†47話†:資産価値は背中に宿る
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「えーと……ここ、俺の部屋……だよな?」
サダオミは、上半身裸のまま一歩後退り、必死に周囲を見回した。
ふかふかのベッド、大理石のバスルーム。
間違いなく、さっき感動のあまりダイブした「文明の香り」がする自室だ。
「左様でございます、サダオミ様。天界学園・第一圏域専用、天枢寮3階2号室。……主様(透哩様)の隣室にして、現在、私が管理を任されている『聖域』でございます」
リブラは表情一つ変えず、音もなく距離を詰める。
その手に持たれた上質なタオルが、獲物を狙う網のように見えてサダオミの背筋が凍る。
「管理って……いや、俺、一応男なんだけど。着替えとか、その、プライバシーってものがあるだろ!」
「プライバシー。……『個人の秘密、または私生活をみだりに公開されない権利』……でございますね? 辞書データと照合いたしました」
リブラは無機質な瞳でサダオミの鎖骨あたりを凝視する。
「しかし、サダオミ様は小波透哩様の『所有物(備品)』でございます。備品にプライバシーは付帯しません。あるのは、劣化を防ぐための『保守管理』の義務のみです」
「備品って言うな!! あと、その『保守』の範囲に俺の背中を流すのは入ってないだろ!」
サダオミの叫びが防音壁(を無視した透哩の聴覚)に響いた瞬間、壁の向こうから冷徹な声が届いた。
『――サダオミ。リブラの管理に従え。お前の皮膚状態が1%でも損なわれることは、私の資産価値の低下を意味する』
「透哩! お前、絶対こっち見てるだろ! 覗きか! 覗きなのか!」
『……聞こえているだけだ。……リブラ、作業を続けろ。背中の隅々まで、一分の隙もなく、だ』
「承知いたしました、主様」
「承知するな! 待て、待てリブラ! その怪しく光る瞳をしまえ! ……いずれ何かを『いただく』って、さっきから不穏なんだよ!!」
リブラは、逃げようとするサダオミの肩を、逃れられぬ力でがっしりと掴んだ。
「ご安心ください。私は『完璧メイド』を自称する者。……汚れを落とすことに関しては、魂の髄まで完遂させる作法を心得ております。……さあ、サダオミ様。お覚悟を」
「湖生活に戻してえええええええ!!」




