第11話 アーマードベア討伐に向けて②
あの熊畜生をぶち転がすために
さてやってきましたるはテラノア郊外にございます草原地区。
ここには、ホーンラビット、フロックラット、ゴブリン、グラスウルフ、グラスディア、アーマードベアという計6種類のモンスターが生息しているらしい。(ギルド資料情報)
で、強さの順番もさっきの通りの並びで強くなっていくとのこと。(ギルド資料情報)
さらに、出てくるモンスターのレベル帯も1~10の間らしい。
(ギルド資料情報)
くそ便利だな、ギルド資料。
「経験値を考えれば、耐久戦の練習にもなる鹿。速度で勝負する練習を兼ねるなら狼ってとこか。」
『バツはグラスウルフとの多数戦闘を練習するべき』
「ニトさんや、その心はなんじゃ。」
『多数相手との戦闘の経験値を積めば、スキル手に入る、かも?』
「よーしやろう今すぐやろうすぐにやろう。」
単純明快それ即ち心理ぃ。
単細胞すぎて草。
ただ、多数戦闘ってのは勝手が違うと思うんよなぁ。
ヘイトを向けつつ戦闘するってのが定石だと持論はめ込んで考えてみたが、このゲームプレイヤーにヘイトが向くのは契約獣が倒された後か、よっぽど巻き込まれる位置にいた時だけ。
つまり、持論が使いもんにならぬ。
これが地味にイタイ。
「やろうって言っても、ヘイト管理をどうするかだなぁ。現状は避けタンクをニトにお願いして、ルクスはタイミング重ねて攻撃スキルをぶち当てるってのが最適解かなぁ。」
「キュー!!」
『妥当』
よし、やってみよー。
━━━━━━━━━━━━━━
たどり着きました少し奥の方。
キョロ(・ω・`三´・ω・)キョロ
╭( ^ㅍωㅍ^)σ ヨシ
「周りのプレイヤーも少ないし、ここまで来たから戦いやすいだろ。」
「キュー!!」
『ルクスもやる気十分』
「気合が空回りしないようにな。」
「キュッ!!」
さあて、目視だけでも結構モンスターはいる。
それに加えて別のプレイヤーも多少はいる。横取り云々には気を付けないとな。
特に群れ相手だと、戦闘範囲が広がる。
巻き込んだ巻き込まれたでトラブルになったら面倒だし。
「それじゃあ、サーチ。」
━━━ブォン..........
えーっと、北の方角に獣型だな、狼っぽい反応が十前後。
西には……ありゃ熊畜生だ。はいNG。
東にはー……人型か?ってことはゴブリンか。
狼とやりあってからどうするかは考えよう。
で、今歩いてきた南にはモチのロンいないと。
「よーし、このまままっすぐ進んだら狼と鉢合わせるから、いつでも戦えるようにいくぞーおー。」
「キューー!!」
『鼓舞文化、悪くない』
「そこはノッてこいよニト。」
『おー』
「遅いし薄いんだよなぁ……。」
けどま、今はこの緩さがちょうどいいからいいか。
5分くらい歩くと、グラスウルフの群れに遭遇した。
「っしゃぁ来たぞルクス! ニト! 群れの数は目視で5体だ!」
草を踏む音に低い唸り。
こっちを囲むように散る動き。
さぁさぁ多数戦闘やってみましょうか!
「まずはニト、ルクスの姿に変化! そのまま撹乱しつつ3体の注意を引いてくれ!ルクスは残った2体とミラージュ使って戦闘だ!」
「キュ!!」
『承知、スキル発動、〈千貌顕現〉』グジュルバキバキッ。
「……お、おぉすごい音鳴らすやんどっから鳴らしてるんこわっ。」
『これは演出』
「演出やめてね。」
次の瞬間、ニトの姿がルクスとほとんど変わらない輪郭へと変化する。
いや、完全に同じではないけど、こりゃすごいな。
けど、戦闘中に見分けろって言われたら難しいレベルだそ。
こわ。
そして、ルクスを見ると、ルクスの横に少しだけ薄色の分身が一体生まれる。
若干透けてるのが本体と分身の違いね。
「「grurararaa!!」」
おっと、もう来るか!
