Box.11 カブ戦士あやねちゃん
こんにちはプリヤです。えっと今日は先日お借りしたクレジットカードを放課後、編音ちゃんに返しに来ました。編音ちゃんは寮生ではありません。研究棟の地下に住んでいます。ひろーい部屋で、高級旅館みたいに部屋の下に、きれいな川が流れています。川の底には白い大きな箱が何個も並んでいて、そこから何本も太いケーブルが編音ちゃん家のリビングにつながっています。
「ありがとうございました。良い買い物が出来ました」
『いいってことよー。』『でさ、ちょっとこのあと付き合わない?』
え、え、え、百合はちょっと心の準備が…。
『—Fortune—の力を貸してほしくてさ』
あ、そうですか。わかりました。
「晩御飯おごるから、さ」わーい、ラッキーです。
「あら、巧君」
『楊もいるよ』あらあらあらあら。
「さて、諸君―」「よくぞ我が家に集まってくれた」
宅配ピザを掲げながら皆に呼びかける。
『ルインちゃんみたいなしゃべり方ですね』
「ルイ?ルカのこと?あいつは呼んでないよ。キータッチは早いかもだけど。」
『あ、何でもないです』
「今日はねー綾音ちゃんプレゼンス、皆でお金持ちになっちゃおーの会!」
『おー』野郎どもが声を合わせる。
「いま日本は21時!この後アメリカの株式市場が開く」
そこに本日、推定起業価値、世界三位の超ド級企業の<Spade Z>がIPOの売り出しを始める!売り出し価格は不明。
「だけど、我々には秘策がある!」
「楊、SpadeのCEOが何考えてるか読めるか!」
『いる場所が分かれば…読めますけど。ただ、これ犯罪じゃないですか』
「大丈夫!だからこそ、異能者に法律が追いつくまで待ってられない。我々がやることは、売り出し価格ギリギリでの発注と、株の大量保有を計画している企業の発注額を事前に把握し、すんでのところで売り抜けることだ!名付けて<外から覗こうインサイダー作戦>!」
『いやいやいや。響き的にそれ、すっごくまずいと思いますよ』
「あ、そう?じゃあ楊は私たちの思考を繋いでくれるだけでいいや。タイミング勝負だからね」
『個人の大規模投資家の狙いをみれば?』巧が手を挙げる。
『僕が—Providence—でネットにダイブすれば、そういう連中どうしのメールのやり取りは見れるよ』
「そいつらがどこにいるのか分かる?」
『ネットにつないでいれば余裕だよ。もし取引してなければ分からないけど、こんなの一枚噛まないはずないと思うしね。』
「…」
『……』
「………」
『…………』
『よし、作戦は決まった!楊がテレパシーで全員の判断を同期、私がネットワークに直接介入、プリヤがFortuneで確率を底上げ。念のため巧は大手ファンドの動きを警戒だ!』
やれやれ、何とか表に出ず、意思疎通をつなぐだけの裏方でしのげそうデスね。ワタシが逮捕されるとか論外ですよ。裏方に徹して5%でも分け前を頂ければ十分です。それにしても—Providence—と—Resonance—これほど相性がよく、両者がとんでもない組み合わせをワタシは知りません。
『指値は、一株135$、250万株!54億円でいくよ!』『倍に増やすよ!』
編音サンが気勢を上げています。
『CEOの端末見つけたよ。当たり前かもだけど、画面に張り付いてる。』
巧のOracleは全世界のインターネット通信に瞬時にアクセスできる能力デス。巧の情報の拾い上げのセンスもずば抜けていますので、必要な情報と端末に瞬時にたどり着けます。彼がその気になれば、世界は核戦争待ったなしデス。
『画面見えてるから—Connection—使わなくても大丈夫だよ』それはラッキーデス。
『初値が予想より高く始まりそうだ。指値はどうする?』
『楊、板の厚さは?』
「売り板が薄いデス……というか、薄すぎませんか?これ」
