表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トラッシュボックス ~消えたいヒカリと消えないアイツ~  作者: たっきーぷらす


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/27

Box.21 At-Random

「ほんっとタイミングが悪い!」けたたましく鳴る警報音に私は悪態をついた。

「こんなことなら、強心剤MAXで打っておくんだった」

 文句を言いながら警報音を切った。服は着替えてきた。

「ちょっとこのシステム改修しないの?」「箱庭中が睡眠不足よ」

『外の地震やら台風やらの警報の方が、よっぽどけたたましいからな。このくらいは我慢しろ』タローが事もなげに言う。確かに箱庭の中には地震も台風も直接は関係がない。

「あーせっかく、うちの娘がボーイフレンドといいトコだったのに!」

『マイカちゃん…何言ってるの。…やめて』

 おーおー、いっちょ前のよき反応だわ。

 あまりの可愛さにリブを抱きしめてスリスリしていると、燐のやつが現れた


『リブちゃんもお年頃ですね』

『怒るよ?』リブの左手が鋭利な刃物になる。

『別に、応援してるだけですよ』右手も鋭利な刃物になった。

「はいはい、味方同士でやりあわない」


『残念ながら、うちはお前たちの都合で動いてるわけではないからな』

『文句があるなら、さっさと終わらせることだ』

『くれぐれも、この緊急隔離区画から出すなよ?』

「言われなくとも、分かってますって」


 ここは箱庭地下深くの隔離区画。ここにAt-Randomが安置されて3年余り。Factorとの闘いの後に、徐々に衰弱していった元箱庭のトップ、Singularity-00。彼の今わの際はすぐそこだ。


『マイカちゃん、At-Randomって確か…』

「んー私の爺さん、橘創玄。箱庭の基礎を作った人物さ。知ってるでしょ?」

『私の師でもあった人だ』

「じゃぁ私は孫だし、孫弟子みたいなもんね」

「リブから見たら、ひいお爺ちゃんみたいなもんだね」

『いつ、私はお前の師匠になったんだ?』

「えー、タローちゃん冷たい~」

『温めましょうか?』

「タローちゃんの頭、ゆだたまごになっちゃう」

 Contraにやらせたら消し炭だろう。

『すらいすなら、任せて』

 リブ、あんた人の頭スライスしちゃ、だめよ。

『……お前たち少しは緊張しろ』


「緊張してるよ~。私たちで無理なら、世界が滅びるかも、ってぐらいには」

『それ、あながち間違ってませんから、困りますよねぇ』そう、その通りなのだ。



「さて、最後にじぃじに挨拶してくるよ」監視ルームから 緊急隔離区画中央に設けられた治療室に降りる。その中におびただしい数の管につながれた、At-Randomが眠っている。普段いる医療スタッフは、既に退避させた。中に入り、からからに乾いた彼の肌をさする。筋骨隆々で憎たらしいほどだった彼の面影はそこにはない。

「見ててよ、爺さん。あんたの孫はちゃんとやるから」




『さて我々のミッションを確認する。まずFactorに感染した能力者は暴走する』

『創玄は3年前の対Factor討伐の第一功労者だったが、残念ながらFactorに感染してしまった。At-RandomをFactorが取り込むのに3年かかったわけだが、逆にAt-RandomがFactorを抑えてくれた時間、と言えるかもしれん』

「タイムリミットは今日か、日が変わるころか、いずれにせよ間もなくね。過去の事例からすると、Factorの活性化は、取りついた相手が亡くなるタイミングよ」

「とりついた能力が弱すぎて活性化しないこともあるけど…今回に限り、それはないわ」


『次にAt-Randomの能力は分裂だ。最大77体になる各個体は全て実体で、同等の戦闘力を持つ。その中の本物の一体を叩かねば無限に分裂する。そしてFactorは宿主の能力を使う。つまり実質的に、At-Randomと闘うことになる』

『Randomとはよく言ったものです』『質の悪い宝くじみたいですね』

『燐の殲滅能力には期待している』

『マイカはとにかく分体を抑え込め。抑え込んだところで燐が焼き払う。これを基本とする』

『私とリブは討ち漏らしの処理だ』

『リブは燐が固定したものを狙え。そうでないものは私が担当する』

『わかった』

『相当な持久戦も想定しておけ』

『燐次第だね~』

『この施設ごとやってしまえるなら一瞬ですよ』

『それ、マイカちゃん死んじゃうよ?』

 そうね。多分四人の中で、私だけ死んじゃうかな。

『外に逃がすわけにはいかんからな、それはなしだ』


 At-Randomのバイタルサインを示すモニターがアラートを示し始める。

 60…48…32…21…13

「間もなく心拍が停止するわ」…11…8…3…1………0

「6月27日23時42分、御臨終ね」


『…来るぞ』


 金属を爪でひっかくような不快な音が鳴り響く。Factorが宿主の体を作り変える音だ。病室の壁が膨らみひびが入る。


 病室を内側から吹き飛ばし、出てきたのは紫色に変色した元、人であったもの。目は落ちくぼみ、かつて痛めた左脚を引きずりながらうごめいている。

「じぃさん…悪いけど、あんたゾンビ映画みたいだよ」


挿絵(By みてみん)


