Box.31 ただいま
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テーブルに並べられたお皿。なんか和洋折衷ごちゃごちゃしてるけど、とにかくいっぱいある。パントリーから見え隠れしてるゴミ袋の山からも、頑張ってくれたのがよく分かる。
「すごい量だね。リブが作ったの?」
『色々見ながら頑張った!』
『何回か、指を切り落としたけど』
…切り落とした?聞き間違いかな?
『あ、大丈夫。血も全部回収したから、残ってないよ』
『リブ、それ言わない方がいいわー。軽く引くから』
と言いながら、まだ盛り付けてない野菜たちを洗い始めたマイカさん。
『ヒカル、引くの?』リブの目が潤んでる。
「…引かないよ。大丈夫」…卑怯だと思う。
「こないだも、僕の血を舐めてたぐらいだし」
『あんた達、何の儀式よ、それ』
『先週のタロー練で、ヒカルの血が顔にかかっちゃっただけ』
『そもそも他人の血なんて舐めるもんじゃないわー。変な能力の奴もいるかも知れないし』
『何も無かったよ?』
『ヒカルの血を飲んで何かあるんなら、あんたもう消えてるんじゃない?』
「そうか。確かに、消えなくてよかったね」
『あと…100年は消えたくないかな』
…ドキッとした。
『…取りあえず、出た血はバリアに反応もしないし、触っても飲んでも大丈夫ってこと…ね』
『マイカちゃん、そんな話する日じゃないでしょー』
「あぁごめんごめん。じゃあ食べましょうか。私もおなかペコペコよ」
『じゃあヒカル、誕生日おめでとー!いっぱい食べてね!』
「ありがとう。いただきます」
…さて。問題はリブの作ったものがまともかどうか、だ。そういった趣味があるとは聞いたことがない。食堂で爆食いがいつものことだから、何か作って持ってきたのなんて見たことない。更に『指を切り落とす』なんてこと、通常起こらない。ひょっとして肉に火を通すことも知らないかもしれない…。
表情に出してはいけない。僕のためにしてくれてるんだから、不快にさせたら失礼だ。でも好意と命の危険は別に考えないと。
…マイカさんはニコニコしてる。この反応は…イケるのか?よし、取りあえず無難なものから行こう。…野菜はさっき回収されてテーブルにはない!揚げ物は…表面では火の通りがわからないから、リスクが高い。まずは…パンとスープだ!
…もぐもぐもぐ。あれ?スープもすすってみる。あれ?
「…おいしい…!」
『ほんと!』
「このパン、…リブが作ったの?」
『こねて機械に入れただけだけどね。それでも2回失敗しちゃった』
「でも、すごく美味しいよ。お店で売ってるやつみたい」
「スープもおいしい」
『えー、嬉しいな。あ、このラザニアっていうのかな、食べてみてよ?うまく作れたと思うんだ』
「あ、カレー風味だね。これもおいしい」
洗われた野菜がマリネになって出てきた。
『殆ど初めて作ったものばかりだけど、この子、意外と才能あると思うのよ』『最初はどうかと思ったけど』『あんた、いい奥さんになれそうね』
『「やめて」』「ください」2人で叫んでしまった。
『えー、100年付き合うって、そういうことでしょー?』
『さ、私も食べよっと。リブの手料理なんて新鮮だわ』
『あ、先にロウソクやろうよ!』
ケーキのロウソクに火をつけるリブ。
『良いよーヒカル!ハッピーバースディ!!』
促されるまま、ロウソクを吹き消す。
『ヒカル、14歳おめでとー!』
『おめでとう、ヒカル。さぁ食べよう!』
『マイカちゃん、写真!』
『いや、もう食べさせてよ…』
意外と言っては失礼だった。リブの作った料理はとにかく美味しかった。ケーキも甘すぎない、好みの味だった。マイカさんも上機嫌でたちどころにワインを2本空けてしまった。
…1時間後
『ヒカル、今日は泊まっていってもいいからね。むにゃむにゃ』マイカさんは一足早く9/10へ旅立った。
『酔っ払いはすぐ寝るね』
寝不足って言ってたけどね。
『部屋に片付けてくる』
リブの白い髪にくるまれて、マイカさんは自分の部屋に押し込まれていった。
『リブ、頑張ってねー』
ベッドに寝かしたマイカちゃんが布団の中から手を振ってくる。この人わざとだ。こう来たのね。
「…はぁ」覚悟を決めよう。
マイカちゃんを寝かしつけて、私はリビングに戻った。ヒカルはルドと遊んでいる。
「マイカちゃん寝ちゃったみたい」
『疲れてるみたいだったし、しょうがないよ』
『あ、ご飯美味しかった、ごちそうさまでした』
「喜んでもらえてよかったよ。頑張ったかいがあった!」
ヒカルはリビングの隅にあるルド用のペットハウスに連れて行った。マイカちゃんが買った、気合入ったサイズのやつだ。
『で、指を切り落としたって?』
「もう治ってるよ、ほら」
手をヒラヒラさせてると、手を捕まえられた。
『いつも思うけど、何で治るんだろうね。不思議』
手をむにむにされながらまじまじと見られる。…恥ずかしい。
『痛くないの?』
「指のままで切れたら……痛いよ!」
今のは痛くはないけど、くすぐったくて手を振り払ってしまった。
『あ、ごめん』
「いや…ごめん、大丈夫」…しまった。
「ねぇヒカル、今日…泊まる、の?」
『えー、いや、泊まらないよ!着替えもないし』
「お風呂入ってたら、洗っとくよ?」
『いやいやいやいや、流石に帰るよ』
ヒカル慌ててる。…そっか泊まらないのか。
「じゃあ帰る前に誕生日プレゼント渡しとくね」
『あ、叶さんがくれたの〈女子から〉って言ってたからリブのはないんだと思ってた』
「ひどーい。ちゃんと準備してたよ」
「はいどうぞ」ヒカルに紙袋を渡す。
『開けていい?』
「…いいよ」
『おしゃれなマグカップ……が2個?』
「一個、私のだから、ヒカルの部屋に置いといて」
数秒の間が空く。
『…ウチ来る気?』
「…行くよ。当たり前」
『いや、当たり前では…』
…もう!
はっきりさせよう。
「私、ヒカルの彼女になるから!」
ヒカルは目をパチクリ。
…あれ?間違ったかな。
「ヒカルが私の彼氏になるの!」
…こう!?
あー、分かる。今、私の顔は真っ赤だ。
『…ふふっ』
ヒカルは思わず吹き出しちゃった感じ。
「あー、いま笑うとこ?」
『いや、何だろ、この誕生日プレゼントは想像してなかったかな』『ありがとう、リブ』
『マグカップ、君のもうちに置いとくよ』
『でも、来る時はマイカさんにちゃんと言っておいてね』
「…うん、そっちは分かった。…もう1個は?」
『断ると思う?』『ずっと待ってたのに』
「私も待ってたんだけど…?」
『…そうなの?』『なんだ、2人して待ってたの?』
『ごめん…お待たせ、リブ』
「…ただいま、ヒカル」
『ただいま?』
「うん、何かただいまって感じ」
「前の私はずっとヒカルのとこにいたから」
「私もヒカルのとこに帰った。だから、ただいま」
『じゃあ…』
『お帰り、リブ』
…プリヤの言うとおり、2倍にしてもらう必要、無かったね。
記憶喪失編ってほどでもないのですが、これにて一件落着です。
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