ワタシは趣味でトレーダーをしています。中国では未成年もできるのデス。
『みんなが我先に買ってる証拠だ。逆に言えば、今が一番安い』
『CEOの通信、ずっと「150ドルは固い」って繰り返してるよ』
『150ドルが心理的な防衛ラインってことか』
『楊、もう一押し。今の発注、本物か確認して。日本からだ』
え、ワタシ噛むんですか?仕方ないデスね。ワタシの—Connection—は許可を得た方へ、思考の接続能力いわゆるテレパシーを付与できますが、傍受だけなら許可はいりませんし、自分だけとなら相手の場所がわかれば、地球の裏側でも接続できます。
『……本物デス。でも、これ僕がやってること、絶対犯罪デスよね』
「…異能者には適用されないって、タローさんが言ってた」
『…言ってないデショ?』
『+40%。ここで売る?』巧君が思わず声を出しました。
『まだ伸びる。巧、機関の追加発注ある?』
『あるよ。まだ買ってる』
『よし、引っ張る』
強すぎる度胸。この度胸にも根拠があるはずデス。編音サンの―Resonance―は御自分がルーターになって世界中のあらゆる機器と接続できる能力デス。当然AIサーバーとも接続できます。この家の下には巨大なデータセンターがあります。そこと常時接続しながら、自分でも膨大な情報を学びつつ、AIによる判断とも連携しているはずデス。
「うーん」
楊君は私にもテレパシーを繋いでくれているのですが、綾音ちゃんたちが何を言っているのかは正直よく分かりません。ですが、良くないことをやっているようなことは分かります。なので、良くないことが起こる確率を下げます!あっちにもこっちにも手当たり次第に!
『プリヤ、ここが勝負所!Fortuneお願い。株上がれって!』
「わかりました!」分かっていません。分からないから、みんな幸せにな~れ。
『…え、なんで?世界中の株が上がっているんだけど。』巧君も、
『ありえない。そんな突っ込むお金どこにあるの?』編音ちゃんも慌てています。
『+60%!含み益30億円!』
さ、さんじゅうおく?なんだかきがとおくなってきました。
「まずいまずい。プリヤが失神したらFortuneが切れる!」「仕方ない、ここで売るよ!」
『了解』
後日、マイカさんに私たちは呼び出された。クラス担任としてではなく、箱庭の施設長室だ。後ろには珍しくタローさんまでいる。こりゃまずいやつだ。
『箱庭のIPから大量の注文が出てるって、証券会社から照会が来たんだけど』
怒られるかと思いきや
『編音、他の3人、諸々ごまかしといてあげるから今回の利益、箱庭の運営費に入れなさい。それで許してあげる。もう2度としちゃだめよ』
帰り道、
『結局、ばれて召し上げられちゃったじゃない』巧が不満げに言う。『…30億』
『そうデスよ、今回捕まらなかったのが、ただラッキーだったんデス。』
『まぁまぁ。それじゃ皆ラッキーにしましょう』
「ふふ。しょうがないなぁ。はい。3人とも。今回ありがとね」小切手を渡す。
三人とも目を白黒させている。この顔。ネットにさらしたいくらい。
「今回、裏で普通に株取引してたからね。そのお金」
「Fortuneあったら、株が上がるか下がるか間違わないからねー。無敵無敵!」
「さ、焼き肉でも食べに行こ!」
『わーい。お肉、お肉』プリヤって牛肉食べれるんだっけ?
『姉御!一生ついていきます。』一生はやだなぁ。
『なんか負けた気がする。悔しい』にひひ。
「さ、ぱーっとやろっか」
天堂編音: 口座残高 00,000,000,000円(印字出来ません)
評価損益 +8,308,440円 (……4等分)
挿絵追加しました。
物語の舞台になってる日付は決めてましたが、AIにバレてる?どこからだろ。怖。
一応、月齢とかも合せてるつもりです。




