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トラッシュボックス ~消えたいヒカリと消えないアイツ~  作者: たっきーぷらす
中1編

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3/72

Box.3 白い髪の少女

カクヨムで先行掲載β版公開中。 

*なろうは挿絵作成の関係で数日遅れです。

https://kakuyomu.jp/works/2912051602729913334

『起きたかーぃ?』入ってきた女性は臆面もなく、軽い感じで呼びかけてきた。

『おはよう、朝霧くん』

『ん?顔が赤いね。どこかにぶつけたかな?』

 

 思わず顔を隠すように頭を下げる。目だけはしっかり相手を見据えて。

「何でもないですよ……あなたは、誰ですか?」


 女性は自分のIDカードを示しながら答える。ID番号は指で隠れて見えない。

『橘・サーラ・マイカ。今日は6/12金曜日、君は1日寝ていたわ』女性は笑う。

『私はこの施設の責任者みたいなものね。名前長いからマイカでいいよ』

「施設?」

 見透かされるような大きな目が覗く。背中がぞわぞわする。

『ACU: Anomaly Counter Unit付属異能者保護研究施設。通称《箱庭》、の日本支部ね』



 最悪だ。その施設のことはよく知っている。調べたことがある。能力者——彼らは異能者と呼んでいる——を保護しているという名目で閉じ込めている、と言われている施設だ。軍事転用なんかもしているらしい。そして自分は学校を壊している。当然けが人もいるだろう。能力で人を傷つけた。そういうやつは例外なく、箱庭送りになるんだ。


「拘束しないんですか」

『拘束?あぁ、自分が何をしたか分かっているのね?』

「僕は教室を吹き飛ばしました」…そしてルドを殺しました。

『ん~。隣の教室は崖の上だけど無事だし、入口のドアは残っていたから、そうね。大体94%くらいね』

「…同じですよ。ここ、犯罪を起こした異能者を閉じ込める場所でしょ?」

「だから僕も」



『あー世間のイメージってそうなのね、残念』

 しばらく考えたような仕草の後、大げさにため息をついて続ける。

『で、君さ、私たちにそれができると本当に思って言ってる?』

「出来ないんですか?」

『んー。私たちの仕事の一つは、君の言うような異能者の起こした事故の後始末。そのために君をここに一時的に避難させた。権限があるからね』



『でも正直に言って、君の能力を拘束することは難しいと思うの』



「…難しい?」

『君の能力、普通じゃないのよ』

「異能に普通も何もないでしょう?」

 異能者自体が普通じゃないのだから。

『そう言われたら身も蓋もないんだけどさー』


『例えば磁力を操る、なんて能力だったら、プラスチックの牢獄に繋いでおけば拘束できるわけだけど、君の能力は<触れたもの全てを消す>。これは単純なバリア能力なんかと、わけが違う』

「そうなんですか?」

『君が寝てる間に少し調べたからね』

『手錠みたいな拘束具はぜーんぶ消えちゃって無意味だったし、結論としてはこちらから君に協力してください、とお願いするのが<手っ取り早い>のよ』


 『手っ取り早い』って?多分、磁力の人は実際にそうして拘束したんだ。『拘束は難しい』とも言っていた。この言い方は、手段はあるってことだろう。この人たちは僕を逃がすつもりはない。面倒事にしたくなければここにいろ、ということだ。

 『拘束する方法がない』なんてこの人は言っていない。



 ベッド横の椅子に腰掛け、僕を指さして続ける。

『君みたいな特殊な能力者は世間から疎外されるの。心当たりあるでしょ?』

「…痛いほど」頷くしかなかった。

『このまま帰っても、元の学校には戻れない。保証するわ』

『だから私達から君への提案があるの』

「提案?」

『そう。君の後見人への立候補』


「…?」

『私たちが君を監視監督します、って世間的な体面を決めるの』

『平たく言えば私たちと一緒に、ここ箱庭で暮らしましょう、ってこと』

「??」僕は意味が分からなかった。



『実は、君のことは前から知っていたの』

『SNSでも上がってたわよー。変わったやつってね』

『それで今回のことで、昨日改めてご両親にもあいさつしたわ。息子さんをください、って』

「…はぁあ!?」…言い方。


『事情を伝えたら心配はしてたけど、二つ返事だったわよ』

『ご両親は普通の人みたいだから、正直困るわよね』

『学校ぶっ壊せる息子が、何もなかったように帰ってきたら、さ』



 目の前が暗くなった気がした。「あぁ。もう帰る場所はないんだ」と思った。僕が僕自身を怖がっていたくらいだ。両親の気持ちも分かる。普通の人からすると、恐怖でしかない。いつ爆発するか分からない爆弾と一緒に暮らすなんて、普通は無理だ。


「…分かりました。でも僕が死ねば全部済むんじゃないですか?」



「んー」

『それされると、さすがに私が君の両親に怒られるわ』

『……多分ね』冷たい言い方だ。


『でも本当に死ぬかどうかは、少しこっちの話を聞いてからでもいいでしょ?』


「…えぇ、まぁ」

『理解が良くて助かるわ。やっぱ君賢いね』

 にっこりと笑う。どこまで本気なんだ、この人。



 コンコン。今度はノックの音がした。



『入っていいよ』


『はーい』ガチャ。

 ドアが開くと青い服を着た少女が立っていた。少しグレーがかかった長く白い髪。身長は僕と同じぐらいだろうか。ずかずかとマイカさんの前に仁王立ちして、右手でピース。


『君がヒカルくんだね!』『わたしはリブ!』

『君に聞きたいこと、話したいこと、いっぱいあってね!』


 ……なんだか仰々しい、というかわざとらしい。なんだ、こいつ?

 この少女は何か余計なことをしているようだ。マイカさんが顔を若干引き攣らせながら言う。


『改めて、この子はリブ。ここ箱庭に住んでる異能者よ』

『私たちが建前上、君の後見人になるためには、そんじょそこらの人材が担当だと、お上が認めないのよ』

『それに私が思うに、この子の能力は君とすごく相性がいいから、君がここに慣れるまでお世話係を頼むことにしたの』

「……相性?」


 『試してみる?』いつの間にか少女のピースサインが長く伸び、白い鋭利な刃物になっている。

挿絵(By みてみん)



「…へ?」

『いっくよー!』

読了ありがとうございます。

本作品はカクヨムに先行連載しております。大体1W遅れでなろうに投稿しています。

当面は金土日に1話ずつ更新の予定です。よろしくお願いします。


8/10本文を分かりやすいように推敲しました。設定変更はありません。

挿絵修正しました。参照修正前

挿絵(By みてみん)

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