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神様機構―悠久なる歯車―  作者: 太郎ぽん太
第 7 部 天界学園 編
325/328

†32話†:如月凪 ― 英雄依存円環 ― ①



【システムログ:観測記録・第六圏域】


■ 対象:如月きさらぎ なぎ


■ 状況:英雄依存円環システム・ループ

・生存率:100.00%(最大値固定)

・未来予測:消失(平和の恒久化による変動停止)


■ 原因:願いの「永続バフ」化

・対象(凪)による「平和な未来」の定義エラー。

・対象(煉)への「不老不死」付与に伴う、国家構造の変質。

・英雄が剣を置いた瞬間に「平和」が崩壊する、インフラ化の完了。


■ 裁定:救出委員会への委託(緊急介入推奨)

・願いが永遠に「進行中」のまま固定。

・本人の離脱不能、および国家インフラからの分離不可。





 視界に流れるのは、一滴の血も流れない、けれど一歩も先へ進めない「完璧な地獄」の記録。


「……平和を求めすぎて、未来が消えた、か」


 サダオミは、空中に浮かぶ無機質なログを指先で弾いた。


「頑張り過ぎると碌なことにならないぞ~?」


 あまりにも過去の自分と似た状況に、うっかりとぼやく。


 かつて自分が「白」として事象になり、逃げ場のない「完成された地獄」に嵌まった記憶。


 あの忌々しい既視感が――


 嫌な感覚が、蘇る。


 救出対象の下級天使、如月凪。

 そして、この世界の主人公、すめらぎ れん


 その二人の姿は、かつての自分の「なれの果て」を見せられているようで、サダオミは、わずかに目を伏せた。


 あの時の自分――。


「これ、救えるの?」



「……納得いかない。いかないわよ、そんなの!!」


 サダオミの前に立つ如月凪は、怒りに肩を震わせていた。

 彼女の視線の先には、一傷も負わずに、完璧な剣技で「平和」を守り続ける皇煉の姿がある。


「私は彼の願いを叶えた! 悲鳴のない、誰も死なない世界を作ったわ! なのに、それが『詰み』? そんなの自分勝手過ぎない!? 上の連中は、願いが叶うのを待ってから文句を言う趣味でもあるわけ!?」


 まくし立てる凪に対し、サダオミは耳を塞ぐこともなく、ただ、疲れたような目で見つめていた。


「……まぁまぁ。落ち着いてよ。キミの言い分は、痛いほど分かるから、さ」


 サダオミは一歩、彼女との距離を詰めた。


「でもね。俺がここに来たってことは、そういうことなんだよ。

 ……キミの『最高』が、天界のシステム上では『致命的なエラー』として処理されてる。

 このまま放置して『時間切れ』になったら――

 キミ、跡形もなく消滅しちゃうよ?」


「……っ、消滅……?」


 凪の顔から、一気に血の気が引いた。

 怒りで赤かった頬が青ざめ、縋るような視線がサダオミに突き刺さる。


「嘘、でしょ……。私は、ただ、彼を……」


「嘘だったら、こんな地獄みたいな既視感ログ、わざわざ見に来ないよ」


 サダオミは凪の震える肩に、そっと手を置いた。

 縋るような視線が、サダオミへと向けられる。


「……分かったわ。協力する。するから……助けて。私を、私たちを」

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