偽りのお付き合い
古民家を改造した古風なカフェで、優雅に過ごしたいのに、目の前に泣いている男とこっちに何かを訴えるような顔で見つめてくる。
「美紀がね、別れたいって」
「そうなんだ。よかったね」
「何がよかっただよ」
「ごめん」
義弟の吉弥がボロボロと涙を流している。なぜ、そんなに美紀という人物が好きなの分からない。
「なんで、そんな話になったの?」
「好きな人がいるし、もう僕に飽きったって」
「そこまで言われても、まだ美紀って子が好きなの?」
うんと首を縦に振られた。これ以上何も言いうことができない。付き合っているというより、美紀は金目当てで近づいているような女だ。旅行に行きたいと言われ、一緒に行くが旅費はすべて、吉弥がすべて支払っていた。それもホテルの部屋は別々にしてほしいと言われたらしい。服や鞄など色んな物を欲しがって、買い与えていた。それに、吉弥は美紀から何かを貰ったことは一度もないらしい。それで付き合ってというのだろうか。都合いいように使われることに気づきもしないのはどうかと思うが。メソメソと頼りのない男だ。
「お兄ちゃんに言わないでね」
「分かってるよ」
「本当に言わないでね」
面倒くさい、そんなに夫の達樹が怖いのか。ただ、もうすべて達樹は知っているのだ。美紀が吉弥に騙した金を貸してもらうために、達樹は男に頼んで、美紀を騙して使ったお金のメッセージや電話の音声データを取っていた。証拠はそろって、警察に届け出もすで提出している。 もうすぐ、美紀は逮捕されるだろう。
「ねえ、美紀って逮捕されるのかな?」
「知ってたの?」
「お兄ちゃん、怒ってたし、金を貸してもらえと何度言われたから」
「当たり前でしょう。あなたが達樹からお金を借りていただから」
「そうなんだけど…」
「もう、終わりにしてね。こちらも迷惑なので」
「はい。でも…」
吉弥の曖昧な言動に苛立っていく。今まであまり人から頼られることがなかったから、美紀に頼まれてと嬉しくなってしまったのだろうが、自分自身で解決できるならいいが、こちらまで迷惑を被られるのは話は別だ。
「本当にさあ、美紀には近づかない方がいいから」
そんなこと言っても未練がましいく「でも」という吉弥に、困ってしまう。ここで他の女性を紹介すればいいのだろうが、検討できる女性が見当たらない。美紀に金目当てで近づかれても、なんでここまで勘違いできるのか不思議だ。吉弥が下を向いて、スマホが見ている。
「貸して」
「ダメです。」
吉弥はスマホを隠すようにカバンに入れた。絶対に美紀から連絡が来たのだろう。
「美紀にお金を貸したら、どうなる分ってるよね?」
「連絡をしてきた相手は美紀じゃありません」
「勝手にすれば、現金一円も持っていないくせいに」
「そうですね。では、僕はここで失礼します」
スマホが鳴って、画面を見ると、達樹からだった。美紀が捕まって、警察に連行されたらしい。
「美紀が警察に捕まったんだ。保釈金頼まれた?」
「違います。」
吉弥がこっちを見てる。
「座って」
「ダメです。美紀が」
「もういい加減してくれない。私たち夫婦に迷惑かけて楽しい?」
「かけてません。」
「達樹に怒られて」
吉弥は椅子に座った。なぜだろう。本当に達樹ってそんなに怖いのだろうかと思う。偽りの恋愛から目を覚ましてほしい。




