Box.15 前期中間試験 中編
『こんなこと言ってるよ』連中の会話は—Resonance—と—Providence—の合わせ技で完全に筒抜けになっている。スマホから衛星通信にリンクしたResonanceが相手の端末にも接続、Providenceがハッキングして、もうカメラから相手の顔も見えている。
『SNS社会の弊害だよね』君たちがいるなんて、一般人は考えてないからね。
『どこにでもカメラがあるからねー』普段自撮りしているカメラが、自分たちを覗いているなんて考えながら生活する人はいないよ。
現在10:30。
『朝霧君のおかげで歩きやすかったから、行軍は思ったより早かったけど…』
『どうしようかしら。索敵能力がある敵は予定外ね』
水を飲みながら委員長。
『足音でも聞いているのか、それとも地面に広範囲の網でも張っているのか、いずれにせよ精度はいまいちだと思うけど、どうする?』梓さんが応じる。
『能力が分からないから、ジャミングできるかわからないよー。機械じゃなくて、鳥でも操っていたら私も巧もお手上げ』こちらは編音さん。
『向こうは、こちらが気付いていることに気付いていないようだから、それをばらすのは得策ではないわ』
『なら部隊を隠してもしょうがないし、A, B班で正面突破ね』
『C班は少し離れたところで待機。非常時にはリブを遊撃に出して』
『撤退、撤収の判断は、梓に任せるわ』
『了解、隊長』
さっきからドスンドスンとすごい音がしている。大和君だ。
『簡易トイレを作ってみたぞ?』『使うか?』
お手製の土塁を高く積んで、確かに外からは見えないかもしれないけど。
『敵が音聞いてるかもしれないのに、やだー』と編音さん。そりゃそうだ。
『しゃーないのぅ』
『せっかくやし楊、連れションや』
『そうデスね』
まぁしゃあない。女子にはきついと思うよ、これ。結局、男子4人の友情が育まれた。巧くんと、隼翔は…どこかで済ましたのかな。
……………と言ったものの、やばやばやば。編音ちゃん一生の不覚。これはトイレをしとかないとまずいやつだぜ。せめて男子が使う前に行けばよかった。あー意識したらもう無理。これ以上は―Resonance―の維持が出来ない~!
「か、かなえ、助けて…」せめて私を隠して。
『…仕方ないわね。ちょっと編音、お腹出しなさい』
「え、えぇぇここでぇ?」
『いいから。服汚れるわよ』『見えないようにするから!』
背に腹は代えられない。大人しくおへそを出す。おへその下に左手をかざすカナエ。
『—Transfer—』
『え、え、え。おおおぉぉぉ』尿意がすっきり取れた。なんだこれ?トイレの女神様?
あ……なんだそれ、まさか、それは!?
カナエの右手の上にふよふよとしたスライムのような固まり。口角だけ挙げて薄く笑うカナエ。まさか、まさか私の尿意様!?
