†37話†:友情の対価は落下死
■
◆
【第一圏域:ひなの自室】
「……なんで死んだのー?」
画面の中で力尽きたキャラクターを眺め、ひなが心底不思議そうに首を傾げる。
「だから、敵に絡まれてる時に崖から飛び降りたら死ぬって教えたよね?」
サダオミは手元のコントローラーを置き、深いため息をついた。
「いつもは絡まない敵だったー」
「敵の前で座るから……」
「さっきまで仲良しだと思ってたー」
ひなは納得いかない様子で頬を膨らませる。
ゲーム内のモンスター相手に「友情」を見出そうとして、結果として無慈悲なワンパンを食らったらしい。
「そうだね、平和だったよね。……ひな吉くんが座り込むまでは」
「なんで死んだのー」
「いつの時代も平和は儚いものなんだよ、きっと」
サダオミが、遠い目で「それっぽいこと」を口にする。
その言葉が終わるか終わらないか、その瞬間。
「――わかっているじゃないかサダオミ。働け」
空間が裂け、いつものように不遜な気配を纏った透哩が姿を現す。
「……そろそろ来る頃だと思ってたよ、透哩」
サダオミは驚きもせず、手慣れた動作でゲーム機の電源を落とした。
日常の終わりは、いつも突然で、そして強制力に満ちている。
「……行くぞ、ひな。お仕事だ」
「え、ヤだよ。オミっち、いってら~」
「え、行かないの?」
「ふふん、この僕がいつも任務に出かけると思ったら大間違いさ」
「ぇー」
二人のやりとりを眺めていた透哩の視線が冷える。
「今回、こいつはコイン獲得済みだ」
「ぇ、ずっる!」
「ふっふっふ、すごいと言いたまえよ」
「ぇー……と、いうことは?」
「お前だけだ。行け」
透哩の指先が空間をなぞり、次の「不具合」へと続く門が開かれた。
「わかったわかった。わかりましたよ。ちゃんと仕事はしてやるよ」
サダオミは軽く首を鳴らし、開かれた門の先――「終わらない朝」へと足を踏み出した。




