷く。

『私は…まぁ色々と知ってる』

 編音と梓が各々のルートから、内情を色々把握していることは周知の事実だ、


「編音、中にまだ人はいる?」

『…そうね…まだ何人かいるみたい』

「そうか。避難させないと」


『一緒にいるのは家族かな。だとしたらキツイね』

「編音、せめて離れたところに避難するよう、誘導頼めるかな?」

『…やってみるよ』


 コースターの施設に入る。シートをかけられた遺体と思われる膨らみは、こちらからは中がどうなっているか分からない。少し離れたところに、動揺している奥さんだろうか?うまく編音が連れ出してくれたようだ。


 辛いな。僕達はこれから亡くなった家族の『処理』をしないといけない。家族を亡くしたばかり人にまた決断を迫るのは、いたたまれない。


 箱庭も馬鹿ではない。Factor災害ともいえる状況について政府を含め各方面に働きかけた。そもそも死亡した遺体の首をはねるとかして、再生しないようにする手段はある。けど、法と倫理がそれを許さなかった。活動しない遺体もあったし、能力によっては体を傷つけるのが意味がないこともあるからだ。結局〈死後動き出した遺体に限り、対処を認める〉これが法律と公共の福祉とやらの塩梅の結論だ。おかげで、その分こちらは危ない橋を渡らされることになっている。


 

 金属音が消えていく。…そろそろだ。



「編音、ご家族はどうだった?」

『…わかってはくれた…と思うよ』

『なるべく傷つけないで欲しい、って』

「…なるべく、そうしよう」



「みんな、情報を共有しとく。彼の能力は―Tremor―振動能力だ」

『分かるの?』

「この半年余り、そういう仕事してたからね」

「能力の威力次第では、この建物自体が倒壊する可能性がある」


「リブ、ヒカル、対応頼める?」

『任せて』

『巧は少し離れていて』

「了解」



 ブルーシートがゆっくり持ち上がり、人の身長になる。次の瞬間、衝撃波が起こり、シートが吹き飛ぶ。コースターのレーンが大きく揺れる。振動、というよりは衝撃波を発する能力のイメージだな。


挿絵(By みてみん)


『異能発現、初撃確認』

「対象を駆逐目標に指定、攻撃を許可する」

「いいよ。楽にさせてあげよう」


 リブとヒカルはためらいなく駆け出していった。相手は知性がないように見える。頭に傷があるのが死因になったのだろうか。何れにせよ、やみくもに衝撃波を打つだけの攻撃は、ヒカルのバリアの前では何の意味もない。そして、ヒカルの後ろに隠れながら射程に入ったリブの一閃で、彼はその活動を終えた。




 ほどなく箱庭の正式な現場担当がやってきて、事故の事後処理を行なってくれた。何が原因で今回の事故が起こったのかは、そのうち調査が進むだろう。無害化した遺体を警察と家族に引き渡すところまでが僕達の仕事だ。


 先ほどの女性は、やはりあの人の妻だった。

『あの人が誰かを傷つけることがなかったのは、幸いでした』と言ってもらえたことには、少しだけ救われた。


 園の責任者の方からも感謝を伝えられた。『いやー迅速な対応ありがとうございます。さすが箱庭の人たちです』気楽なものだ。彼らの事故責任はこれから問われることになるというのに。



 マイカさんが手配してくれた帰りのヘリの中。

『巧、何で亡くなった人の能力がわかったのさ?』

「そうだね…共有していいって言われてたから、この半年ちょっと僕がしてきたことを説明しようか?」

『ぜひぜひ』


「この半年、僕がしてきたことは、少なくとも日本国内における異能者の全数把握だったんだ」

「僕の―Providence―で世の中にあふれてるSNSや動画投稿の全回線を検証して、箱庭が把握していない異能者をあぶり出して、登録していく」

『なんだか膨大な仕事だね』


「そうだね。それでも、これまでに統計的に予想される全数の半分は網羅できたと思う。そのうちの7割ほどは箱庭のデータに情報として登録した」

『すご』


「それで今回、施設の中にいた異能者、コースターの近くにいた人物は監視カメラの映像から割り出せた」

「もちろん、その人かどうか、他にも登録されてない異能者がいないのかは分からないけど、その人は確実にまだコースターの中にいたんだ」

『かなり高確率でその人…ってことだね』

「そういうこと」



「それにしても、君達だとあっさり制圧が終わっちゃうね」

『あれ、タロー練で思いついた技』

『大分タイミング合わせられるようになったよね』

 そう、普通のFactor災害なら、Singularityの敵ではない。



『それにしても、死んじゃうまでFactor災害になるかどうか分からないってのも、きっついねー』

「そうだね。もし僕が災害になったら、世界中のパソコンにスパムが送られる、かな」

『何その迷惑災害?』



 普通のFactor災害なら。まだ何とでもなるんだ。でもSingularityが災害の当事者になった時、暴走した時、誰が彼らを止められるのか。Singularity自身も、自分の感染に気付く術がない。彼らに災害対応を任せることは、彼らの身を危険にさらす。常に諸刃の剣なんだ。

8/11山の日も更新します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。