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トラッシュボックス ~消えたいヒカリと消えないアイツ~  作者: たっきーぷらす
中2編

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32/71

Box.32 事故

 10月。

「たっくみ~が帰ってくる~」やばい。顔がにやけてしょうがない。付き合ってから、すぐ箱庭から出て行ったから(どこにいるかは機密なんだってさ)、もう半年も会ってないよ。何しよっかな。ゲームなんてオンラインで一緒に良くやってたし、勿体ないよねー。どっか行こっかなー。ネズミーランドとか?最近料金高くなったらしいけど、何とでもなるしね!


 …おや?何か不満そうな女子が一人。

『…ちぅ』

「お、なんだなんだ、ネズミみたいな声出して」

「リブ、君もネズミーランドに行きたいのかー?」

『…口に出てた?』

「なんか出てたよ」

『…ネズミーランドは行ってみたい』『行ったことない』

「行ったことないんだ?私も小さいころ行った切りだけど、ネズミっちーとネズミみー、ダーティーと、トランプぐーず。夢と現実が織りなす、仮想現実空間さ」

『…面白そう。ルドも好きかも』

「…一応言っとくけど、リアルなネズミじゃないから、猫ちゃんは食べれないよ?」


「それにしても」「あんた、いつも悶々と悩んでるね」 

『アヤは悩まないの?』

「遠距離ってだけで、悩みしかないけど…」

「で、あんたの悩みは?」


『……ヒカルが何でも<いいよ>って言ってくれること』

 思わず額にチョップしてしまった。

『…痛い』

「何が悩みよ?惚気か」

『えー、だってちょっとぐらい、嫌とかダメとか言ってほしい』

「一回『会いたい』って言って『駄目、無理』とか言われてみなさい!」

『…………泣くかもしれない』

 ぐぅかわ。目が潤んでる。これ本気で泣くやつだ。アズがお母さんみたいに見守っている気持ちがよく分かるなー。


「ほんじゃ今週末、ダブルデートってことでいいのかな?」

 リブは目を輝かしてきた。

『ほんと!やった!初めてお出かけデートだ!』

 …初めて?アズのリークによると、漸くこの子らが付き合い始めてそろそろ一カ月。それは、少しあかんのとちゃうかい?ヒカル。

 



 ……巧から通信だ。向こうが非表示になっているから、逆にそれでわかる。

『———って言ってるんだよ、ヒカルどうする?』

「…これ前と同じ感じで仕込みだったりする?」

『いや。これはホント』

 人の多いところ苦手なんだけどな。ジェットコースターとか無理だと思う。でも、断ったらリブ怒るだろうなぁ。

「…いいよ。試験終わったところだし。僕もネズミーランド行ったことないけど」

『わかった。編音にも伝えておくよ』『じゃあまた週末に』

「ありがとう、連絡よろしく」


  

 あー。どうしよ。取りあえず、人にぶつからないようにしないと…。



 …当日。


『すごーーーーーい!』

 リブはゲートをくぐった瞬間からキョロキョロ。

 へ-、ネズミがどら焼きをかじっているのが、ゲートのモチーフなのか。いろいろギリギリだな。


『全部本物?』

「いや、あのどら焼きは食べられないよ?」

『本物じゃないの?』

『夢の国だからねぇ』

『じゃあ夢なの?』

「夢と現実の狭間ってやつだよ」

『…哲学だねぇ』巧が笑う。


『リブ、ここでは考えたら負け。お金のことも考えちゃダメ』

『了解!』


 何だか昔のリブみたいだ。素って変わらないんだな。そう言えば、リブってお金持ってるのかな?僕は…多分この四人の中では一番貧乏だ。何か仕事もらえないかなぁ。

『お金か…考えちゃうよね』

 ここは夢と現実の狭間。

『まぁ言い出したの私だし、今日はおごってあげるよ』

『アトラクション壊さなければ大丈夫』

 編音、君はここ丸ごと買えるくらいお金持ってるでしょ?



『じゃあまずは記念撮影しとこー』

 編音が長い棒をつけたスマホを取り出した。

『はい、並んで』

 リブがすっと腕を掴んできた。僕は硬直。横目で巧たちを見る。…自然と腕を組んでいる。…これが年季か。


「……」

『……』


『ヒカル、笑って。腕、疲れちゃう』

『ごめん。笑ってるつもりなんだけど……あはははは』

 リブが髪を服の中に入れてきた。パシャ。


挿絵(By みてみん)



