†32話†:如月凪 ― 英雄依存円環 ― ①
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【システムログ:観測記録・第六圏域】
■ 対象:如月 凪
■ 状況:英雄依存円環
・生存率:100.00%(最大値固定)
・未来予測:消失(平和の恒久化による変動停止)
■ 原因:願いの「永続バフ」化
・対象(凪)による「平和な未来」の定義エラー。
・対象(煉)への「不老不死」付与に伴う、国家構造の変質。
・英雄が剣を置いた瞬間に「平和」が崩壊する、インフラ化の完了。
■ 裁定:救出委員会への委託(緊急介入推奨)
・願いが永遠に「進行中」のまま固定。
・本人の離脱不能、および国家インフラからの分離不可。
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視界に流れるのは、一滴の血も流れない、けれど一歩も先へ進めない「完璧な地獄」の記録。
「……平和を求めすぎて、未来が消えた、か」
サダオミは、空中に浮かぶ無機質なログを指先で弾いた。
「頑張り過ぎると碌なことにならないぞ~?」
あまりにも過去の自分と似た状況に、うっかりとぼやく。
かつて自分が「白」として事象になり、逃げ場のない「完成された地獄」に嵌まった記憶。
あの忌々しい既視感が――
嫌な感覚が、蘇る。
救出対象の下級天使、如月凪。
そして、この世界の主人公、皇 煉。
その二人の姿は、かつての自分の「なれの果て」を見せられているようで、サダオミは、わずかに目を伏せた。
あの時の自分――。
「これ、救えるの?」
◇
「……納得いかない。いかないわよ、そんなの!!」
サダオミの前に立つ如月凪は、怒りに肩を震わせていた。
彼女の視線の先には、一傷も負わずに、完璧な剣技で「平和」を守り続ける皇煉の姿がある。
「私は彼の願いを叶えた! 悲鳴のない、誰も死なない世界を作ったわ! なのに、それが『詰み』? そんなの自分勝手過ぎない!? 上の連中は、願いが叶うのを待ってから文句を言う趣味でもあるわけ!?」
まくし立てる凪に対し、サダオミは耳を塞ぐこともなく、ただ、疲れたような目で見つめていた。
「……まぁまぁ。落ち着いてよ。キミの言い分は、痛いほど分かるから、さ」
サダオミは一歩、彼女との距離を詰めた。
「でもね。俺がここに来たってことは、そういうことなんだよ。
……キミの『最高』が、天界のシステム上では『致命的なエラー』として処理されてる。
このまま放置して『時間切れ』になったら――
キミ、跡形もなく消滅しちゃうよ?」
「……っ、消滅……?」
凪の顔から、一気に血の気が引いた。
怒りで赤かった頬が青ざめ、縋るような視線がサダオミに突き刺さる。
「嘘、でしょ……。私は、ただ、彼を……」
「嘘だったら、こんな地獄みたいな既視感、わざわざ見に来ないよ」
サダオミは凪の震える肩に、そっと手を置いた。
縋るような視線が、サダオミへと向けられる。
「……分かったわ。協力する。するから……助けて。私を、私たちを」




