Box.16 前期中間試験 後編
4階の屋上から見下ろしてくる、白いコートのすかした男。今、夏やぞ?迷彩服も大概熱いけどな。わざわざコート来とるやつの気がしれん。
『君たち、後ろのお友達を放っといていいの?』
…通信は生きとるから状況は分かっとる。ヒカルと敵がサシになっとる。リブは放っといても負けはせんやろ。逆に殺してしまう前に止めなあかん。いずれにせよ、こいつに手の内は開かせへん。
「うっさいわ、ここに3人おるんは分かっとる。」
「インターバル中の大砲と、索敵役とあんた。実質戦えるのはあんた一人や。わしらのどっちかで押さえて、中の戦力外を拘束したら、しまいや。」
『…全部で5人ってバレてるのか。知らなかったな。やってくれたね』
…諜報のことか?まぁええわ。
『取り敢えず、二人で来ることをお勧めするよ』
右手から火の玉。…火炎能力や。
———1時間前。わしと大和が隊長たちに呼ばれた。
「Contra?」
『そう』『画像の中でそう言っていた』梓が忠告してきた。
『ほら』巧がタブレットを再生する。
『能力に名前を付けるのって、箱庭の伝統なんだけど』
「そうなん?」『そうらしいぞ』
『外の人って名前つけてなかったり。もちろん付けてることもあるけど』
『ほら、名前があるほうがイメージしやすい、っていう』
「マイカさんのいつものアレ、やな」
『そうそう。で、箱庭のデータバンクには、箱庭が関わったとか観測した能力が全部登録されている』
『私が覗き込んだよん』まぁ編音(お前)やろ思たわ。
『その中でもランク付けがあって、SSSからDランク』
『SSSなんて数えるほどしかないから。ほらこんな感じ』
梓は自分の指を、わしと大和のでこに当てて、記憶を流し込んできた。
「SSSランク At-Random……Contra……Cosmic-Velocity……Factor…………Particle…Plant…Supernova…Thanatos……」
「ん?Particleがおるやん?」
『そう、敵はリブと同ランクの能力の可能性がある』カナエが言う。
『まぁ十中八九、ブラフで名乗っているだけだと思うけど。油断しないで』
『敵が炎を使ってきたら要注意よ。まともに相手しないこと』
つーか、リブは最高ランクやったんか。道理でとんでもないわけや。
——まずいのぅ。逃げるか?いや、二射目を打たれたら誰かはやられる。
「大和、行きや。」「わしがここを抑える」
「そのすきにこの建物、壊してしまえ」
『ふむ。相手は格上。それしかないか』
「わしを屋上まで投げ上げろ。そしたら気にせず、やりや」
『了解した』
『……ぬぅぅううりゃぁ!』
屋上まで飛び上がる。その隙をこいつは見逃さんやろ。
『いい的だね』飛んでくる火玉
「ここや!」―Transcendence—の超反応で体を限界までひねり、反動で身をかわす。
『!?、やるね!お見事!』
着地と同時に轟音が響く。ナイスや、大和。崩れる建物。これで砲台の射線は取れへん。わしは瓦礫を踏み台にできるが、こいつは無理やろ。そのまま潰れて、しまいや。
ゴゴゴゴゴゴ―――――ン。濛々と立ち込める土煙。
「3キルしてしもうたか」「補習確定やな」
『大丈夫。減点の心配はいらないよ』「!!?」
…なんやこれ、白コートを覆うお日様みたいな輪っかが周りの瓦礫を溶かしとる。
『あっちから直に仲間が帰ってくる。積み、だね』
「は、なめんなや!うちにはまだまだゴリラも電気ウナギもおるんや」
轟音とともに崩れる建物をみてもこいつは動じない。あっちに残っているやつを信頼しているんだ。朝霧君の能力は強いけど、彼はきっと人を傷つけられない。再生能力持ちじゃ、相手も肉体の消失を気にしない。防戦一方になって時間切れになる。プリヤは…駄目だ。完全に腰を抜かしている。「せめて何か補助をして!」『は、はいぃ』
…私がやるしかない。腰のバックパックから二丁のククリ刀を取り出す。
「B班、聞こえる?楊のConnectionが現状の要よ。隼翔、何があっても守って」
『御意。…頑張る。』ぎょい?
「ちょっと集中するから、少し通信できなくなるわよ」「梓、少し任せる」
「—Transfer—mode Trans—」私の奥の手だ。
最低限の握力を残して、筋力を脚に振る。…加速からの…跳躍!
