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傲慢な住処  作者: 一色 サラ


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8/12

拒絶の匙

目を覚ますと、病室のベッドで横たわっていた。天井を眺めるとただ白く広かった。腰のあたりが痛い。

昨日、山野に腰を刺された。お前ってきもいんだよ。自分中心で生きてると思っているの?と言われた。そんなことはない。私はまじめに生きている。嫌がらせをしてきたのは山野の方だ。昨日、その痛い腰を抑えながら、110番をして、警察に呼んで救急車も来てくれて病院に着くことができた。

「水野さん、腰の方は大丈夫ですか?」

 看護師にやってきた。

「はい」

「そうですか。2.3日入院してもらってます」

「2、3日って、短くないですか。傷は閉じますか?」

「はい、医師からそのように聞いております。では」

 引き止めようとしたが、隣にいるおばあさんのベッドの方へ行ってしまった。起き上がって、話の続きをしたが、痛くて動けなった。しばらくして、看護師の声が聞こえなくなった。

「痛そうだね。大丈夫かい?」

隣のおばあさんが言った。

「痛いです。山野を訴えます。なんで、私が刺されないといけないのでしょうか」

「そう、大変だね」

 おばあさんの声が聞こえて来た。

「私は25歳ですが、昔から人に嫌がらせをされる人生です。大学生の時に部屋のベランダから盗撮されて、大量の写真がネットに流出されました。その時も腹が立ちました。相手は謝ってくれませんでした。『ざまあみろ』と言われました」

「それはひどいわね」

「そうです。ひどいです。人は私の邪魔ばかりをしてくる。本当に失礼です」

「そう」

「山野にしても、ひどいです。あの人が悪いから、解雇されたのにすべて私が悪いと言ってくるのです」

おばあさんからの声はなくなっていた。

「山野が嫌がらせをしたから、上司に訴えただけです。なにも悪くない。山野にそれはどうしてやるんですかと聞いたのに、『これ私の仕事だよね。水野さんが知らなくても、問題ないよね』と匙を投げるようなことばかり言われたから、もし私もやる可能もあるので教えてほしいから山野の聞いたのに、そんな言い方するなんて酷すぎます。」

「ずっと、1人でぶつぶつ言って楽しい」

顔をあげると、妹の楓がいた。

「違うわよ。隣のおばあさんに話てるのよ」

「隣のおばあさんなら、病室から出て行ってわよ。お姉ちゃんって、いつもそうだよね。人を不愉快にするの得意だね」

「そんなことありません。」

「山野さんが、お姉ちゃんも解雇してほしいって言ったらしいよ」

「なんで、私も解雇されないといけないんですか?」

「知らないけど。」

「山野がすべて悪いのです。」

「もういいけど、これ、届いてたよ。じゃあ、私も帰るから」

 楓に紙を渡された。痛い身体を少し起こした。楓はもうすでにいない。紙を開けると、『解雇通知書』と書かれていた。なんで山野の言い分が通じているのか不思議だった。

「こちらに置きますね」

 そこに、朝ご飯が置かれていた。隣のおばあさんがいた。

「あの…」

「お姉ちゃんはお喋りだね。ごめんね。私ではお相手できないわ」

「それですね。私解雇通知が来まして」

おばあさんの声でうるさいのよと聞こえてきてカーテンが閉まった。「会社に連絡をしなくてはいけませんね。本当に、無責任すぎます」

 目の前をおばあさんが通り過ぎていった。


「あの、水野さん。ここは病院なので少しお静かにお願いしますね」

「どいう意味ですか?わたしは何もしていません。」

そこに医者がやって来た。

「少し傷を見ますね」

ガーゼを取って、傷に薬を塗られて、また新しいガーゼを張られた。

「傷も浅いので、明日には退院できますね」

「あの、痛いので、もう少し入院が必要だと思います」

「話す元気があるので大丈夫でしょう。では」

「でも痛いんです」

 医者も看護師も他の患者の方へ行ってしまった。なんで誰も話をまともに聞かないか不思議だった。それに昼を過ぎても警察が来ることはなかった。刺されたのだから、事件性あるはずだ。なのに来ないのは変だった。そこでナースコールを鳴らした。そこに看護師の方がきた。

「どうかされましたか?」

「刺されたのに、なんで、警察は来ないんですか?」

「さあ、こちらには何も聞いていないので」

「では、警察に連絡してください」

「それは、病院の仕事ではないので、できません。お話は以上ですね」

「まだです。呼んでください。」

「こちらから、どこに電話するかが分からないので、水野さんからご家族などに確認を取って下さい」

 看護師は病室から出て行ってしまった。動けないので、電話ではなく母親にメールを送ることした。刺されたので警察に連絡してほしいと頼んだ。『退院して、自分で処理して」と連絡が来た。冷たい母親の対応に、なんで向き合ってくれないのかと考えしまう。


朝になって、朝ごはんを食べていると、看護師が来て「こちら、受付で渡してください。お昼までには退院の手続きをお願いいたします。」と紙を渡された。

「あのまだ痛くて」

「傷の治療につきまして、下の受付で確認お願います。気を付けて、お帰りください」

 看護師は病室から出て行った。隣のおばあさんの方を見ると、カーテンが引かれていて様子が見えなかった。


痛い腰を抑えながら退院して、警察署に行った。一旦、弁護士に頼んでほしいと言われた。そして、色んな弁護士に連絡をしたが、どこの弁護士事務所からも「他をあたってほしい」と言われて、どこも相手にしてくれなかった。それに解雇に関しても、会社に連絡を取ったら、山野の言い分も考慮することになりましたと言われて、悪くないこちらの側の仕事先を奪って来た。

家に帰ると、「お姉ちゃんって、本当に嫌われているよね」と楓に言われた。「なんで?」と聞くと、「そうやっていつもなんでって聞くからじゃない。相手に何でも聞くからじゃない」と言って、それ以上は聞かれたも困ると続きけて言われた。

自室の階段を上っていくと、母親の声が聞こえて来た。「刺されて、死んでくれたらよかったに」


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