前から二体、横から一体、少し遅れて二体。
位置はきちんと把握できてる。
「ニト! 左の三体を引っ張れ! ルクス、正面二体を見るぞ!」
「「キュ!!」」
分断はできたが、こっからだぞバツ。
今んとこ理想通りだが、あいつらがきつくなるかどうかは俺次第だ。
一体目がルクスめがけて飛び込んでくる。
「右から来る! 分身は体ぶつけに行け!ルクスは全力回避だ!」
ルクスの分身がその言葉と同時に前へ出る。
そのままグラスウルフと正面衝突。
って分身も俺の指示聞いてくれるのね。
━━━ガッ!!
「よし、その間にルクスは横っ腹へ攻撃!」
「キュ!!」
本体ルクスが横へ跳び、空いた脇腹へ爪を叩き込む。
――ザンッ!
「ルクスその調子だ! 次の攻撃来たらタイミング合わせて火爪!」
「キュー!!」
二体目が飛び込んで来る。
おい結構速ぇじゃねぇか!!
だが、これくらいなら目で追える!!
「今だ!やれ!!」
――バシュッ。
赤く光った前脚が、グラスウルフの肩口を裂いた。
「glu!? 」
「当たった! ナイスだぞ!」
正中線をずらしながら戦闘できてる、ちゃんとやれてる!!
この時、ふとニトの方に目をやると、
ルクスの姿をしたニトが草原をすべるように動いていた。
速いなぁ、ヌルヌルしてるなぁ、
いやヌルヌルしすぎない??
そこにいたはずなのに、噛みつこうとした狼の牙が空を切る。
「……うわ、きっしょい避け方してんな。」
『褒め言葉として受け取る』
「やば、聞こえてた。」
『褒め言葉は全て耳に入ってくるシステム』
「いや別に褒めてねぇよ!?」
しかもただ避けるだけじゃない。
絶妙に届きそうで届かない位置を維持して、三体とも引きつけてる。
タンクっていうより、囮だなこれ。
いや、避けタンクなんだから合ってるのか?
でもさすがにきしょい。
「ルクス、2体のうち片方落としに行くぞ!行けるか!?落とせるか!?」
「キュ!!」
良し、気合十分!
さっき傷を入れた個体が少し下がった。そしてもう1体が庇うように前に出てくる。
「こっちを深追いしてきたやつから落とす! 左前足狙って止めろ!」
「キュ!!」
「gluaaa!!」
ルクスが空中からグラスウルフに襲いかかる。
前足とはいかなかったものの、横っ腹に引っ掻き傷ができ、グラスウルフが痛みでのたうち回る。
「トドメを刺せ!火爪!!」
――バシュッ!!
「gru……!」
そのまま一体目が倒れた。
「よぉし!まず一体!」
かなり連携できてる!!
だが、その時、
「ッ!?ルクス!後ろだ!!」
残っていたもう一体が、分身ではなく本体を見て飛び込んできた。
「キュ!?」
まずいッ避け切れない!?
ッ!!そうだ!!
「ニト!!」
『承知』
ルクス姿のニトが横から割り込む。
噛みつきの軌道、そのギリギリに身体をねじ込ませ、
その体をもつてグラスウルフの視線を一瞬だけずらした。
「今だルクス、離脱!」
「キュ!!」
すんでのところで回避が成功する。
あっっっっっっっっっっっぶねぇ………….....
ルクスが後方へ離脱する。
「助かった……。」
『ニトの仕事』
「ガチ感謝。」
よし、正面二体のうち一体は倒した。
残り一体。
対してニト側はまだ三体を引っ張ってる状態。
ただし、このままだとジリ貧だな。
避け続けるだけじゃ終わらない。
「ニト! 1体こっちに流せるか!?」
『可能』
「じゃあ右のやつだけ寄越せ! ルクス、2体目を処理して完全勝利決め込むぞ!」
「キュー!!」
ニトがわずかに軌道を変える。
すると三体のうち一体だけが釣られるようにこちらへ流れてきた。
「こいつら、にしても考えながら動いてるからやりにきぃったらありゃしないな……。」
野良なんだから脳死で突っ込んで来いって。
いやでもそれだと練習にならんか。
じゃあむっちゃ搦め手使ってこいや!!(どっちだなんだよ by 作者)
「ルクス! 正面来る1体にまずは集中しろ! 分身もう一回出して、足止めさせれば隙は必ず見つかる!」
分身が狼の前へ出る。
牙が分身を食い破る。
その一瞬でルクスが敵の背後に回り込んで爪で切り込む。
――ザンッ!!
「そのまま押し切れ!」
――バシュッ!!
