Box.10 ラッキーガールと破壊魔王
こんにちは。プリヤです。突然ですが、私の能力は—Fortune—と言います。何かが起こる確率を2倍にしたり半分にしたりすることができます。自分で操作しなければ、4倍から1/4にできますがランダムになります。一度能力をかけたものには、翌日になるまで二度と能力をかけられません。朝起きるとリセットされている感じです。つまり重ねがけは出来ません。お父さんから、一日百善っていう日本の言葉を聞きました。だから、毎日100個ぐらいラッキーにしているので、対象の数の制限はないんじゃないかと思っています。
この能力のおかげで、私は道に迷ったことがありません。内緒ですが、テストでも良い点が取れます。私はインドと日本のハーフですが、日本で生まれ育ちましたので、日本語しか話せません。趣味はアニメ鑑賞と、聖地巡礼です。日本にはたくさん聖地があります。
あとカレーは…リブちゃんとかカナエに食べさせられることが多いんですが、実は辛いの苦手なんです。
今日は中路くんと、来週末のヒカル君の歓迎会の買い出しです。中路君はいつもフードを深くかぶっています。今日は角がついたフードです。可愛い。サリーを着ることが多い私とは、服装が似ています。黒いマスクを着けていることも多いです。腕に包帯を巻いていますが、以前に『ぼくの、てぃを……いた…め…ふしょう』っておっしゃっていました。怪我とかやけどの後遺症かもしれません。喉が弱そうで、マスクを着けていますから声が小さく、ぽそぽそと話をすることが多いです。私が聞こえないと申し訳ないですから、いつものように私に彼の声が聞こえる確率を2倍にしましょう。それから、彼が言葉を噛んだり詰まったりする確率を半分にしておきます。私が良い物を見つける確率も2倍にしておきましょう。これで今日のショッピングはウキウキです。
やぁ諸君。我は破壊魔王、ルイン・デストロイの化身。世を忍ぶ仮初の姿として、中路隼翔として顕現しておるのだ。今日は忠実なる我が右腕、プリヤと共に、新たな魔王の眷属の誕生を祝うためのミサの準備に来た。我が魔王であることはまだ、下々に知られてはならぬ故、顔を隠し、口を隠し、腕には重霊封印の帯を巻かねばならぬ。この帯の内には『地獄の帝王との激しい戦いのための負傷』があり、傷口から魔力が噴き出ているので、封印を施しておる。それでもなお我が力は現世に漏れ出し、異形の角となって、頭からもたげておる。更に更に封印を強めねば。さもなければ我の歩く地面は融解し、半径500mは暴風が吹きすさぶ。吐く言霊は呪言となり、同胞もろともその命を奪ってしまうだろう。だが、まだ我が存在を知られるわけにはいかぬのだ。努々忘れぬよう。
「えっと、プリちゃん、今日はどこに行くの?」我は無能を演じる必要がある。
『取り敢えず、ですね。箱庭の物資搬入口に行って、頼んでいたものを受け取ります』
地獄の窯の入口へ向かうと申すか。やるではないか。
『その後、ヒカル君へのプレゼント探しです。掘り出し物があるといいですね』
「プリちゃん、いつもいいもの見つけるよね~」
我が千里眼をしのぐ能力。こればプリヤが我の右腕である理由の一つだ。
「われ…てるもの…には気を付けないと、」おっと瘴気が漏れるところであった。
『割れてるものなんて買いませんよ~』『私はラッキーですから』
『ヒカル君、引っ越したばっかりだから、プレゼントは生活雑貨とか良いと思うんですけど、お皿とか割れてもいいように買っておいてもいいかもしれませんね』
箱庭の物資搬入口で、頼んでいたものを受け取るプリちゃん。ごそごそ。
『はい、ハヤト君』お、何だ?ほう、これは我に奉ずる新しい王冠か?
「ろうそくがついた眼鏡?」なるほど、我が冷たい視線に耐えがたいというわけか。
『後はやっぱりお皿を買いましょう。皆の分が無いかもしれませんし、使ったら、洗ってそのまま差し上げればいいんです』大盤振る舞いというやつだな。よかろう。
「楽しそうだね」我も今日の演技は、かなり調子がいい。
『ハヤト君と、お買い物するの大好きですよ』
『変わったものが良く見つかるんです』ふはははは、こやつ憂いことを言いおる。
あー、お買い物は楽しいですね。今日は編音ちゃんから軍資金をいっぱいもらっています。
昨日のラッキーが効いていたみたいで、『好きなもの買っておいで』なんて、言ってクレジットカードを昨日貸してくれました。オラ、ワクワクして、物欲が止まらなくなってしまいます。でもあの子なんだかすごくお金持ちなんですよね。箱庭のネットワークはあの子の能力で持ってる、って聞いたことがあります。いいなぁ。
「次は、ケーキの注文ですね。ヒカル君は何のケーキが好きでしょうか。」
『昨日はよ、こになって寝ていたから』分かりませんよね。
『漆黒…のチョコ…キとかかな?』チョコケーキですね、分かりましたよ。漆黒?
「ダークチョコですか?」ダークチョコのケーキ?
『あぁ…うん』
「なるほど、甘さ控えめチョコケーキですか」それっておいしいんですかね?
「では、私たちは普通のケーキを買いましょう。ヒカル君はヒカル君のを買います」
うん、会話のキャッチボールがいい感じです。
そろそろ荷物がいっぱいです。大和君を連れてくれば良かったです。大和君に会う確率を二倍にしてみましたが、出会えません。確率ゼロを2倍にしてもゼロですからね。仕方ありません。
二人でアイスを食べながら、ショッピングモールから出てきました。あら、出口で車が事故を起こしています。珍しいですね。箱庭には警察がいませんから、施設の防犯部が対応するまで待つしかありません。けが人はいないようですが…。ここにいる皆が異能者ではありません。普通の人も働いています。火事が起きないように対応しないと。火事になる確率を半分にしても、心もとないですね。と思っているうちに、何かに引火したみたいです、火の手が上がりました。急がないと火事になります。
「ハヤト君、何とかしておきましょう。」
…よかろう。ここで騒ぎを起こすのは我が本意ではない。幸い人目も少ない。
「我に捧げた贄の代価に力を貸すのはやぶさかではないな。」
『お、来ましたね』
「—Delusion—これより我が唱える言葉は、顕現する」
「出でよ、破壊魔王ルイン・デストロイ」ふふふふはははははは、我、現れたり。
なんだなんだ、あの鉄の塊をどうにかするのか?
「炎を冷滅せよ。地獄の牛車をその絶対零度で封ぜよ!」たやすいことだ。
「コキュートスの冷獄に沈むが良い」ガガガガガガ、パキーン。
『ルインちゃん、すごいです。一瞬で、車が火事ごと凍っちゃいました』
『なんだか寒くなっちゃったね』
「あー今日もルインちゃんに助けられましたね」ラッキーでした。
破壊魔王さんって、落とし物探してくれたり、高いところのもの取ってくれたり、いろいろ便利なんですよね。でもひょっとしなくても、リブちゃんより強いと思うんです。この子。
あ、あそこにいるのは大和君では?ラッキーです。
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