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トラッシュボックス ~消えたいヒカリと消えないアイツ~  作者: たっきーぷらす


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Box.22 Interlude ~side Hikaru vol.1~

 土曜日の歓迎会の帰り道。『ごめん!せっかくの対面のところ悪いんだけど、ルドちゃん、ちょっと預からせて!色々調べたいの。空飛ぶ能力とか』と言われて、ルドは攫われていった。まぁ仕方ないと思う。僕だって調べたいくらいだ。


 日曜は一日落ち着かなかったし、メールが来てないか何度も確かめてしまった。…意識しすぎだ。


 月曜の朝、リブは迎えに来なかった。来れなくなった、とマイカさんから聞かされた。『週末のやつで、ちょっと疲れたみたいで、まだ寝てるの。念のために医療棟に入院させてるわ』マイカさんからそう聞かされてから、この2日間、僕はずっと頭が同じ場所をぐるぐると回っているような気がしていた。


 リブは同じ歳の白髪で少ししゃべり方が幼いけど、元気な女の子。ちょっと変わっている。って言ったら、ハムスターみたいに頬を膨らませるんだろう。思えば、最初に会った時から距離感がバグっているんじゃないかと思うくらい近かったし、箱庭に来たばかりの僕に、彼女は当たり前のように接してくれた。<お世話係>という立場もあったのかもしれない。

 でもそれは、そもそも彼女が望んだ立場なはずもない。『リブなら、僕の能力で何かあっても死ぬことはないだろう』そんな消極的な理由で選ばれたはずだ。にも拘らず、腫れ物に触るでもなく、ルドを消してしまった僕を飾らず恐れず受け入れてくれた。それがどれほど僕の救いだったか。



 僕は後ろに誰かがいることが苦手だ。理由は分かっている。決まって投げつけられるものは背中からだったからだ。前から投げてくるやつなんていない。皆卑怯だ。

 『一ノ瀬』リブはいつも僕の後ろにいてくれた。振り返って目が合うと嬉しそうに笑ってくれる。少し気持ちは楽になったし、その笑顔に泣きそうになって、慌てて目をそらしたことも一度や二度ではなかった。



 ただの心の傷でしかなかった異能に名前を付けてくれたのもリブだった。—Trash Box—。まだ皆みたいに発動の合図にしたり、叫んだりするのは恥ずかしい。そもそもオートで発動することが多いから、唱える必要が少ないのもある。ルカも『わしの能力も全自動みたいなもんやから、叫ばんで』と言っていた。逆に隼翔くんは、大声で『—Delusion—!!』と叫んでいる。この名前は自分では言ったことは殆どないのに、もうみんな知っている。それだけリブの影響力が強いのだろう。…要らないものを消滅させる、バリアの箱。君が名前を付けてくれた、この能力を好きになる日が来るといいな。



 リブはルドを救ってくれた。ルドを生き返らせてくれた。何でそう出来ると思ったのかは分からない。でもカナエさん達、何人もが協力してくれたこと、『リブがすごく大事そうにお願いしてきた』ことは編音さんや梓さんからも聞いた。

 ルドは大事な親友だ、だけど生き返るんじゃないか、なんて荒唐無稽なことは思ってもいなかった。この痛みは一生背負っていくんだと思っていた。あんなことを<出来る>と思えるのは彼女の無邪気さのためだけなのだろうか。



『私を殺してくれる?』リブの悲痛な叫び。記憶をなくすことも、思い出を失くしながら、ただ永遠に生きるのも嫌だ、という彼女の気持ちは胸に刺さった。でも僕は彼女のことをもっと知りたいと思う。今はただ、いつもの無邪気さで名前を呼んで手を振ってほしい。僕も君に伝えたいことがあるから。



 マイカさんの許可をもらって、夕方に医療棟へお見舞いに来た。

『行ってあげたら、あの子喜ぶと思うわ。…でもヘンなことしちゃだめよ?』

「しませんよ」

『ちょっと言いたかっただけよ。君のドンカンな所は信頼してるから』だそうだ。

『あー行くんだったら、花持って行ってあげて』

『リブの髪の色に合わせたやつ用意したから』といって花束を渡された。


 鈍感…ね。自分ではわかっているつもりなんだけどな。思いながら、聞いていた番号の病室についた。扉をノックしたけど返事はなかった。なのでそーっとドアを開ける。まだ寝てるようだった。以前は僕が寝てるときに、リブも入ってきたんだからお互い様だろう。そっと中に入り、花瓶に受け取った花を挿す。花は白い薔薇だった。


 少し待っていようかな、と思ってベッドの横の椅子に腰を掛ける。もう夕方だ。六月の遅めの夕日が差し込む。カーテンを閉めようと思って立ち上がったときに、椅子が音を立ててしまった。しまった。振り返ると、ベッドの上でリブがゆっくりと体を起こすのが見えた。目が合った——ような気がした。焦点は、まだどこか宙をさまよっている。


「あ、リブおはよう。ってもう夕方だね。朝会えなかったからさ、お見舞いにきたよ」

 僕は笑いかけた。心配はしてたけど、ただの見舞いのつもりだった。

 リブの青い目が焦点を結び、口を開こうとするが直ぐには言葉が出ないようだった。数秒、ようやく一言、言葉を紡いだ。


挿絵(By みてみん)


『…きみは…だれ?』



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