「gruaa!?」
「いいぞ! もう一発!」
追い打ちをかけるように火爪で追撃する。
「grrrrrrrrr……..」
二体目も地面に転がった。
「よし、これで二体!」
残り3体.........!!
「ルクス! 次は俺の前!」
「キュ!!」
ルクスがさっきの勢いのまま割り込む。
そのまま体当たり気味に狼の軌道を逸らした。
――ドッ!!
「ぐぁっ……!」
目の前で草が舞う。
近い近い近い本当に怖い。
「ニト! すまんそっちの2体もうちょい引き付けるか!?」
『余裕』
うわ頼もしいなコイツ。
「じゃあそのまま回せ! ルクス、今のやつ落とすぞ!」
さっきの体当たりで、敵の体勢は少し崩れたよな、ならいける!
「右肩から切り裂け! そのまま噛みつきが来たら下潜れ!」
「キュ!!」
ルクスは姿勢を低くし、潜り込む。
背丈の低いルクスがグラスウルフの下を抜けるように滑り込み、そのまま腹へ一撃。
――ザシュッ!!
「今、火爪!!」
――バシュッ!!!
燃え盛る火が迸る。
グラスウルフが悲鳴を上げながら倒れた。
「ナイスッ!!」
これで残り二体。
だが、ルクスの息も少し上がってる。残りSPもかなりやばい。
「すまんニト!残り2体って倒せるか!?」
『承知、5秒で殺る』
そう言った瞬間、ルクスの姿が消える。
「はっや!?」
『終わった』
「後ろにいる!?」
「キュッ!?」
ニト様は本気出したらこれくらいやれるんですか!?
「キュ、キュー!!」
「お、おーおー、よくやったよルクス。」
『及第点』
「お前はもう少し言葉をだなぁ。」
『ルクス、よくやった』
「キュ!」
うん、ルクスが満足なら俺はそれでいい。
よかったよかった。
「にしても、やっぱ群れ相手だと考える量えぐいな……。」
敵の位置、ニトの位置、分身の位置、契約獣たちのSP・MP管理、俺の立ち位置、横から別の群れが来ないか
脳味噌が忙しい。
『でも、前より良い』
「そりゃまぁ、そうであってもらわないと困る。」
アーマードベアを倒すって目標を立てた以上、
この程度で詰まってられんしな。
【グラスウルフとの集団戦闘が終了しました】
【経験値を275獲得しました】
【契約獣ルクスのレベルアップを確認】
【750ダラー獲得しました】
【戦闘結果から算出、バツはスキル:魔力感知 Lv1、スキル:並列思考 Lv.0を獲得しました】
【戦闘結果から算出、ルクスはスキル:威嚇を獲得しました】
ルクスが胸を張る。
「キュー!」
「いいねぇ、幸先がいい。」
『バツも指示わかりやすかった』
「よ、よせやい///」
『きもちわるい』
「やかましいわ。」
とりあえず、今の戦いで見えたことは多い。
ニトはAGIとDEXの数値を生かした撹乱タンク適正が異常に高い。
ルクスは瞬間火力と追撃の噛み合わせがいい。
ミラージュは想像以上に便利だったしな。
「とりあえず、今手に入れたスキルも確認しなきゃ出し、いったん休け「だ、誰か!! 助けてくれっ!!」い..........ん?」
なんか声が聞こえた。
声がした森のより奥に視線を向けると、
とんでもない土煙を立てながら何かが走っている。
なにかっていうかありゃプレイヤーだな。
で、その後ろは........
「おいおいマジかよ。」
「キュ……!」
『バツ、どうする?』
「ありゃMTだぞ........!」
<ピンポーン
説明しよう!!
モンスタートレインとは、プレイヤーが戦闘中、多数のモンスターからヘイトを集めすぎた結果、モンスターを倒しきれずに大量に引き連れた状態で逃げ惑うこと。それをモンスタートレインと呼ぶ!
これは他のプレイヤーがいる空間に向かって逃げていくと害悪行為とみなされ、最悪の場合は運営からBAN処理されることもあるから、くれぐれも気を付けるんだぞ!!
フリじゃないからな!!
今脳内に変な音声が流れたが気にしてられん........!!
どうする、介入するか.......
「助けてくれぇぇぇぇぇっ!!」
……あぁくそっ!見捨てたら男が廃る!!
バツは、声がする方向へ改めて意識を向けた。
ktkr天ぷら!!
というわけで、モントレはやっぱ発生させなきゃですよねー。
でも、モントレなる前に普通は倒される気がするのですが、これまたいかに。
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