†40話†:霜月鴉 ― 風紀委員介入案件 ― ①
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【第一圏域:星庭】
「……なあ、透哩。さっきのログを見てて思ったんだけどさ」
サダオミは「時間果実」の甘い香りに包まれながら、手元のリストを指差した。
「さっき共有してくれた『霜月 鴉』の案件。……これ、一人どころか、その場の部下全員に神力バラ撒いてねーか?」
透哩は紅茶を啜る手を止めず、冷徹に肯定した。
「……その通りだ。本人は『主君の忠義を壊したくなかった』と供述しているが、結果としてその戦場一帯が神力の飽和状態にある。……もはや一人の『救出』で済む規模ではない」
サダオミは顔をしかめた。
一人を直すのは「修理」だが、集団を直すのは「大掃除」だ。
そして、天界には掃除が得意な、最高に躊躇がない男がいる。
「……一式先輩が動くのは、ここか」
「ああ、一式は『この天使はダメだ』と言っている。……そうなれば、おのずと欠片も残らずデリートだ」
サダオミは溜息をつき、空を仰いだ。
せっかくの紅茶が、少しだけ鉄の味がした気がした。
「……消滅させるのは簡単だけどさ。……それじゃ、あの部下たちの『忠義』までゴミ箱行きだろ。……胸糞悪ぃな」
「……だからこそ、お前の出番だ。一式が『Delete』を押す前に、お前がその戦場を『Save』してこい」
透哩の言葉は、静かな庭園の空気を一瞬で凍り付かせた。
サダオミは冷めかけた紅茶を一気に飲み干し、ベンチから腰を上げる。
「……はぁ、無理難題ばっかだな。あの先輩、あんなだけど容赦ないんだよな。多分、話聞いてくれないよ」
「だが、お前なら『話』ではなく『物理』で割り込めるだろう?」
「……買いかぶりすぎだっつーの」
サダオミは背中にないはずの刀を軽く叩き、不敵に、けれどどこか面倒そうに笑った。
「不老不死」という名のバグを撒き散らした下級天使、霜月 鴉。
そして、その犠牲者であり、永遠の戦場を彷徨う榊 刻時とその部下たち。
「……ま、行ってくるよ。紅茶の続きは、あのバカな殿様を救い出してからだ」
透哩が軽く頷き、それから空間を指でなぞった。
庭園の空間がガラスのようにひび割れる。
その先に見えるのは、燃え盛る戦場と、降り注ぐ火の粉。
「ふむ。……冷める前に戻ってこい」
「相変わらず無茶だな」
背後に響く透哩の声を、サダオミは片手で制し、そのまま「燃える円環」の中へと身を投じた。