「おおおぉりゃあああぁぁ!!!」
『カナエさん!?』
「朝霧君、何でもいい、こいつを転ばして!」
『分かった!』朝霧君のタックルでバランスを崩された男は、そのまま倒れこむ。
そのまま全筋力を右腕に集中!再生男の左肩ごと地面に串刺しにした。
『うぎゃぁぁぁぁ!』男は叫ぶが、意に介さず右肩も串刺しにする。
『ぎゃああぁぁぁ!』
「再生能力が勝手に肉を再生するから、固まってしまいます。」
「ついでに両手の神経を切断しておきました。これで動けませんね」にこっ。
これやると、すごい筋肉痛で動けなくなるのよね。だから奥の手。誰かがゴリラって言ったような気がしたけど、気のせいね。
———すごい。もう3分以上リブの全方位攻撃を剣一本でいなし続けてる。単純に動きがすごく速い。梓や巧の身体能力じゃどうしようもないねー。
『いやはや、すさまじい攻撃ですね。—Acceleration—がなければ瞬殺でした』
『むー』リブもなかなか決めきれないから不機嫌そうだ。しゃあない。
「リブ、手伝うよ」
『あなた、どう見ても戦闘要員ではないでしょう。怪我しますよ。』
「このままだと、あのレーザーがまた来る。リブはやられないけど、私たちは死んじゃうからね」「ここはやるとこさ」
「ってことでリブ、あと10秒頑張って」
『分かった。任せて』
ふぅ。—Resonance—全接続off。電圧充填モードへ移行。Charge開始。
「…3、…2、…1、…ゼロ。—Excitation—」
Resonanceで放出していた電気を体内に留める。髪がバチバチと放電する。視界が白くはじける。あー、とてもいぃ。今の私は最強だ。
「…Dischargement」
『うおおぁぁぁぉぁおあぁおおおもおぁぁぁ』
指先から放たれた雷に打たれ、ぶすぶすと煙を上げながら、男は倒れた。
「—Resonance—の能力の本質は電気。電気信号で機械を操るから…」
「だから私は、電気人間なの」
でも再充電までしばらく―Resonance―は使えなくなるけどね。
『お疲れさま、助かった』倒れそうな私をリブが支えてくれた。
「このばちばちっての、リブ見て考えたんだよ、すごいっしょ?」
『うん、すごかった』
『アヤ~すごかったすごかった。助かったよ~』
アズのテンションが見たこと無いくらい高い。ピョンピョン飛び跳ねている。画像保存できないのが残念だ。
『巧、悪いけど、肩貸して。練習不足だ。体しびれてる』
『あぁ、よく頑張ったよ』巧が褒めてくれた。珍しい。
『強くなったな』あら、今日雷でも鳴るのかな?
—————「うちのヒカルみたいなバリア、これも、あんたの熱の能力かいな」
『あのバリア君はヒカルというのか。…あぁ—Contra—はね、単純な熱の能力じゃないんだ。ほら?』
土煙が晴れてきた。白コートが指さす方向に巨大な氷柱。崩れる建物を支えとる上に、氷柱の上から男が二人こっちを見とる。大和は…二人の間で倒れとる。……やられた。
『勝負あり、かな』ちっ誰かそろそろ助けにこんかい。
『では、一勝二敗で君たちの勝ち、だ』
「あ?」なんやて?
パチパチパチぱちぱち。氷柱の上の二人も拍手しとる。状況が理解できん。
『いや、いいね!君たち合格だよ!』
『いやーお兄さん、君たち大好きになっちゃたなぁ!』この白コート、さっきと別人か?
『これでゲームセットだ!』
砦の跡から花火があがる。4,5,6…11発。
―――――僕らはなぜか闘っていた相手から試験終了を伝えられ、予定より早くヘリがやってきた。
『あー、テステス、聞こえるーみんなー』マイカさんの声だ。
『おつかれおつかれー。よく出来ました』下りてきたマイカさんの後ろにはやけにガタイのいいサングラスをかけた男がいる。気が付くと、ヘリが下りた場所に全員集められていた。
「何が起こったんだ?」
…白コートの人と親しげに話すマイカさん。お互いに軽く腹パンチなんかしている。
『先生、どういうことですか?』隊長が横たわったまま聞く。
『えー。今回の相手は皆、他校の先生よ。かわいいうちの子たちに、しょっぱなから犯罪者当てるわけないじゃなーい?』
やられた。隊長も梓さんも唖然とした表情をしている。編音さんも、ルカもだ。
リブは…特にリアクションが無い。まさか「知ってた?」
『どこかで見たなーって思ってた』
『死ぬかと思いましたがね』と加速の人。
『肩でなく頭を切られていたら、死んでたよ』と再生の人。
『砦壊されたときは、脚がくがくだったんだな』と索敵の人。
『花火きれいだったでしょ』とRoman砲の人。
『はーい。皆お疲れ様。試験結果は追って伝えます』
『皆、疲れただろうから、明日は授業をお休みにします』皆、弱弱しく歓声を上げた。
『週末はヒカルの歓迎会だから、お楽しみにね』ありがとうございます。
『何か質問はある?』質問しかないけど、思考が追い付いていないです。
『あのー?』
『先生、トイレどこ?』
誰も返事をしない中、真っ青な顔した隼翔君が挙手した。まさか朝からずっと…
25話まで連日更新中。
4,6,11話に挿絵追加しました。
イラスト作って気が付いたのですが、カナエは栗色の髪です。編音は短髪黒髪。梓は長髪黒髪眼鏡の子ですね。
写真2枚とも背景間違ってますね。まぁいいか。