『ぐっじょぶ、リブ』

『ヒカル、緊張しすぎ』

『あんまり意識しすぎてもいいことないよ?』


「人ごみ苦手なんだよ。いつ誰かがぶつかってくるか分からないからさ」



 …あ、やなこと言ってしまったかな。

『あーそっか。そうだよね』

 リブも意味は分かったらしい。

 ヒカルは普通が難しいんだ。改めて気付いた。彼の能力からすると、人にぶつかるだけで事故になるから、歩くこともストレスなのか。…すごいな。

 さっきもさりげなく腕を組んでたけど、僕なら彼と握手するのも緊張するところだ。リブだけが、恐怖の感情なく彼に近づけるってことなのか。

「…君たち、本当にぴったりはまるピースなんだね」

『ピース?…した方がよかった?』

「いやいや、僕と編音も負けない、と思っただけ」

『は?恥ずかしいから止めてー』

 

「—Resonance—で周り警戒しておいて」編音にこっそり耳打ちする。

『?、いつもしてるよ』

「オーケー。でもなるべく人の少ない道を通ろうか」

『まぁ、そのくらいなら余裕よゆう』


「リブはヒカルの腕、離しちゃだめだよ」

 確か触れたままだと、バリアは発動しないんだった。

『だってさ。ヒカル、離さないからね』

『はーい』

 でも、リブはそれなりの勢いで触れても大丈夫そうだ。これは慣れの問題?


 

 ポップコーンコーナーで買った巨大なバケツをリブは首から下げて歩いている。

『ヒカル』

『ん?」

『あーん』

『……』また固まった。


「……リブが待ってるよ?」

『巧、お手本見せたげよう』

「じゃあ、編音、あーんして」

『あー』編音の口に優しく投げ込む。せき込む編音。

『たくみ、そうじゃないでしょ!?』

「あ、違った?ごめんごめん」


『やってみていい?』

『いいけど、ゆっくり投げてよ』

『はい!』ポップコーンを上に投げ上げるリブ

『ちょ、三個は無理!』

 一個、二個はナイスキャッチ。三個目はさすがに落とした。

 いま落ちたコーンは、ヒカルに当たる前にしっかり消えていた。やっぱり自然落下程度のスピードならバリアは発動するみたいだ。やっぱり慣れ、か。


 ネズミっちーと写真を撮ってジェットコースターへ。待ち時間70分。

『長いね』

「並んでおくから、買い物でも行って来たら?」

『んーそうしよっかなぁ。リブ行く?』

『ヒカルが行くなら』

「いいよ、行っておいで」


 さて。並びますか。コースターの金属音といい感じに悲鳴が聞こえる。マイカさんに言われてた、―Providence―のテストも今のうちにしとこう。コースターでヒカルとっさにレールとか消してしまわないといいけど…。

 その時、ひときわ多い金属音と、悲鳴がした。ポツポツと頭に水滴が当たる。

 …あれ、雨かな?……違う、血?





 ここはお土産屋さん。非現実と現実をつなぐお店。でも、可愛い。

「これかわいい」

『これ付けるのが夢の国の正装さ』

 猫耳、ではなくここではネズミ耳カチューシャ。

『はい、ヒカル、お揃いにしよう』

「イヤなら嫌って言っていいんだよ?」

『私は巧の買ってくけどねー』


『リブはつけたいの?』

「それは…まぁそうだけど…」

 ヒカルはこういうの好きそうには思わない。

「あ、ルドにねずみのおもちゃ買って帰ろうかな」

『いいよ、付ける』

 やった!…でも、また我慢させちゃったかな。


 買ってもらったカチューシャを付ける。ヒカルは恥ずかしいのか顔が真っ赤になる。

『これじゃまた目立っちゃうよ』

「ヒカルみたいに着けてる人いっぱいいるよ。大丈夫」

『いや、僕じゃなくてね…』


 その時店の中まで大きな金属音と悲鳴が響いた。

「何だろ?コースター?」

『それにしては音が派手だったけど』


『ヒカル、リブー、巧がすぐ来てって』

「もう順番来たの?」

『いや、そうじゃないみたい。でもすぐ来て、って』



 外に出ると、少し先のジェットコースターから、大勢の人がこっちに逃げ出してくる。サイレンを鳴らした救急車も見える。何かあったんだ。

 ヒカルを守りながら、人波に逆らってコースターの入口まで行く。何とかたどり着くと巧が手を振っていた。



『コースターの事故みたいでね。何があったのか、よく分からないけど、―Providence―で傍受した感じだと、心肺停止ってやつらしい』

『僕らで出来ることは?』

『叶がいれば、怪我の処置は出来るかもしれないけど、残念ながら僕らで出来ることはなさそうかな』


『巧、肩に血?がついてる』

『あ、飛んできたのかな。多分事故、怪我だったんだろうね』

「仕方ないね。他のとこ行こうか」


 その時、さっきとは違う大きな気色の悪い金属音がコースターの方から響く。皆も気づいたみたいだ。


「この音…!?」

『―Factor―!』


 これは…事故で亡くなった人のなかに、Factor保持者がいたのか……覚醒が、始まる。

モニュメント、著作権に引っかかるせいで、イメージと全然違うものになりましたが致し方なしです。


8/11山の日も更新します。

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