罪悪感
サキは弟のケミオが羨ましかった。でも憧れない。そんな収入が安定しない動画配信など、飽きられば、終わりだ。ケミオはたまにある1万回超える動画ある度に、お母さんに報告して喜んでいる。ただ、そんな生活はずっとは無理だろう。サキはそう思っている。依存しているようで、見てて疲れてくるのも事実だ。
他者に依存しているだけで、決して、精神的にも経済経済的にも自立できてはいない気がする。ケミオの顔色はいつも垢抜けていないし、疲労の顔が滲み出ている。目が血走っている。でも、ケミオはその人の弱みに侵入するのは得意なのだ。伸びないだろうなと感じる動画ばかりなのに、多くの人が見ているようだった。ただ決していいねの数は伸びてはいないようだった。だけど、飽きずに続けている。意味の動画を発信し続ける。考えてを一切変えないケミオが羨ましい。人の意見に流されず自分のやりたいことをしているケミオが羨ましい。でも何も変わろうとしないケミオには苛立ちを感じる。
そもそも、HSPが本当か、偽物かなんて、見当はつかない。自称してしまえば、本物のなのだろう。医学的な根拠もないし、証明するものも何もない。だけど、ケミオはそうある自分を愛しているのだろう。サキの矛盾している感情が葛藤を呼んで、ぐるぐると考えてが巡ってしまう。
サキは会社で、上司や部下に振り回されぱなっしだ。誰も助けてくれない。上司から責任を押し付けられ、部下からも「指示されてません」と責任を押し付けられている。やって当たり前、間違えたら責められて、問題がなければ褒められることはない。誰かに褒められたいし、認めてほしいこともあった。でもそんなこと求めてしまえば、わがまま、承認欲求じゃないのかを言われているのだろう。自分が何者であるかなどわかなくなっていく。だからケミオが羨ましいのだろう。偽りのない生き方をしているように見える。嘘のない人生を生きているように思えてしまう。自分の感情意識がおざなりになって、他人の感情意識を優先されていくような気がする。
「人の顔色ばかりを伺ってしまうと壊れるよ」
7階の食堂のテラス席に1年先輩の伊崎さんが、今日のおすすめランチセットを持って、サキの隣に座った。容姿端麗で、結婚していて子どもいるのに、明るくてパワフルな人だ。
「なんですか?」
「ため息ばかりをついてると、幸せが逃げるよ」
「そうなんですか?」
「そうだよ。愚痴もそうだけど、他人の行動に振り回せると疲れちゃんだよね」
「なんで、ため息が人の行動に繋がるんですか?」
「的外れではないのでしょう。」
「まあ、そうですけど。」
「自分が本当はしたいこを他人がやっていると、せこいとか、身勝手だって、言うんだよね」
「誰のことですか?」
「まあ、人の話は最後まで聞いて。」
甘ったるくて、人懐こい、言葉のニュアンスもやわらかいく、強制的な印象がない、伊崎さんの言葉は羨ましい。
「私のこと、考えてた?」
伊崎さんの言葉が意識を戻してきた。
「違いますけど」
「そうやって、他者の言動に振り回せると本当に疲れしまうよ。サキちゃんはもっと自分らしく生きなさい。」
「説教は入りませんよ」
「前にさ、自分の感情をおざなりしないように言ったよね。」
「はい、そうでしたけ?」
「覚えないの~ひどい!!」
「ごめんなさい。覚えてますよ」
伊崎さんはいつもそうだ。迷っているサキのことを気を使ってくれる。ただ、言葉はくれるが実際に上司に言ってくれることもないし、部下に指導することはない。それが伊崎さんだ。まあ、伊崎さんなりの優しさだと分かっているが、実際は言ってほしいし、指導してほしいのが本音だ。
「罪悪感を感じなくてもいいって、話なんだけど、羨ましいとか、相手が本当は何か悩んでいる可能性があっても、人は上手くいっているように見えるだよね」
「はい」
相槌だけはしようと、サキは意識した。話を止めて詳しく聞きたい気持ちを抑えた。
「罪悪感って、自分で禁止していることをやっちゃたり、やるべきことをしなかった時、ルールやモラルに反した言動した自らしたら感じやすいんだって。」
「はあ」
「でね、そのルールやモラルを他人に求めて、愚痴や悪口を考えてしまった時も罪悪感を感じることがあるんだって」
「ふぅん」
なんか難しく感じてしまう。
「だから、もっとサキちゃんは自分に感情を大切にしなさいって言いたいの」
「はい。」
「わかんないよね。難しいよね。分かっている。だから、罪悪感を感じないでほしいの。」
「はい」
「ごめんね。助けになれなくて。サキちゃんの感情意識を大切にしてね」
そう言って、先に席を立ち上って行ってしまった。伊崎さんも説明が下手で、でも何かを伝えたいことだけは分かる。サキは何度も同じことを繰り返しているのに、伊崎さんは何度も言ってくれる。なのに、サキは変わっていないのだろう。申し訳ないという罪悪感に感じた。他人を羨ましいと思う時間があるのなら、自分の感情と向き合って、自分磨きの時間に使うことが大切なのかもしれない。ケミオはケミオなりの悩みがあるのだろう。上司や部下たちもそうだ。その人たちの感情に気を使って、振り回せれたらダメなのもわかっている。周りの空気を読んで、それが正解だと思って、流してはいけない。仕事が増えるだけだ。でも、無意識に流されいる。変われない。変えることができない。起きた瞬間、その時の感情に振り回されているのだろう。そして、乱したら罪悪感を感じてしまうのだろう。
どうにか自分の意識と向き合うことができるようにならないといけない。変わらないと、変わらないといけない。
サキは実家を出て、一人暮らしをすることにした。経済的にも精神的にも自立をしようと決めた。とりあえず、マンションの内見だけ予約した。




