†44話†:天枢寮三階、隣人は絶対首席
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「圏域守護、おつかれー」
「サダオミ、相変わらず無茶苦茶なキレ方してたな、なう」
階層戦を終えたばかりの第一圏域の教室。
モニターには、先ほどまで行われていた階層戦の録画が映し出されている。
激しく明滅する閃光と、神速で敵を叩き伏せるサダオミの影。
サダオミはといえば、いつものように背中にひなを背負ったまま、深く溜息をついて戻ってきた。
ひなは「……むにゃ」と寝言をこぼし、親友の背中を完全に寝床にしている。
「前回のルル・メルだったかな。未来予知の。今回の相手を見る限り、あれで暫く第二圏域は出し尽くしたかな」
「あ、でも今回の子も反応は良かったよ?」
「謙遜が過ぎる。あのタイミングでカウンター入れられる奴なんて、普通いないからな」
話しかけてきたのは、君島海里と楢葉宗太郎だ。
一方で、教室の最後列で一冊の本をめくっているのは、小波透哩だ。
彼女は大した興味もない様子で、ページを捲る音だけを冷たく響かせている。
しばらく他愛もない会話を交わす。
海里が折を見て、扉の方へと視線を送った。
「さてと、見届けたことだし私は寮に戻ることにするよ。……少しゆっくりする時間がとれたんだ」
「あ、そういえば学生寮があるようなことを聞いたことが」
その言葉に、教室の空気がピタリと止まった。
海里が目を丸くし、ポテチを食べていた一式が「え、こいつ……?」と手を止める。
「?」
「……」
海里が信じられないものを見るような目でサダオミを見た。
「……サダオミ。お前、まさか今までどこに泊まっていたんだ?」
「え? だいたい任務に出てるけどだけど……天界では基本、野宿?……みたいな?」
背中のひなが、寝ぼけ眼で「ワイルドかぁ~……」とむにゃむにゃ緩いつっこみを入れる。
「ありえない……小波透哩!」
パタン、と。
透哩が静かに本を閉じた。
その音だけで、教室の温度が数度下がった気がした。
「……君島。こいつに教えてやれ。自分の『居場所』がどこにあるのかを」
「え、私!?」
海里が咳払いをし、事務的なトーンで告げる。
「サダオミ。本来、下級天使(第六圏域)を卒業し学園に入学した者は、それぞれの圏域の寮へ入るのが義務だ。お前の部屋も、既にある」
「え、そうなの? どこに?」
「……天枢寮の3階だ。本来は首席専用のフロアだが、委員会の都合と……まあ、透哩の『強い要望』で、隣に部屋を増設した」
「……」
「……え?」
サダオミの顔から血の気が引いていく。
一方で、ひなは「じゃあ僕は、あのアパートに帰るから……。放っておいてね〜。バイバーイ」と、サダオミの背中からするりと降り、驚くべき速さで教室を後にした。
「あ、待てひな! 一人に……!!」
「無駄だ。あいつはもう、ボロアパートのWi-Fi圏内に逃げ込んだ」
一式が哀れみの目を向ける。
透哩が立ち上がり、無表情のままサダオミの横を通り抜ける。
「……サダオミ。何をしている。案内しろ。私の部屋の茶葉が切れた」
「……案内って、俺も場所知らないんだけど!!」
かくして、サダオミの「第一圏域での優雅(絶望)な寮生活」が、今、幕を開けようとしていた。




