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神様機構―悠久なる歯車―  作者: 太郎ぽん太
第 7 部 天界学園 編
339/344

†46話†:天枢寮の洗礼



「……すげぇ。隙間風が、ない」


 第一圏域クラウンの特権、天枢寮3階。

 サダオミは、あてがわれた自室のふかふかなベッドにダイブし、その感触に瞳を輝かせていた。


「ベッドが湿ってない……! 枕から土の匂いがしない……! これだよ、これ!文明ってだいじなもの!」


 天界に来て以来、任務続きで野宿か、ひなのボロアパート(極寒)を転々としていたサダオミにとって、ここは文字通りの天国だった。


 しかし、ふと我に返る。


「……待てよ。 

 透哩が隣だったよな。ってことは……」


 サダオミは恐る恐る、増設されたという隣室との壁をノックしてみた。


 コンコン。

 重厚な音が返ってくる。


「……お、防音は完璧そうだな。これなら、隣に透哩がいてもプライベートは守られ――」


「なんだ? 用があるなら声を出せ」


 壁の向こうから、隔壁を無視して、透哩の凛とした声が響いた。


「えぇ!? 地獄耳かよ!!」

「サダオミ。……用がないなら呼ぶな」

「あ、いや、なんかごめんね?」


 サダオミは思い出した。

 透哩は透哩だったと。


「……よし、わかった。俺にプライベートなんかなかった。

 よし……よくねーよ!! 隣には細心の注意を払わないとな……」


 気を取り直して、サダオミは室内を探索する。

 そこで見つけたのは、広々とした大理石のバスルームだった。


「お風呂……! 湖で魚と競り合いながら体を洗わなくていいのか!」


 感動のあまり、サダオミは無防備に上半身の服を脱いだ。

 なんといってもお風呂だ。

 こればかりは仕方がない。


 ガチャッ。


 背後の、廊下へ通じる扉が音もなく開いた。


「…………」

「…………」


 そこに立っていたのは、銀髪を完璧な夜会巻きにまとめ、寸分の乱れもないメイド服に身を包んだ女性だった。


「……失礼しました。まさか入寮されていたとは知らず」

「…………誰よ」


 サダオミは胸元を隠すことも忘れ、メイド服の女性を凝視する。


「天枢寮3階付管理人、リブラ・レクイエムと申します。

 ……主様(透哩)より、このフロアの管理を命じられております。

 ……お背中、お流ししましょうか?」

「いやいやいやいや」

「背中の皮膚状態も記録対象です」

「湖生活に戻る方がまだ安全だわ!」

「ご安心ください、作法は一通り心得ております」

「いや、許可しないよ?」

「許可、ですか?」


 リブラの無機質な瞳が、一瞬だけ怪しく光った。


「……いずれ、貴方からいただく予定ですので。まずは予行演習です」


 こうして、サダオミの「優雅な(地獄の)寮生活」は、入浴すら許されない波乱の幕開けとなったのである。


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