『さぁ、踏ん張れよ。ここを突破されればFactorが不活化するまで、この世は地獄だ』

 タローは片腕50㎏はある手甲をつけている。相手が人なら一撃で肉塊にできる代物だ。今のFactorはもとの持ち主の力の断片でしかない。だから新たに断片から感染することはないし、作用時間は無限ではない。長くても数日だ。ただ、その数日でもSingularityであれば世界を滅ぼせることが問題だ。


「ゾンビの親戚なんて言われるの、私イヤよ~?」

 ゾンビの群れがどんどん大きく膨らんでいき、部屋の頂上を目指して盛り上がっていく。

『初手から脱出狙いですか?』『賢いですね』

「知性があるかどうかは、宿主次第だけど、爺さん意識なかったから、どうだろうねぇ」

『想定通りだが、数は100ではきかないな』



「さ、いくよ!—Supernova—!!」

 伸ばした赤い巨人の左腕。天井の出口を目指し、蜘蛛の糸にすがるゾンビの群れを薙ぎ払う。

「どんどん行くよ!燐!!」

 巨人の右腕も展開する。おもむろにつかみ上げては燐に向かって投げ上げる。


『雑ですねぇ。まぁ問題ありませんが』

『リブちゃん、氷柱の中に埋めた個体は頼みます』

『ん、了解』


『では』

『爆ぜろ―Contra—』

 爆音とともに膨張する火球が次々にゾンビを飲み込んでいく。


 燐のContraの能力は一言で言うなら<熱力学第二法則の逆転>だ。熱いところから寒いところへ動く熱エネルギーの流れを逆転、何もないところからエネルギーを集約し、高熱を発生させる。同時にエネルギーを奪った場所は冷却される。極めて単純、だけど異常極まりない能力。こんなの術者がまともじゃなければ、世界が壊れてしまう。そして残念ながらこいつはちょっとイカれてる。


『At-Random!なるべく苦しまないように焼き尽くしてあげますよ』

『私からの餞です。感謝して旅立ちなさい』

 溶鉱炉に木片でも放り込むように次々に焼き尽くされる亡者たち。同時に燐の周囲に展開された氷柱が、燐を直接狙いに着た個体を捕えていく。

『あっちはお願いしますよ、お嬢さん』

『—Particle—』

  直接触りたくはないのか、髪を切り離してゾンビに飛ばして頭を打ちぬいていく。ゾンビっぽく見えるだけでゾンビではないので、それで十分みたいだ。


『第4波くるぞ』ものすごいスピードでゾンビたちをなぎ倒しながらタローが叫ぶ。

『これ、結構きりがないですね。ざっと500体は倒しましたが、当たりなしです。本物どこかに隠れていませんか?』

「だとしてもエネルギーを使い切れば、早く終わるから、意味ないわけじゃないよ」

『2時間ごとに交代しながらインターバルとってもいいぞ?』

『もう少ししたら休憩を申請しましょうかね!』



 ———————————2時間が過ぎた。最初の15分間の私の休憩時間だ。分裂体の供給は依然として続いている。マイカちゃんもタローさんもすごい。Contraはもっとすごい。あれだけの火力を出そうとすれば私だと20分も持たない。お腹がすいてうまく能力の調整ができなくなる。

 

『やっぱりきりがないのですけど、本体どこかに隠れていますよね』

『この区画が壊れたらアラートが鳴る仕様だから、外に出ていることはないぞ』

『取り敢えず、あの病室だった場所、焼き払ってもいいですか?』

『ふむ。妥当だな』

『では行ってきます』


 Contraは隔離区画中央に向かって走りながら、大火球を作る。本体があそこにいるなら、この一撃でみっしょん終了だ。


 ふと、マイカちゃんの後ろの氷柱の影が動いた気がした。よく見ると、ゾンビたちが氷柱の裏からマイカちゃん達に近づいている。

「マイカちゃん、後ろ!!」だめだ、人の体のままでは間に合わない。

「—Particle—」全身を粒子化して最大加速、そのまま粒子加速で生じた電撃をゾンビの一団にぶつける。黒焦げになって消えていくゾンビ達。

『リブ!』『なんて無茶を!』マイカちゃんの声だ。あぁ良かった、無事そうだ。

 ゆっくりと、自分の体を構築していく。自分の目ではまだ何も見えない。お腹すいたまま、放電しちゃうと再構築が遅くなる。巨大な火柱が中央から上がる。見えないけど、何となくわかる。爆風とよく分からない電磁波が、私の構築の邪魔をする。


『やはり、あそこに本体が隠れていたみたいですね』

『ゾンビ達、消え始めましたよ』

 そっか。終わったのね。ほっとしたのか、私はそのまま意識を失ってしまった。

『ちょっと、リブ!体、つ…る……えに寝…ダメ!リブ!』

 マイカちゃんの声はよく聞こえなかった。





 ———はっと目が覚めた。どこだろうここ。病室かな。私、寝ちゃってたんだ。


『あ、リブおはよう。ってもう夕方だね。朝会えなかったからさ、お見舞いにきたよ』

 聞き覚えのある、男の子の声だ。

 体を起こして、声の方を見る。ぼやけた目の焦点が合う。私と同じくらいの身長の男の子が立っている。ん?変だな。思い出せない。



「…きみは…だれ?」





25話まで毎日更新中!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