ひょいっ!ばしゃ!女神様に投げられ、砕け散る尿意様。
「ちょ、ちょちょちょっと!せめて。もう少し遠くに投げてよー!」
『臭いは分解して、散らしておいたから大丈夫』
「そ、そそういうもんじゃないでしょー!?」
『ほら、プリヤ、梓も処理しとく?』
『助かります~川の中でしようかと思っていました』…ガンジス川か。
『私はいいけど…お願いしとく方が合理的ね』
そして二人の尿意様は、崖下に投げ捨てられた。リブもカナエと同じようなことを自分でしているらしく、何かを遠くへ投げていた。
なんだか、あっち側には行きにくいので、簡易トイレの外側で僕たちは待機している。
大和君がつぶやく『なんだか煽情的だ、な!』
『お前そんなこと言うとったら、刻まれるで?』と、ルカ。
『通信をOnにして確認を取るわけにもいきまセン』楊は今、通信を切っている。
『それしたら、世界中にあることないこと全部ばらまかれて、社会的に抹殺やろなぁ』
…いい天気だ。雨でも降らないかな。そうすれば全部、分からなくなる。
『さて出発するわよ』
軽食も済まし、委員長改め隊長の号令で11:00改めて出発した。
『このままのペースだと12時前には会敵する』梓さんが続ける。
『あの建物が砦や城だとすれば、私たちがやるのは攻城戦』
『敵が遠距離攻撃の方法を持っていれば、高低差と地の利で一方的に不利になる』
『箱庭は、私たちならやれる、と思ったんでしょ?』
編音さんは立ち直ったみたいだ。
『なら相手の能力くらい把握してないの?』
『きっと、それじゃ試験にならないんですよ』
『人数が分かるだけでもラッキーです』
——B班『女子は楽しそうだな』
『大和君、拗ねてまセンか?』『拗ねとらん』
『僕は楽しい…けどね』隼翔は、ずっと大和君の肩の上に座っている。大和君の能力で重くはないんだろう。今日のフードは角がついていない。そういえば『そんな角付けてたら、木に引っかかるでしょ?』ってマイカさんに取り上げられたな。
1138、砦まで約400mのところまで来た。ここから3班が進路を分かれる予定だ。
その時、砦の窓の奥が光った。
『砲撃よ!全員構えて!』
「僕の後ろに!」全開で広範囲に防壁を展開する。
『何ちゅう火力や』僕らの周囲50m四方がレーザーで焼き払われた。一瞬で樹海の一部が消し飛び、黒く焼け焦げていた。
『落ち着いて!皆無事よ』
『まず朝霧君のおかげで助かったわ。ありがとう』「いえ」
『でも索敵が出来る敵が、この距離でこの大火力を打ってきたってことは、ここで チームを一網打尽にするため、つまり連射が効かない可能性が高い!』
『そうか!攻め時ということだな!』『ほな一気に行くで!』
大和君、ルカの二人は建物に向かって駆け出した。
『こら~!あほ二人!!!』隊長も余裕が無さそうだ。
——ルカがいなくなったA班、
『————随分高性能なバリアだな』
燃え残った木の上から降ってきた男が繰り出してきた重力を乗せたパンチは、僕に当たる前に消失した。と同時に着地した脚はひしゃげてしまっている。なんだこいつ、もう戦えないだろ?思っていると、男は器用に片手片足で僕から距離を取り、続けた。
『俺の能力は—Regenerate—、まぁ心配はいらん』
一瞬で腕が元に戻り、ぐにゃぐにゃの脚の中に芯が通り、砕けたはずのつま先でトントンとステップを踏む。やばい。ルカはどっか行ったぞ。僕が相手しないと…。
——後方C班、
『知ってますよ、お嬢ちゃん、あなたはこの界隈じゃ有名です。リブちゃんでしたっけ?』
「なんで私を知ってるの?」
『有名だと言ったでしょ?』
「だから、なんで?」
『私たちの仲間をたくさん捕まえているでしょう?』
「それで、何であなたが私を知ってるの?」
『…白い死神さん、あなた大分ふざけた性格なんですね?』
『知らなかったの?』『リブは大まじめで、あの性格なのよ』
梓がまじめって、褒めてくれた。
『あなたに勝てるとは思っていません。私の仕事は、あくまで時間稼ぎです』
「ふーん」でもそれは一緒だね。ルカ達が砲台を押さえれば私たちの勝ちだ。
右手と髪を硬質化する。
「殺しちゃダメって、マイカちゃんが言ってたから、頭と体を分けておいてあげるね」
『…それで死なない人、いないでしょう。恐ろしいこと言いますね』
——砦の上、白いコートを着た男が呟く。
『うーん、—Footstep—と—Roman—を守らないといけないからなぁ。しばらく待機、か』
『向かってきているのは、見るからにパワータイプとスピードタイプだなぁ』
『5分間、バリア君を抑えれば、第二射で半分は持っていけるな』
『はてさてどうするのが正解か、な?』
毎日更新中!
11話に挿絵追加しました。
今回はツワモノ巻を出したくて、白コートでオールバックって言ったら、藍染惣右介みたいになってしまった、章ボスさん。




